と・じる〔とぢる〕【閉じる】例文一覧 20件

  1. ・・・思想家としてのマルクスの功績は、マルクス同様資本王国の建設に成る大学でも卒業した階級の人々が翫味して自分たちの立場に対して観念の眼を閉じるためであるという点において最も著しいものだ。第四階級者はかかるものの存在なしにでも進むところに進んで行・・・<有島武郎「宣言一つ」青空文庫>
  2. ・・・キン、マルクスたちのおもな功績はどこにあるかといえば……第四階級以外の階級者に対して、ある観念と覚悟とを与えた点にある……資本王国の大学でも卒業した階級の人々が翫味して自分たちの立場に対して観念の眼を閉じるためであるという点において最も苦し・・・<有島武郎「片信」青空文庫>
  3. ・・・が、同じ月、同じ夜のその命日は、月が晴れても、附近の町は、宵から戸を閉じるそうです、真白な十七人が縦横に町を通るからだと言います――後でこれを聞きました。 私は眠るように、学校の廊下に倒れていました。 翌早朝、小使部屋の炉の焚火に救・・・<泉鏡花「雪霊続記」青空文庫>
  4. ・・・が、伊藤八兵衛の智嚢として円転滑脱な才気を存分に振ったにしろ、根が町人よりは長袖を望んだ風流人肌で、算盤を持つのが本領でなかったから、維新の変革で油会所を閉じると同時に伊藤と手を分ち、淡島屋をも去って全く新らしい生活に入った。これからが満幅・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  5. ・・・按摩の笛の音と、此の飴売の太鼓の音をかわる/″\聞きながら、私は、床の中に横わって眼を閉じる。溪川の香が近く、遠く幽かに耳について遠いところへ来てゐるという感じがせられた。 渋には、まだしも物売る店がある。郵便局がある。理髪店がある・・・<小川未明「渋温泉の秋」青空文庫>
  6. ・・・そして、ついに目を閉じるときがきました。 女は、この世を去ったのです。けれど、霊魂は女の念じたように、あの世へゆく旅に上りました。 女は、長い道を歩きました。うららかに日が当たって、野も、山も、かすんで見えました。夢の国の景色をなが・・・<小川未明「ちょうと三つの石」青空文庫>
  7. ・・・どこの銀行でも店を閉じるという午後の三時までには、まだ時の余裕があった。私はその日のうちに四人の兄妹に分けるだけのものは分け、受け取った金の始末をしてしまいたいと思った。そこは人通りの多い町中で、買い物にも都合がいい。末子は家へのみやげにと・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  8. ・・・寝しずまったころ、三十歳くらいのヘロインは、ランタアンさげて腐りかけた廊下の板をぱたぱた歩きまわるのであるが、私は、いまに、また、どこか思わざる重い扉が、ばたあん、と一つ、とてつもない大きい音をたてて閉じるのではなかろうかと、ひやひやしなが・・・<太宰治「音に就いて」青空文庫>
  9. ・・・眼を閉じるとさまざまの、毛の生えた怪獣が見える。なあんてね。笑いながら厳粛のことを語る。と。「笠井一」にはじまり、「厳粛のことを語る。と。」にいたるこの数行の文章は、日本紙に一字一字、ていねいに毛筆でもって書きしたためられ、かれの書斎の・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  10. ・・・こうしてペンを握ったまま、目を閉じると、からだがぐいぐい地獄へ吸い込まれるような気がして、これではならぬと、うろうろうろうろ走り書きしたるものを左に。 日本文学に就いて、いつわりなき感想をしたためようとしたのであるが、はたせるかな、・・・<太宰治「古典竜頭蛇尾」青空文庫>
  11.  どんな小説を読ませても、はじめの二三行をはしり読みしたばかりで、もうその小説の楽屋裏を見抜いてしまったかのように、鼻で笑って巻を閉じる傲岸不遜の男がいた。ここに露西亜の詩人の言葉がある。「そもさん何者。されば、わずかにまね・・・<太宰治「猿面冠者」青空文庫>
  12. ・・・運命の魔女が織り成す夢幻劇の最後の幕の閉じる幔幕としてこの刺繍の壁掛けを垂下したつもりであるかもしれない。 このようにいろいろな味のちがったものを多数に全編の中に取り入れて、趣味のちがった多数の観客の享楽に適するようにしようとすれば、ど・・・<寺田寅彦「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」青空文庫>
  13. ・・・その時に調べてみるとボタンを押した時に電路を閉じるべき銅板のばねの片方の翼が根元から折れてしまっていたのである。 実はよほど前に、便所に取り付けてある同じ型のスイッチが、やはり同じ局部の破損のために役に立たなくなって、これもその当座自分・・・<寺田寅彦「断水の日」青空文庫>
  14. ・・・ 目を閉じるといろいろの「光の舞踊」が見える。これはある程度までは生理的効果でだれにでも共通なものである。この現象はトーキーでなく無声映画でも利用されうるであろうが、しかしトーキーだといっそう有効に応用されうるわけである。たとえば、画中・・・<寺田寅彦「耳と目」青空文庫>
  15. ・・・いつかまぶたは閉じるのじゃ、昼の景色を夢見るじゃ、からだは枝に留まれど、心はなおも飛びめぐる、たのしく甘いつかれの夢の光の中じゃ。そのとき俄かにひやりとする。夢かうつつか、愕き見れば、わが身は裂けて、血は流れるじゃ。燃えるようなる、二つの眼・・・<宮沢賢治「二十六夜」青空文庫>
  16. ・・・黒のフロックを着た先生が尖った茶いろの口を閉じるでもなし開くでもなし、眼をじっと据えて、しずかにやって来るのです。先生といったって、勿論狐の先生です。耳の尖っていたことが今でもはっきり私の目に残っています。俄かに先生はぴたりと立ちどまりまし・・・<宮沢賢治「茨海小学校」青空文庫>
  17. ・・・ 百貨店の娘さんたちの朝から夕方店を閉じるまでの忙しさ、遑のない客との応接、心を散漫に疲れさせるそれらの条件を健全でない事情と見て、反対の解毒剤として、所謂落着いた古来の仕舞は健全と思われているのであろう。実際に百貨店の娘さんたちの動き・・・<宮本百合子「今日の生活と文化の問題」青空文庫>
  18. ・・・けれども、棺をいよいよ閉じるという時、私は自分を制せられなくなって涙で顔じゅうを濡らし激しく慟哭した。可愛い、可愛いお父様。その言葉が思わず途切れ途切れに私の唇からほとばしった。どうも御苦労様でした、そういう感動が私の体じゅうを震わすのであ・・・<宮本百合子「わが父」青空文庫>
  19. ・・・然らば口を閉じるより外はないようなものです。 所が、私の考えている事は全く違っています。尤もこの考えている事というのが、告白であるかないか、矯飾をしていないかという疑問が直ぐに伴って来る。もっと立ち入って云えば、自分では云々と考えている・・・<森鴎外「Resignation の説」青空文庫>
  20. ・・・ 妻が眼を閉じると、彼は明りを消して窓を開けた。樹の揺れる音が風のように聞えて来た。月のない暗い花園の中を一人の年とった看護婦が憂鬱に歩いていた。彼は身も心も萎れていた。妻の母はベランダの窓硝子に頬をあてて立ったまま、花園の中をぼんやり・・・<横光利一「花園の思想」青空文庫>