ど‐だい【土台】例文一覧 30件

  1. ・・・が、この家の前へ通りかかると、そこにはコンクリイトの土台の上にバス・タッブが一つあるだけだった。火事――僕はすぐにこう考え、そちらを見ないように歩いて行った。すると自転車に乗った男が一人まっすぐに向うから近づき出した。彼は焦茶いろの鳥打ち帽・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  2. ・・・汝れが困ると俺らが困るとは困りようが土台ちがわい。口が干上るんだあぞ俺がのは」 仁右衛門は突慳貪にこういい放った。彼れの前にあるおきては先ず食う事だった。 彼れはある日亜麻の束を見上げるように馬力に積み上げて倶知安の製線所に出かけた・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  3. ・・・が、そういう心持になった際に、当然気が付かなければならないところの、今日の仕事は明日の仕事の土台であるという事――従来の定説なり習慣なりに対する反抗は取りも直さず新らしい定説、新らしい習慣を作るが為であるという事に気が付くことが、一日遅けれ・・・<石川啄木「性急な思想」青空文庫>
  4.  色といえば、恋とか、色情とかいう方面に就いての題目ではあろうが、僕は大に埒外に走って一番これを色彩という側に取ろう、そのかわり、一寸仇ッぽい。 色は兎角白が土台になる。これに色々の色彩が施されるのだ。女の顔の色も白くな・・・<泉鏡花「白い下地」青空文庫>
  5. ・・・ 五寸角の土台数十丁一寸厚みの松板数十枚は時を移さず、牛舎に運ばれた。もちろん大工を呼ぶ暇は無い。三人の男共を指揮して、数時間豪雨の音も忘れるまで活動した結果、牛舎には床上更に五寸の仮床を造り得た。かくて二十頭の牛は水上五寸の架床上に争・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  6. ・・・   他の人の嫌がることをなせ これがマウント・ホリヨーク・セミナリーの立った土台石であります。これが世界を感化した力ではないかと思います。他の人の嫌がることをなし、他の人の嫌がるところへ行くという精神であります。それでわれわれの生・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  7. ・・・ しかし私はその直感を土台にして、その不幸な満月の夜のことを仮に組み立ててみようと思います。 その夜の月齢は十五・二であります。月の出が六時三十分。十一時四十七分が月の南中する時刻と本暦には記載されています。私はK君が海へ歩み入・・・<梶井基次郎「Kの昇天」青空文庫>
  8. ・・・夫婦道も母性愛も打ち建てるべき土台を失うわけである。その人の子を産みたいような男子、すなわち恋する男の子を産まないでは、家庭のくさびはひびが入っているではないか。ことに結婚生活に必ずくる倦怠期に、そのときこそ本当の夫婦愛が自覚されねばならな・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  9. ・・・昔、大地が陥落して瀬戸内海ができるとき、陥落し残った土地だから土台は岩石である。その岩が雨に洗い出されて山のいただきには奇巌がいたるところに露出している。寒霞渓の巌と紅葉については、土地の者の私たちよりもよその人たちの方がくわしいだろう。山・・・<黒島伝治「海賊と遍路」青空文庫>
  10. ・・・という小品を土台にして私が、全く別な物語を試みようとしているからであります。ヘルベルトさんには全く失礼な態度であるということは判っていながら、つまり「尊敬しているからこそ甘えて失礼もするのだ。」という昔から世に行われているあのくすぐったい作・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  11. ・・・ちみち何百本もの材木をかっさらい川岸の樫や樅や白楊の大木を根こそぎ抜き取り押し流し、麓の淵で澱んで澱んでそれから一挙に村の橋に突きあたって平気でそれをぶちこわし土手を破って大海のようにひろがり、家々の土台石を舐め豚を泳がせ刈りとったばかりの・・・<太宰治「ロマネスク」青空文庫>
  12. ・・・それにもかかわらずわれわれは習慣によって養われた驚くべき想像力の活動によって、このわずかな肖似の点を土台にして、かなりまで実在の世界に近い映画の世界を築き上げる。そうして、いつのまにか映画と実際との二つの世界の間を遠く隔てる本質的な差違を忘・・・<寺田寅彦「映画の世界像」青空文庫>
  13. ・・・ このあいだじゅう板塀の土台を塗るために使った防腐塗料をバケツに入れたのが物置きの窓の下においてあった。その中に子猫を取り落としたものと思われた。頭から油をあびた子猫はもう明らかに呼吸が止まっているように見えたが、それでもまだかすかに認・・・<寺田寅彦「子猫」青空文庫>
  14. ・・・こうして家が丈夫になると大地震でこわれる代わりに家全体が土台の上で横すべりをする。それをさせないとやはり柱が折れたりする恐れがあるらしい。それで自分の素人考えでは、いっその事、どこか「家屋の鎖骨」を設計施工しておいて、大地震がくれば必ずそこ・・・<寺田寅彦「鎖骨」青空文庫>
  15. ・・・飯が消化せられて生きた汁になって、それから先の生活の土台になるとおりに、過去の生活は現在の生活の本になっている。またこれから先の、未来の生活の本になるだろう。しかし生活しているものは、殊に体が丈夫で生活しているものは、誰も食ってしまった飯の・・・<永井荷風「十六、七のころ」青空文庫>
  16. ・・・ 従ってイズムは既に経過せる事実を土台として成立するものである。過去を総束するものである。経験の歴史を簡略にするものである。与えられたる事実の輪廓である。型である。この型を以て未来に臨むのは、天の展開する未来の内容を、人の頭で拵えた器に・・・<夏目漱石「イズムの功過」青空文庫>
  17. ・・・今の評家はかほどの事を知らぬ訳ではあるまいから、御互にこう云う了見で過去を研究して、御互に得た結果を交換して自然と吾邦将来の批評の土台を築いたらよかろうと相談をするのである。実は西洋でもさほど進歩しておらんと思う。 余は今日までに多少の・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  18. ・・・う風に違って来たかと云うと、かのピタリと理想通りに定った完全の道徳というものを人に強うる勢力がだんだん微弱になるばかりでなく、昔渇仰した理想その物がいつの間にか偶像視せられて、その代り事実と云うものを土台にしてそれから道徳を造り上げつつ今日・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  19. ・・・ 鶏冠山砲台を、土台ぐるみ、むくむくっとでんぐりがえす処の、爆破力を持ったダイナマイトの威力だから、大きくもあろうか? 主として、冬は川が涸れる。川の水が涸れないと、川の中の発電所の仕事はひどくやり難い。いや、殆んど出来ない。一冬で・・・<葉山嘉樹「坑夫の子」青空文庫>
  20. ・・・斯る無根の空論を土台にして、女は陰性なり、陰は夜にして暗し、故に女子は愚なりと明言して憚らず。我輩は気の毒ながら失敬ながら記者を評して陰陽迷信の愚論者なりと言わんと欲する者なり。既に立論の根本を誤るときは其論及する所に価なきも亦知る可し。女・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  21. ・・・第一物理学を土台にして夫れより諸科専門の研究に及ぶ可し。之を喩えば日本の食物は米飯を本にし、西洋諸国はパンを本にして、然る後に副食物あるが如く、学問の大本は物理学なりと心得、先ず其大概を合点して後に銘々の好む所に従い勉む可きを勉む可し。極端・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  22. ・・・するとその人を先ず土台にしてタイプに仕上げる。勿論、その人の個性はあるが、それは捨てて了って、その人を純化してタイプにして行くと、タイプはノーションじゃなくて、具体的のものだから、それ、最初の目的が達せられるという訳だ。この意味からだと『浮・・・<二葉亭四迷「予が半生の懺悔」青空文庫>
  23. ・・・ 短い月日の間に、はげしく推移する情勢に応じて書かれた一九三三年ごろの諸評論には、いそいで刻下に必要な階級文化のための土台ごしらえを堅めようとする著者のたたかいの気迫がみなぎっている。そのたたかいの気迫、抵抗の猛勇な精神は、その情勢の中・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>
  24. ・・・ ソヴェト同盟における新しい内容での一夫一婦制の確立は、男女の日常生活に作用する社会関係全体が、彼ら自身の犠牲多い積年の努力で健康な土台の上に組み直されて始めて、現実の可能となったのであった。 日本の解放運動は、広く知られているとお・・・<宮本百合子「新しい一夫一婦」青空文庫>
  25. ・・・ 愛の躾は、社会に対する愛と識見の、よりひろい土台の上に立てられるべきであろうと思います。〔一九四六年四月〕<宮本百合子「新しい躾」青空文庫>
  26. ・・・即ちかのようにが土台に横わっているのだね。」「まあ一寸待ってくれ給え。君は僕の事を饒舌る饒舌ると云うが、君が饒舌り出して来ると、駆足になるから、附いて行かれない。その、かのようにと云う怪物の正体も、少し見え掛っては来たが、まあ、茶でもも・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  27. ・・・で、戦争に勝つのはえらい大将やえらい参謀が勝たせるのではなくて、勇猛な兵卒が勝たせるのだとしてあれば、この観察の土台になっている個人主義を危険だとするのである。そんな風に穿鑿をすると同時に、老伯が素食をするのは、土地で好い牛肉が得られないか・・・<森鴎外「沈黙の塔」青空文庫>
  28. ・・・あれは無政府主義の土台になっている。しかしあれは自我主義である。利己主義である。 利己主義は倫理上に排斥しなくてはならない。個人主義という広い名の下に、いろいろな思想を籠めておいて、それを排斥しようとするのは乱暴である。 無政府主義・・・<森鴎外「文芸の主義」青空文庫>
  29. ・・・「お前、酒桶からまくれ落って、土台もうわやや。お母に頼んでくれよ。おらんのか?」「好え加減にしとけ。」 秋三は立ち上った。「おい、頼む頼む。お母に一寸云うてくれったら。」 秋三はそのまま黙って柴を担ごうとすると、「お・・・<横光利一「南北」青空文庫>
  30. ・・・彼は、「生の流転をはかなむ心持ちに纏絡する煩わしい感情から脱したい、乃至時々それから避けて休みたい、ある土台を得たい」という心を起こすのである。そうしてそれが、たとい時に彼を宗教へ向かわせるにしても、結局宗教芸術に現われた、「永久味」の味到・・・<和辻哲郎「享楽人」青空文庫>