と‐ち【土地】例文一覧 43件

  1. ・・・その上二階にも一組宴会があるらしかったが、これも幸いと土地がらに似ず騒がない。所が君、お酌人の中に―― 君も知っているだろう。僕らが昔よく飲みに行ったUの女中に、お徳って女がいた。鼻の低い、額のつまった、あすこ中での茶目だった奴さ。あい・・・<芥川竜之介「片恋」青空文庫>
  2. ・・・若い男というのは、土地の者ではありましょうが、漁夫とも見えないような通りがかりの人で、肩に何か担っていました。「早く……早く行って助けて下さい……あすこだ、あすこだ」 私は、涙を流し放題に流して、地だんだをふまないばかりにせき立てて・・・<有島武郎「溺れかけた兄妹」青空文庫>
  3. ・・・ 唐土の昔、咸寧の吏、韓伯が子某と、王蘊が子某と、劉耽が子某と、いずれ華冑の公子等、相携えて行きて、土地の神、蒋山の廟に遊ぶ。廟中数婦人の像あり、白皙にして甚だ端正。 三人この処に、割籠を開きて、且つ飲み且つ大に食う。その人も無げな・・・<泉鏡花「一景話題」青空文庫>
  4. ・・・ 山の弁当と云えば、土地の者は一般に楽しみの一つとしてある。何か生理上の理由でもあるか知らんが、とにかく、山の仕事をしてやがてたべる弁当が不思議とうまいことは誰も云う所だ。今吾々二人は新らしき清水を扱み来り母の心を籠めた弁当を分けつつた・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  5. ・・・其の後は家に一人のこって居たけれ共夫となるべき人もないので五十余歳まで身代のあらいざらいつかってしまったのでしょうことなしに親の時からつかわれて居た下男を夫にしてその土地を出て田舎に引き込んでその日暮しに男が犬をつって居ると自分は髪の油なん・・・<著:井原西鶴 訳:宮本百合子「元禄時代小説第一巻「本朝二十不孝」ぬきほ(言文一致訳)」青空文庫>
  6. ・・・この家の二、三年前までは繁盛したことや、近ごろは一向客足が遠いことや、土地の人々の薄情なことや、世間で自家の欠点を指摘しているのは知らないで、勝手のいい泣き言ばかりが出た。やがてはしご段をあがって、廊下に違った足音がすると思うと、吉弥が銚子・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  7. ・・・内地雑居となった暁は向う三軒両隣が尽く欧米人となって土地を奪われ商工業を壟断せられ、総ての日本人は欧米人の被傭者、借地人、借家人、小作人、下男、下女となって惴々焉憔々乎として哀みを乞うようになると予言したものもあった。又雑婚が盛んになって総・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  8. ・・・しかしその名を聞いてその国の富饒の土地でないことはすぐにわかります。ほかにわずかに鳥毛を産するファロー島があります。またやや富饒なる西インド中のサンクロア、サントーマス、サンユーアンの三島があります。これ確かに富の源でありますが、しかし経済・・・<内村鑑三「デンマルク国の話」青空文庫>
  9. ・・・自分の踏んでいる足下の土地さえ、あるかないか覚えない。 突然、今自分は打ったか打たぬか知らぬのに、前に目に見えていた白いカラが地に落ちた。そして外国語で何か一言言うのが聞えた。 その刹那に周囲のものが皆一塊になって見えて来た。灰色の・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  10. ・・・これから、もっと、もっと、北へさしてゆくと私のいった理想の土地へ出られるのだ。しかし、私の力は、もうそこまでゆくことができない。どうか私をここに残してみんなは、早く旅を急いだがいい。」と、年とった、哀れながんがいいました。「おじいさん、・・・<小川未明「がん」青空文庫>
  11. ・・・いったいこの土地は昔からの船着場で、他国から流れ渡りの者が絶えず入りこむ。私のようなことを言って救いを乞いに廻る者も希しくないところから、また例のぐらいで土地の者は対手にしないのだ。 私は途方に晦れながら、それでもブラブラと当もなしに町・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  12. ・・・だが、この寒空にこの土地で梨の実を手に入れる事は出来ません。併し、わたくしは今梨の実の沢山になっているところを知っています。それは」と空を指さしまして、「あの天国のお庭でございます。ああ、これから天国のお庭の梨の実を盗んで参りますか・・・<小山内薫「梨の実」青空文庫>
  13. ・・・東京の土地にうろうろされてはわてが困ります、だから早く大阪へ帰ってくれという意味の旅費だったのでしょう。むろん突きかえすべき金だった。いやばかにするなと、投げつけてこそ、私も男だった。それを、おめおめと……、しかし、私は旅費を貰いながら、大・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  14. ・・・ こうした不健康な土地に妻子供を呼び集めねばならぬことかと、多少暗い気持で、倅の耕太郎とこうした会話を交わしていた。 こうした二三日の続いた日の午後、惣治の手紙で心配して、郷里の老父がひょっこり出てきたのだ。「俺が行って追返して・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  15. ・・・そこは僕達の家がほんのしばらくの間だけれども住んでいた土地なんだ。 そこは有名な暗礁や島の多いところだ。その島の小学児童は毎朝勢揃いして一艘の船を仕立てて港の小学校へやって来る。帰りにも待ち合わせてその船に乗って帰る。彼らは雨にも風にも・・・<梶井基次郎「海 断片」青空文庫>
  16. ・・・ 豊吉はしばらく杉の杜の陰で休んでいたが、気の弱いかれは、かくまでに零落れてその懐かしい故郷に帰って来ても、なお大声をあげて自分の帰って来たのを言いふらすことができない、大手を振って自分の生まれた土地を歩くことができない、直ちに兄の家、・・・<国木田独歩「河霧」青空文庫>
  17. ・・・共同体の基本は父母であり、氏族であり、血と土地と言語と風習と防敵とを共同にするところの、具体的単位がすなわちくになのである。共生ということの意味を生活体験的に考えるならば、必ず父母を基として、国土に及ばねばならぬ。そしてわれわれに文化伝統を・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  18. ・・・昔、大地が陥落して瀬戸内海ができるとき、陥落し残った土地だから土台は岩石である。その岩が雨に洗い出されて山のいただきには奇巌がいたるところに露出している。寒霞渓の巌と紅葉については、土地の者の私たちよりもよその人たちの方がくわしいだろう。山・・・<黒島伝治「海賊と遍路」青空文庫>
  19. ・・・   その四 ちょうどその日は樽の代り目で、前の樽の口のと異った品ではあるが、同じ価の、同じ土地で出来た、しかも質は少し佳い位のものであるという酒店の挨拶を聞いて、もしや叱責の種子にはなるまいかと鬼胎を抱くこと大方ならず、か・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  20. ・・・どうだ山村の好男子美しいところを御覧に供しようかねと撃て放せと向けたる筒口俊雄はこのごろ喫み覚えた煙草の煙に紛らかしにっこりと受けたまま返辞なければ往復端書も駄目のことと同伴の男はもどかしがりさてこの土地の奇麗のと言えば、あるある島田には間・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  21. ・・・笹刈りと言えばこの土地でも骨の折れる仕事ですからね。あの笹刈りがあるために、他からこの土地へおよめに来手がないと言われるくらい骨の折れる仕事ですからね。太郎さんもみんなと一緒に、威勢よくその笹刈りに出かけて行ったはよかったが、腰をさがして見・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  22. ・・・いつも水に漬かっている一帯の土地がゆるい勾配をなして露われている。長々と続いている畠の畝に数週前から雪が積もっている。寒さは余りひどくなかったが、単調な、広漠たる、あらゆるものの音を呑み込んでしまうような沈黙をなしている雪が、そこら一面に空・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  23. ・・・三人はそのおかげで、国中で一ばんえらいお医者さまになり王さまから位と土地とをもらって、一生らくらくとくらしました。そしてたくさんの人の病気をなおしました。<鈴木三重吉「湖水の女」青空文庫>
  24. ・・・ 家の者は、此知らない土地へ旅立つ為、種々仕度を調えました。スバーの心は、まるで靄に包まれた明方のように涙でしめりました。近頃、次第に募って来た、ぼんやりとした恐しさで、彼女は物の云えない獣のように、父や母につきまといました。大きな眼を・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  25. ・・・三島は、私にとって忘れてならない土地でした。私のそれから八年間の創作は全部、三島の思想から教えられたものであると言っても過言でない程、三島は私に重大でありました。 八年後、いまは姉にお金をねだることも出来ず、故郷との音信も不通となり、貧・・・<太宰治「老ハイデルベルヒ」青空文庫>
  26. ・・・最初に着く土地はトリエストである。それから先きへ先きへと、東の方へ向けて、不思議の国へ行くのである。 さて到る処で紹介状を出すと、どこでも非常に厚く待遇する。いかに自分の勤めている銀行が大銀行だとしても、その中のいてもいなくても好い役人・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  27. ・・・ひどく肥満した土地の先生らしいのが、逆上して真赤になって、おれに追い附いた。手には例の包みを提げている。おれは丁寧に礼を言った。肥満した先生は名刺をくれておれと握手した。おれも名刺を献上した。見物一同大満足の体で、おれの顔を見てにこにこして・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  28. ・・・この市名は偶然にこの科学者の出現と結び付けられる事になった。この土地における彼の幼年時代について知り得られる事実は遺憾ながら極めて少ない。ただ一つの逸話として伝えられているのは、彼が五歳の時に、父から一つの羅針盤を見せられた事がある、その時・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  29. ・・・豪華な昔しの面影を止めた古いこの土地の伝統的な声曲をも聞いた。ちょっと見には美しい女たちの服装などにも目をつけた。 この海岸も、煤煙の都が必然展けてゆかなければならぬ郊外の住宅地もしくは別荘地の一つであった。北方の大阪から神戸兵庫を経て・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  30. ・・・として背なかにむすんだ兵児帯のはしをふりながらかけ足で歩く、板裏草履の小娘。「ぱっぱ女学生」と土地でいわれている彼女たちは、小刻みに前のめりにおそろしく早く歩く。どっちかの肩を前におしだすようにして、工場の門からつきとばされたいきおいで、三・・・<徳永直「白い道」青空文庫>