とつ‐ぜん【突然】例文一覧 38件

  1. ・・・誰か外へ来たと見えて、戸を叩く音が、突然荒々しく聞え始めました。     二 その日のかれこれ同じ時刻に、この家の外を通りかかった、年の若い一人の日本人があります。それがどう思ったのか、二階の窓から顔を出した支那人の女の子を・・・<芥川竜之介「アグニの神」青空文庫>
  2. ・・・ そう突然父が尋ねた。監督はいつものとおり無表情に見える声で、「いえなに……」 と曖昧に答えた。父は蒲団の左角にひきつけてある懐中道具の中から、重そうな金時計を取りあげて、眼を細めながら遠くに離して時間を読もうとした。 突然・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3. ・・・体が突然がたりと動く。革紐が一本切れる。何だかしゅうというような音がする。フレンチは気の遠くなるのを覚えた。髪の毛の焦げるような臭と、今一つ何だか分からない臭とがする。体が顫え罷んだ。「待て。」 白い姿は動かない。黒い上衣を着た医者・・・<著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」青空文庫>
  4. ・・・ と厭な目つきでまたニヤリで、「ほんとは夜来る方がいいんだのに。フン、フン、フン、」 突然川柳で折紙つきの、という鼻をひこつかせて、「旦那、まあ、あら、まあ、あら良い香い、何て香水を召したんでございます。フン、」 といい・・・<泉鏡花「縁結び」青空文庫>
  5. ・・・老爺はこの湖水についての案内がおおかたつきたので、しばらく無言にキィーキィーをやっとる。予もただ舟足の尾をかえりみ、水の色を注意して、頭を空に感興にふけっている。老爺は突然先生とよんだ。かれはいかに予を観察して先生というのか、予は思わず微笑・・・<伊藤左千夫「河口湖」青空文庫>
  6. ・・・あまり突然のことだから、「どうしたのだ?」と、思わず大きな声をして、僕はかの女の片手を取った。「………」かの女は僕に片手をまかせたままでしばらく僕の膝の上につッ伏していたが、やがて、あたまをあげて、そのくわえていた袖を離し、「青木と・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  7. ・・・ 何しろ社交上の礼儀も何も弁えない駈出しの書生ッぽで、ドンナ名士でも突然訪問して面会出来るものと思い、また訪問者には面会するのが当然で、謝絶するナゾとは以ての外の無礼と考えていたから、何の用かと訊かれてムッとした。「何の用事もありま・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  8. ・・・ この森の直ぐ背後で、女房は突然立ち留まった。その様子が今まで人に追い掛けられていて、この時決心して自分を追い掛けて来た人に向き合うように見えた。「お互に六発ずつ打つ事にしましょうね。あなたがお先へお打ちなさい。」「ようございま・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  9. ・・・すると、いってから二、三日たったある日の晩方、突然、戸口に龍雄の姿が現れたから、両親はびっくりして、そのそばに駆けよりました。「どうして帰ってきたか?」と、母親は問いました。 母親は、なにか我が子が悪いことでもして出されてきたの・・・<小川未明「海へ」青空文庫>
  10. ・・・の姿と見えたのではないかと多少解決がついたので、格別にそれを気にも留めず、翌晩は寝る時に、本は一切片附けて枕許には何も置かずに床に入った、ところが、やがて昨晩と、殆んど同じくらいな刻限になると、今度は突然胸元が重苦しく圧されるようになったの・・・<小山内薫「女の膝」青空文庫>
  11. ・・・駅に降り立つと、くろぐろとした山の肌が突然眼の前に迫った。夜更けの音がそのあたりにうずくまっているようだった。妙な時刻に着いたものだと、しょんぼり佇んでいると、カンテラを振りまわしながら眠ったく駅の名をよんでいた駅員が、いきなり私の手から切・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  12. ・・・昨年の夏以来彼女の実家とは義絶状態になっていたのだが、この一月中旬突然彼女の老父危篤の電報で、大きな腹をして帰ったのだが、十日ほどで老父は死に、ひと七日をすます早々、彼女はまた下宿に帰ってきた。母も姉たちもいるのだが、彼女の腹の始末をつけて・・・<葛西善蔵「死児を産む」青空文庫>
  13. ・・・それは女の姿がその明るい電灯の光を突然遮ったためだった。女が坐って盆をすすめると客のような男がぺこぺこ頭を下げているのが見えた。 石田はなにか芝居でも見ているような気でその窓を眺めていたが、彼の心には先の夜の青年の言った言葉が不知不識の・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  14. ・・・と突然鸚鵡が間のぬけた調子で鳴いたので、「や、こいつは奇体だ、樋口君、どこから買って来たのだ、こいつはおもしろい」と、私はまだ子供です、実際おもしろかった、かごのそばに寄ってながめました。「うん、おもしろい鳥だろう」と、樋口はさびし・・・<国木田独歩「あの時分」青空文庫>
  15. ・・・キューリー夫人のように自分の最愛の夫であり、唯一の科学の共働者であるものを突然不慮の災難によって奪い去らるる死別もあれば、ただ貧苦のためだけで一家が離散して生きなければならない生別もある。姉は島原妹は他国 桜花かや散りぢりに・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  16. ・・・ 武石は、突然、その懸命な声に、自分が悪いことをしているような感じを抱かせられ、窓から辷り落ちた。 コーリヤは、窓の方へ来かけて、途中、ふとあとかえりをして、扉をぴしゃっと閉めた。暫らく二人は窓の下に佇んでいた。丘の上の、雪に蔽われ・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  17. ・・・逃げ出そうとして意を遂げなかった後、恐ろしい雁坂を越えて東京の方へ出ようと試みたことが、既に一度で無く二度までもあったからで、それをお浪が知っていようはずは無いが、雁坂を越えて云々と云い中られたので、突然に鋭い矢を胸の真正中に射込まれたよう・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  18. ・・・俺はその時、突然肩をつかまれたように、そのどの中にも我々の同志が腕を組み、眼を光らして坐っているのだ、ということを感じた。 俺は最初まだ何にも揃っていないガランドウの独房の中に入れられた。扉が小さい室に風を煽って閉まると、ガチャン/\と・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  19. ・・・ とおげんは笑って、あまりに突然な姪の嬉しがらせを信じなかった。 しかし、お玉が迎えに来たことは、どうやら本当らしかった。悩ましいおげんの眼には、何処までが待ちわびた自分を本当に迎えに来てくれたもので、何処までが夢の中に消えていくよ・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  20. ・・・工場の小路で、酔漢の荒い言葉が、突然起った。私は、耳をすました。 ――ば、ばかにするなよ。何がおかしいんだ。たまに酒を呑んだからって、おらあ笑われるような覚えは無え。I can speak English. おれは、夜学へ行ってんだよ。・・・<太宰治「I can speak」青空文庫>
  21. ・・・ 楊樹の蔭を成しているところだ。車輛が五台ほど続いているのを見た。 突然肩を捉えるものがある。 日本人だ、わが同胞だ、下士だ。 「貴様はなんだ?」 かれは苦しい身を起こした。 「どうしてこの車に乗った?」 理由を・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  22. ・・・ とにかく、わずかな季節の差違で、去年はなかったものが、今突然目の前に出現したように思われるのであった。不注意なわれわれ素人には花のない見知らぬ樹木はだいたい針葉樹と扁葉樹との二色ぐらいか、せいぜいで十種二十種にしか区別ができないのに、・・・<寺田寅彦「あひると猿」青空文庫>
  23. ・・・その方と秋山さんの親御が、区役所の兵事課へ突然車をおつけになって、小野某と云う者が、田舎の何番地にいる筈だが、そこへ案内しろと仰ったそうです。兵事課じゃ、何か悪いことでもあったかと吃驚したそうでござえんすがね、何々然云う訳じゃねえ、其小野某・・・<徳田秋声「躯」青空文庫>
  24. ・・・玩具のように小さく見える列車が突然駐って、また走り出すのと、そのあたりの人家の殊に込み合っている様子とで、それは中山の駅であろうと思われた。 水はこの辺に至って、また少しく曲りやや南らしい方向へと流れて行く。今まで掛けてある橋は三、四カ・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  25. ・・・太十は尚お去ろうともしなかった。突然戸が開いた。太十は驚いて身を引いた。其機会に流し元のどぶへ片足を踏ん込んだ。戸を開けたのは茶店の女房であった。太十は女房を喚び挂けて盥を借りようとした。商売柄だけに田舎者には相応に機転の利く女房は自分が水・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  26. ・・・この刺激の強い都を去って、突然と太古の京へ飛び下りた余は、あたかも三伏の日に照りつけられた焼石が、緑の底に空を映さぬ暗い池へ、落ち込んだようなものだ。余はしゅっと云う音と共に、倏忽とわれを去る熱気が、静なる京の夜に震動を起しはせぬかと心配し・・・<夏目漱石「京に着ける夕」青空文庫>
  27. ・・・奴は矢っ張り私を見て居たが突然口を切った。「あそこへ行って見な。そしてお前の好きなようにしたがいいや、俺はな、ここらで見張っているからな」このならず者はこう云い捨てて、階段を下りて行った。 私はひどく酔っ払ったような気持だった。私の・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  28. ・・・そのうち突然自分が今に四十になると云うことに気が附いて、あんな常軌を逸した決心をしたのではあるまいか。」これはちと穿鑿に過ぎた推論である。しかしこんなのが女にありそうな心理状態だと思うと、特別の面白みがある。 ピエエル・オオビュルナンは・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  29. ・・・(ほとんど突然と音楽の声止や、音楽が止んだ。己の心を深く動かした音楽が、神と人との間の不思議を聞せるような音楽が止んだ。大方己のために不思議の世界を現じた楽人は、詰らぬ乞食か何かで、門に立って楽器を鳴らしていたのが、今は曲を終ったので帽子で・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  30. ・・・と詠み、見もせぬに遠き名所を詠み、しこうして自然の美のおのが鼻の尖にぶらさがりたるをも知らぬ貫之以下の歌よみが、何百年の間、数限りもなくはびこりたる中に、突然として曙覧の出でたるはむしろ不思議の感なきに非ず。彼は何に縁りてここに悟るところあ・・・<正岡子規「曙覧の歌」青空文庫>