とっ‐て【取っ手/把手】例文一覧 9件

  1. ・・・ うっかり緩めた把手に、衝と動きを掛けた時である。ものの二三町は瞬く間だ。あたかもその距離の前途の右側に、真赤な人のなりがふらふらと立揚った。天象、地気、草木、この時に当って、人事に属する、赤いものと言えば、読者は直ちに田舎娘の姨見舞か・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  2. ・・・とにかく、祖母は自分の家にとついでからの何十年の間にこの糸車の取っ手をおそらく何千万回あるいはおそらくは何億回か回したことであろう。 自分も子供固有の好奇心から何度か祖母に教わったこの糸車で糸を紡ぐまねをした記憶がある。綿を「打った」の・・・<寺田寅彦「糸車」青空文庫>
  3. ・・・が、とにかく数個の境界条件ならびに当初条件を表示する数式を与えると、そこで始めて一つの具体的な問題が設立され、設立されると同時に少なくも理論上には解式は決定されるのであって、学者はただ数学という器械の取っ手をぐるりと回すだけのことである。こ・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  4. ・・・神棚の燈明をつけるために使う燧金には大きな木の板片が把手についているし、ほくちも多量にあるから点火しやすいが、喫煙用のは小さい鉄片の頭を指先で抓んで打ちつけ、その火花を石に添えたわずかな火口に点じようとするのだから六かしいのである。 火・・・<寺田寅彦「喫煙四十年」青空文庫>
  5. ・・・私はわれわれ人間の頭上に恐ろしい大きな鋏を振り回している神様の残忍に痛快な心持ちを想像しながら勢いよく鋏の取っ手を動かして行った。 病気にさわる事を恐れて初めの日は三尺平方ぐらいにしてやめた。昼過ぎに行って見ると、刈られた葉はすっか・・・<寺田寅彦「芝刈り」青空文庫>
  6. ・・・こわれた虫眼鏡が把手をつけただけでたちまちにして顕微鏡になったようなものである。しかしアースやアンテナを引っぱり廻わす事なしに役に立つ感度の好い機械としての価値はもう永久に失われたようである。東京市会議員のような機械になってしまったのは無残・・・<寺田寅彦「ラジオ雑感」青空文庫>
  7. ・・・縄でしばった南京袋の前だれをあてて、直径五寸もある大きな孟宗竹の根を両足の親指でふんまえて、桶屋がつかうせんという、左右に把手のついた刃物でけずっていた。ガリ、ガリ、ガリッ……。金ぞくのようにかたい竹のふしは、ときどきせんをはねかえしてから・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  8. ・・・ 扉の把手を握ったまま、れんはあわてて二三度腰をかがめた。「はい。はいはい」 扉をしめながら、彼女は更に一つをつけ加えた。「はい。――」 彼は天井を見ながら我知らず苦笑を洩した。が、その笑が消え切らないうちに、彼の胸には・・・<宮本百合子「或る日」青空文庫>
  9. ・・・傍で、把手を廻しながら彼女の楽しむ様子を眺め、私はレコードを買って来てよいことをしたと思った。昔から祖母は謡曲好きなのに、近頃若い者達の買いためるレコードは、皆西洋音楽のものであった。それらもすきでききはしたが、時々思いついたように、謡のは・・・<宮本百合子「祖母のために」青空文庫>