とつ‐にゅう〔‐ニフ〕【突入】例文一覧 21件

  1. ・・・』と僕はいきなり母の居間に突入しました。里子は止める間もなかったので僕に続いて部屋に入ったのです。僕は母の前に座るや、『貴女は私を離婚すると里子に言ったそうですが、其理由を聞きましょう。離婚するなら仕ても私は平気です。或は寧ろ私の望む処・・・<国木田独歩「運命論者」青空文庫>
  2. ・・・   九 かならずしも道玄坂といわず、また白金といわず、つまり東京市街の一端、あるいは甲州街道となり、あるいは青梅道となり、あるいは中原道となり、あるいは世田ヶ谷街道となりて、郊外の林地田圃に突入する処の、市街ともつかず宿駅ともつか・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  3. ・・・博士は、花屋へ、たいへんな決意を以て突入して、それから、まごつき、まごつき、大汗かいて、それでも、薔薇の大輪、三本買いました。ずいぶん高いのには、おどろきました。逃げるようにして花屋から躍り出て、それから、円タク拾って、お宅へ、まっしぐら。・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  4. ・・・ 私は十銭の木戸銭を払って猛然と小屋の中に突入し勢いあまって小屋の奥の荒むしろの壁を突き破り裏の田圃へ出てしまった。また引きかえし、荒むしろを掻きわけて小屋へはいり、見た、小屋の中央に一坪ほどの水たまりがあって、その水たまりは赤く濁って・・・<太宰治「黄村先生言行録」青空文庫>
  5. ・・・とにかく、僕たちの場合、たった一言の指のお世辞から、ぐんぐん悲劇に突入しました。じっさい、自惚れが無ければ、恋愛も何も成立できやしませんが、僕はそれから毎晩のようにトヨ公に通い、また、昼にはおかみと一緒に銀座を歩いたり、そうして、ただもう自・・・<太宰治「女類」青空文庫>
  6. ・・・に、そんな「もののはずみ」だの「きっかけ」だのでわけもなく「恋愛関係」に突入する事が出来るのかも知れないが、しかし心がそのところに無い時には、「きっかけ」も「妙な縁」もあったものでない。 いつか電車で、急停車のために私は隣りに立っている・・・<太宰治「チャンス」青空文庫>
  7. ・・・たちまち加速度を以て、胸焼きこげるほどに海辺を恋い、足袋はだしで家を飛び出しざぶざぶ海中へ突入する。脚にぶつぶつ鱗が生じて、からだをくねらせ二掻き、三掻き、かなしや、その身は奇しき人魚。そんな順序では無かろうかと思う。女は天性、その肉体の脂・・・<太宰治「女人訓戒」青空文庫>
  8. ・・・陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫ん・・・<太宰治「走れメロス」青空文庫>
  9. ・・・余輩、つねに民権を主張し、人民の国政にかかわるべき議論を悦ばざるに非ずといえども、その趣意はただちに政府の内に突入して官員の事務を妨ぐるか、または官員に代りて事をなさんとするの義に非ず。人民は人民の地位にいて、自家の領分内に沢山なる事務に力・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  10. ・・・太平洋戦争に突入する準備を強行していた日本絶対主義の軍事力は、極度に言論圧迫を行って、科学でも、文学でも、子供の歌まで侵略万能に統一した。情報局の陸海軍人が出版物統制にあたって、自分たちの書いたものを出版させて印税をむさぼりながらすべての平・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」青空文庫>
  11. ・・・ 実際に職場のなかへ入って労働者の建設的な生活に混り、それを観察することによって、熱心なプロレタリア芸術家たちは、自分たちがまだ現実の複雑な姿をその根源にまで突入って形象化する弁証法的な手法を充分に獲得していないことをハッキリ自覚したの・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  12. ・・・彼が一応のスタイルをこわして、ヴァレリーの言葉から、日本庶民の理性の暗い、理性によって処理されない事象と会話の中に突入している生真面目さを、ただ日本語の不馴れな作家の時代錯誤とだけ云いすてる人はないだろう。 民主革命の長い広い過程を思え・・・<宮本百合子「五〇年代の文学とそこにある問題」青空文庫>
  13. ・・・ 日本の個人主義は、よきにつけ、あしきにつけ、未発達のまま、第二次世界大戦、太平洋戦争に突入してしまった。そのため、一個人としての自主的な判断力が、どの個人の能力の中にあっても薄弱であった。薄弱な客観的判断力を、津浪のような軍事的強権で・・・<宮本百合子「逆立ちの公・私」青空文庫>
  14. ・・・が必要とされるばかりではなく、突入してゆく当面の現実に対してある評価判断の拠りどころが明確に持たれていなければならないだろう。自然主義的な「散文的」現実反映とこの散文精神の相違は、後者があくまでも社会現実に向って主動的なダイナミックな本質で・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  15. ・・・しかも女の人の場合は社会が男に対するとは違うから、実行が男ほど大ぴらでないし、ある意味では突入っても行かないし、矢張り結婚して見れば、結婚以前のいろいろのことはその結婚生活をより豊富にしたり、真剣なものとする存在として受入れられないで、あり・・・<宮本百合子「女性の生活態度」青空文庫>
  16. ・・・ 嘉村氏は、転落する地方地主の生活に突入っていわばその骨を刻むように書いているつもりなのであるが、結局その努力も主題を発展的な歴史の光によって把握していないから、現象形態だけを追うに止り自身の粘り、社会観の基調がいかに富農的なものである・・・<宮本百合子「同志小林の業績の評価によせて」青空文庫>
  17. ・・・前年九月ワルソーに突入したナチス軍は四〇年の春ノルウェーに進出し、五月マジノ線を突破して一ヵ月の後フランスを降伏させていた。第二次ヨーロッパ大戦は次第にクライマックスに向いはじめた。日本の天皇制権力とその軍閥は目前のドイツファシズムの勝利に・・・<宮本百合子「年譜」青空文庫>
  18. ・・・芸術家としての彼が遂に一大勇猛心をふるいおこして、小さい囲炉裏のような私一個の安心立命は思い捨て、この人生が彼にとって根本に寂しと観じられているならそれなり刻々の我が全生活をかけて、感覚と形象の世界へ突入してゆくことで天地の生気の諸相を捉え・・・<宮本百合子「芭蕉について」青空文庫>
  19. ・・・一九四一年十二月、真珠湾の不意打攻撃を以て太平洋戦争に突入した。そして、一九四五年八月十五日無条件降伏を以てこの惨劇を終った。特に太平洋戦争が始まってから、我々日本の人民は、その戦争を大東亜戦争という名で呼ばされた。且つ「聖戦」と言い聞かさ・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>
  20. ・・・彼はその銃を拾い上げると、先登を切って敵陣の中へ突入した。彼に続いて一大隊が、一聯隊が、そうして敵軍は崩れ出した。ナポレオンの燦然たる栄光はその時から始まった。だが、彼の生涯を通して、アングロサクソンのように彼を苦しめた田虫もまた、同時にそ・・・<横光利一「ナポレオンと田虫」青空文庫>
  21. ・・・いつの間にか底紅の花の群落へ突入していたのである。花びらの底の方が紅色にぼかされていて、尖端の方がかえって白いのであるが、花全体として淡紅色の加わっている度合が大きい。その相違はわずかであるとも言えるが、しかし花の数が多いのであるから、ひど・・・<和辻哲郎「巨椋池の蓮」青空文庫>