とっ‐ぴ【突飛】例文一覧 28件

  1. ・・・ 突飛なるは婦人乗馬講習所が出来て、若い女の入門者がかなりに輻湊した。瀟洒な洋装で肥馬に横乗りするものを其処ら中で見掛けた。更に突飛なのは、六十のお婆さんまでが牛に牽かれて善光寺詣りで娘と一緒にダンスの稽古に出掛け、お爨どんまでが夜業の・・・<内田魯庵「四十年前」青空文庫>
  2. ・・・ あなたにもそれが突飛でありましょうように、それは私にも実に突飛でした。 夜光虫が美しく光る海を前にして、K君はその不思議な謂われをぼちぼち話してくれました。 影ほど不思議なものはないとK君は言いました。君もやってみれば、必ず経・・・<梶井基次郎「Kの昇天」青空文庫>
  3. ・・・思えば母が三円投出したのも、親子の縁を切るなど突飛なことを怒鳴って帰ったのも皆なその心が見えすく。「直ぐ行って来る。親を盗賊に為ることは出来ない。お前心配しないで待ておいで、是非取りかえして来るから」と自分は大急ぎで仕度し、手箱から亡父・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  4. ・・・彼の弟が二人あって、二人とも彼の兄、逃亡した兄に似て手に合わない突飛物、一人を五郎といい、一人を荒雄という、五郎は正作が横浜の会社に出たと聞くや、国元を飛びだして、東京に来た。正作は五郎のために、所々奔走してあるいは商店に入れ、あるいは学僕・・・<国木田独歩「非凡なる凡人」青空文庫>
  5. ・・・何にしろ与一の仕方が少し突飛だったから、それ下として上を剋する与一を撃てということになった。与一の弟の与二は大将として淀の城を攻めさせられた。剛勇ではあり、多勢ではあり、案内は熟く知っていたので、忽に淀の城を攻落し、与二は兄を一元寺で詰腹切・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  6. ・・・「口の悪いのは、私の親切さ。突飛な慾は起さぬがようござんす。それでは、ごめんこうむります。」まじめに言って一礼した。「お送りする。」 先生は、よろよろと立ち上った。私のほうを見て、悲しそうに微笑んで、「君、手帖に書いて置いて・・・<太宰治「黄村先生言行録」青空文庫>
  7. ・・・私は頗る不勉強な大学生ではあったが、けれどもこの瀬川先生の飾らぬ御人格にはひそかに深く敬服していたところがあったので、この先生の講義にだけは努めて出席するようにしていたし、研究室にも二、三度顔を出して突飛な愚問を呈出して、先生をめんくらわせ・・・<太宰治「佳日」青空文庫>
  8. ・・・女給たちは、私が金銭のために盗むのでなく、予言者らしい突飛な冗談と見てとって、かえって喝采を送るだろう。この百姓もまた、酔いどれの悪ふざけとして苦笑をもらすくらいのところであろう。盗め! 私は手をのばし、隣りのテエブルのそのウイスキイのコッ・・・<太宰治「逆行」青空文庫>
  9. ・・・浅間しい神経ではあるが、私も、やはり、あまりに突飛な服装の人間には、どうしても多少の警戒心を抱いてしまうのである。服装なんか、どうでもいいものだとは、昔から一流詩人の常識になっていて、私自身も、服装に就いては何の趣味も無し、家の者の着せる物・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  10. ・・・ これは大学時代の写真ですが、この頃になると、多少、生活苦に似たものを嘗めているので、顔の表情も、そんなに突飛では無いようですし、服装も、普通の制服制帽で、どこやら既に老い疲れている影さえ見えます。もう、この頃、私は或る女のひとと同棲を・・・<太宰治「小さいアルバム」青空文庫>
  11. ・・・遺書を作るために、もう一年などと、そんな突飛な事は言い出せるものでない。私は、ひとりよがりの謂わば詩的な夢想家と思われるのが、何よりいやだった。兄たちだって、私がそんな非現実的な事を言い出したら、送金したくても、送金を中止するより他は無かっ・・・<太宰治「東京八景」青空文庫>
  12. ・・・本来の私ならば、ここに於いて、あの泥靴の不愉快きわまる夢をはじめ、相ついで私の一身上に起る数々の突飛の現象をも思い合せ、しかも、いま、この眼で奇怪の魔性のものを、たしかに見とどけてしまったからには、もはや、逡巡のときでは無い、さては此の家に・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  13. ・・・王子には、この育ちの違った野性の薔薇が、ただもう珍らしく、ひとつき、ふたつき暮してみると、いよいよラプンツェルの突飛な思考や、残忍なほどの活溌な動作、何ものをも恐れぬ勇気、幼児のような無智な質問などに、たまらない魅力を感じ、溺れるほどに愛し・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  14. ・・・ 夢の中に現われる雑多な心像は一見はなはだ突飛なものでなんの連絡もない断片の無機的系列に過ぎないようであるが、精神分析学者の説くところによると、それらの断片をそれの象徴する潜在的内容に翻訳すれば、そういう夢はちゃんとした有機的な文章にな・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  15. ・・・よる情緒の活動が適当な刺激となり、それが生理的に反応して内分泌ホルモンの分泌のバランスに若干の影響を及ぼし、場合によってはいわゆる起死回生の薬と類似した効果を生ずることも可能ではないかという、はなはだ突飛な空想も起こし得られる。 内分泌・・・<寺田寅彦「映画と生理」青空文庫>
  16. ・・・それは新しい研究という事はいくらも出来るが、しかしそれをするには現在の知識の終点を究めた後でなければ、手が出せないという事をよく呑み込まさないと、従来の知識を無視して無闇に突飛な事を考えるような傾向を生ずる恐れがある。この種の人は正式の教育・・・<寺田寅彦「研究的態度の養成」青空文庫>
  17. ・・・殊に例えば金冬心や石濤のごとき支那人の画を見るがよいと思う。突飛な題材を無造作な不細工な描き方で画いているようではあるが、第一構図や意匠の独創的な事は別問題としても今ここに論じているような「不協和の融和」という事が非常にうまく行われているの・・・<寺田寅彦「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」青空文庫>
  18. ・・・ あまりに突飛な考えではあるが、人間のいろいろなスポーツの起原を遠い遠い灰色の昔までたどって行ったら、事によるとそれがやはりわれわれの種族の増殖の営みとなんらかの点でつながっていたのではないかという気がしてくるのである。    ・・・<寺田寅彦「藤棚の陰から」青空文庫>
  19. ・・・また一方であまりに突飛な音の飛躍も喜ばれないのはつまり離れ過ぎを忌むのである。次から次と不即不離な関係で無理なく自由に流動進行することによってそこにベートーヴェンやブラームスが現われて活躍するのである。またあまりに美しい完全な和弦が連行する・・・<寺田寅彦「連句雑俎」青空文庫>
  20. ・・・そうして生活の時間をただその方面にばかり使ったものだから、完全な人間をますます遠ざかって、実に突飛なものになり終せてしまいました。私ばかりではない、かの博士とか何とか云うものも同様であります。あなた方は博士と云うと諸事万端人間いっさい天地宇・・・<夏目漱石「道楽と職業」青空文庫>
  21. ・・・内へ持って来て掛けるのは何故かというと、英吉利風の絵なら絵を、相当に描きこなしておって、部屋の装飾として突飛でない、丁度平凡でチョッと好かろうと思ったから買って来ようかと思ったけれども、買って来ませんでした。その人の絵は誰が見ても習った絵だ・・・<夏目漱石「模倣と独立」青空文庫>
  22. ・・・察するに今度のような突飛な事をしたのは、今に四十になると思ったからではあるまいか。夫が不実をしたのなんのと云う気の毒な一条は全然虚構であるかも知れない。そうでないにしても、夫がそんな事をしているのは、疾うから知っていて、別になんとも思わなか・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  23. ・・・ 話しの種のなくなった様に三人は丸くなってだまって居るうち千世子の心にはいかにも突飛なお伽話めいたものが思いうかんだ。 けれ共千世子はそれを話す事はしなかった。 篤はそんな事に対しての興味はそんなに持って居ない、肇だって初めて会・・・<宮本百合子「千世子(三)」青空文庫>
  24. ・・・ 自分は奇麗にしずとも美くしいものを見、美くしい裡に生きて居たい千世子が友達に花の様な人のあって欲しいと思ったのはそう突飛な事でもなかった。 千世子が自分から進んで交際をしたいと思うほど美くしいに(は会えなかった。 たった一度千・・・<宮本百合子「千世子(二)」青空文庫>
  25. ・・・ 翌日の夕刊で、その整理案撤回を東交が要求して、罷業準備の指令を発したという記事をよんで、私達はそれが突飛なことであるというような感銘はちっとも受けなかった。整理案の内容は、既に一般市民に、東交がそう出ることの自然であるという感じを抱か・・・<宮本百合子「電車の見えない電車通り」青空文庫>
  26. ・・・同じ様な意味で、縞柄とか模様、色彩などがなんとなく同一傾向のものであって、東京の電車の中で見る様な、突飛な服装をしているものはついぞ発見し得ない。強いて云えば京都風というもので統一されてしまっている。 所が、東京は全く雑然としている。お・・・<宮本百合子「二つの型」青空文庫>
  27. ・・・これだけでは少し突飛な説明で、まだ何ら新しき感覚のその新しさには触れ得ない。そこで今一言の必要を認めるが、ここで用いられた主観なるものの意味である。主観とはその物自体なる客体を認識する活動能力をさして云う。認識とは悟性と感性との綜合体なるは・・・<横光利一「新感覚論」青空文庫>
  28. ・・・玄関へ出て来た漱石は、私の突飛さにちょっとあきれたような顔をしたが、気軽に同意して着替えのために引っ込んで行った。 今の桜木町駅のところにあった横浜駅に着いたのは、もう十二時過ぎであった。そのころ私はナンキン町のシナ料理をわりによく知っ・・・<和辻哲郎「漱石の人物」青空文庫>