とび‐た・つ【飛(び)立つ】例文一覧 21件

  1. ・・・そのうちに僕は飛び立つが早いか、岩の上の河童へおどりかかりました。同時にまた河童も逃げ出しました。いや、おそらくは逃げ出したのでしょう。実はひらりと身をかわしたと思うと、たちまちどこかへ消えてしまったのです。僕はいよいよ驚きながら、熊笹の中・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  2. ・・・実際又ブランコ台の上には鴉が二三羽とまっていた、鴉は皆僕を見ても、飛び立つ気色さえ示さなかった。のみならずまん中にとまっていた鴉は大きい嘴を空へ挙げながら、確かに四たび声を出した。 僕は芝の枯れた砂土手に沿い、別荘の多い小みちを曲ること・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  3. ・・・そのうちに勝負の争いを生じ、一人の水夫は飛び立つが早いか、もう一人の水夫の横腹へずぶりとナイフを突き立ててしまう。大勢の水夫は二人のまわりへ四方八方から集まって来る。   6 仰向けになった水夫の死に顔。突然その鼻の穴から尻・・・<芥川竜之介「誘惑」青空文庫>
  4. ・・・ 実は病人は貴方の御話を致しました処、そうでなくってさえ東京のお方と聞いて、病人は飛立つばかり、どうぞお慈悲にと申しますのは、私共からもお願い申して上げますのでございますが、誠に申しかねましたが、一晩お傍で寝かしくださいまして、そうして・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  5. ・・・の一言に飛び立つようにからだを向き直し、「えッ! もう、出たの?」と、問い返した。 吉弥の病気はそうひどくないにしても、罰当り、業さらしという敵愾心は、妻も僕も同じことであった。しかし、向うが黴毒なら、こちらはヒステリ――僕は、どち・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  6. ・・・と、少年は、生まれ変わったようにじょうぶになると聞いて、驚きと喜びとに飛び立つように思いました。「ああ、それはほんとうだ。」と、おばあさんは答えました。そして、さっさとあちらへいってしまいました。 少年は、おばあさんから、いいことを・・・<小川未明「石をのせた車」青空文庫>
  7. ・・・それは、つばめが、止まっていて、飛び立つときに、その糸を鳴らしたとみえます。そこには、バイオリンが一ちょうすすけた天じょうからつるされていました。彼は、よく見ると、それに小さな光る星のような、真珠がはいっていたのでした。「あ!」と、声を・・・<小川未明「海のかなた」青空文庫>
  8. ・・・ けれど、晩には、お母さんのお顔が見られるのだと思うと真吉の心は、うれしくて飛び立つばかりでした。 やっと、半年ばかり前に、そこから汽車に乗って立った、町の停車場へ着くと、もうまったく暗くなっていました。そして雪が積もる上に、まだ降・・・<小川未明「真吉とお母さん」青空文庫>
  9. ・・・いま、少年の描いた小鳥は、紙の上から翼ばたきをして飛び立つのではないかと思われました。そして、たったすこし前まで、自分はこの美しい自然に見とれていたのであるが、このきれいな緑色の木立も日の光も、山も、草も、みんなそのままに絵の具の色ですこし・・・<小川未明「どこで笛吹く」青空文庫>
  10. ・・・小供心にも盲目になるかと思って居たのが見えたのですから、其時の嬉しかったことは今思い出しても飛び立つようでした。最も永い病気で医者にもかかれば、観行院様にも伴われて日朝様へ願を掛けたり、色々苦労したのです。其時日朝上人というのは線香の光で経・・・<幸田露伴「少年時代」青空文庫>
  11. ・・・をすきというよりは、お客におびえている、とでも言いたいくらいで、玄関のベルが鳴り、まず私が取次ぎに出まして、それからお客のお名前を告げに奥さまのお部屋へまいりますと、奥さまはもう既に、鷲の羽音を聞いて飛び立つ一瞬前の小鳥のような感じの異様に・・・<太宰治「饗応夫人」青空文庫>
  12. ・・・とぱっと飛び立つ。 秋風嫋々と翼を撫で、洞庭の烟波眼下にあり、はるかに望めば岳陽の甍、灼爛と落日に燃え、さらに眼を転ずれば、君山、玉鏡に可憐一点の翠黛を描いて湘君の俤をしのばしめ、黒衣の新夫婦は唖々と鳴きかわして先になり後になり憂えず惑・・・<太宰治「竹青」青空文庫>
  13. ・・・ 私は本屋にはいって、或る有名なユダヤ人の戯曲集を一冊買い、それをふところに入れて、ふと入口のほうを見ると、若い女のひとが、鳥の飛び立つ一瞬前のような感じで立って私を見ていた。口を小さくあけているが、まだ言葉を発しない。 吉か凶か。・・・<太宰治「メリイクリスマス」青空文庫>
  14. ・・・ギエリ 晩秋の夜、音楽会もすみ、日比谷公会堂から、おびただしい数の烏が、さまざまの形をして、押し合い、もみ合いしながらぞろぞろ出て来て、やがておのおのの家路に向って、むらむらぱっと飛び立つ。「山名先生じゃ、ありません・・・<太宰治「渡り鳥」青空文庫>
  15. ・・・ この話を導き出しそうな音の原因に関する自分のはじめの考えは、もしや昆虫かあるいは鳥類の群れが飛び立つ音ではないかと思ってみたが、しかしそれは夜半の事だというし、また魚が釣れなくなるという事が確実とすれば単に空中の音波のためとは考えにく・・・<寺田寅彦「怪異考」青空文庫>
  16. ・・・というのは、蜻とんぼを捕えるのと同じ恰好の叉手形の網で、しかもそれよりきわめて大形のを遠くから勢いよく投げかけて、冬田に下りている鴫を飛び立つ瞬間に捕獲する方法である。「突く」というのは投槍のように網を突き飛ばす操作をそう云ったものではない・・・<寺田寅彦「鴫突き」青空文庫>
  17. ・・・畦道をその方に歩いて行く人影のいつか豆ほどに小さくなり、折々飛立つ白鷺の忽ち見えなくなることから考えて、近いようでも海まではかなりの距離があるらしい。 これは堤防の上を歩みながら見る右側の眺望であるが、左側を見れば遠く小工場の建物と烟突・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  18. ・・・の面にはまだ白い雲のちぎれちぎれに動いている朝まだき、家毎に物洗う水の音と、女供の嬉々として笑う声の聞える折から、竿竹売の田舎びた太い声に驚かされて、犬の子は吠え、日に曝した雨傘のかげからは雀がぱっと飛び立つなど、江戸のむかしに雨の晴れた日・・・<永井荷風「巷の声」青空文庫>
  19. ・・・側は漂渺たる隅田の川水青うして白帆に風を孕み波に眠れる都鳥の艪楫に夢を破られて飛び立つ羽音も物たるげなり。待乳山の森浅草寺の塔の影いづれか春の景色ならざる。実に帝都第一の眺めなり。懸茶屋には絹被の芋慈姑の串団子を陳ね栄螺の壼焼などをも鬻ぐ。・・・<永井荷風「向嶋」青空文庫>
  20. ・・・は青く枝は揺るる、楽しく歌をばうたうのじゃ、仲よくおうた友だちと、枝から枝へ木から木へ、天道さまの光の中を、歌って歌って参るのじゃ、ひるごろならば、涼しい葉陰にしばしやすんで黙るのじゃ、又ちちと鳴いて飛び立つじゃ、空の青板をめざすのじゃ、又・・・<宮沢賢治「二十六夜」青空文庫>
  21. ・・・けれども、第二次世界大戦において日本の軍事権力と上級軍人の或るものが演じた役割は、生命の破壊よりも遙かに悪逆な、生きながらその人々の人間性を殺戮することを敢てした。飛び立つ飛行機を見送ったときの兵士たちの敏感なこころの中では、音を立てて、何・・・<宮本百合子「逆立ちの公・私」青空文庫>