トマト【tomato】例文一覧 24件

  1. ・・・太陽は剃刀のようにトマトの畠の上に冴えかえっていた。村の集会所の上にも、向うの、白い製薬会社と、発電所が、晴れきった空の下にくっきりと見られるS町にも、何か崩れつゝあるものと、動きつゝあるものとが感じられた。 僕には、兄が何をやっている・・・<黒島伝治「浮動する地価」青空文庫>
  2. ・・・ 俺は今朝Nが警察の出がけに持ってきてくれたトマトとマンジュウの包みをあけたが、しばらくうつろな気持で、膝の上に置いたきりにしていた。 控室には俺の外にコソ泥ていの髯をボウ/\とのばした厚い唇の男が、巡査に附き添われて検事の調べを待・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  3. ・・・ 私は貧乏なので、なんの空想も浮ばず、十年一日の如く、月末のやりくり、庭にトマトの苗を植えた事など、ながながと小説に書いて、ちかごろは、それもすっかり、いやになって、なんとかしなければならぬと、ただやきもきして新聞ばかり読んでいます。脚・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  4. ・・・云云と、おたがいの腹の底のどこかしらで、ゆるせぬ反撥、しのびがたき敵意、あの小説は、なんだい、とてんから認めていなかったのだから、うまく折合う道理はなし、或る日、地平は、かれの家の裏庭に、かねて栽培のトマト、ことのほか赤く粒も大なるもの二十・・・<太宰治「喝采」青空文庫>
  5. ・・・必ずしも、仏人ルナアル氏の真似 とうもろこしと、トマト。「こんなに、丈ばかり大きくなって、私は、どんなに恥ずかしい事か。そろそろ、実をつけなければならないのだけれども、おなかに力が無いから、いきむ事が出来ないの。みんなは、葦・・・<太宰治「失敗園」青空文庫>
  6. ・・・或る小さい駅から、桃とトマトの一ぱいはいっている籠をさげて乗り込んで来たおかみさんがありました。 たちまち、そのおかみさんは乗客たちに包囲され、何かひそひそ囁やかれています。「だめだよ。」とおかみさんは強気のひとらしく、甲高い声で拒否し・・・<太宰治「たずねびと」青空文庫>
  7. ・・・食卓にのぼる魚の値段を、いちいち妻に問いただし、新聞の政治欄を、むさぼる如く読み、支那の地図をひろげては、何やら仔細らしく検討し、ひとり首肯き、また庭にトマトを植え、朝顔の鉢をいじり、さらに百花譜、動物図鑑、日本地理風俗大系などを、ひまひま・・・<太宰治「八十八夜」青空文庫>
  8. ・・・ふいと酒を飲みたくなる。トマトを庭へ植えようかと思う。家郷の母へ、御機嫌うかがいの手紙を書きたくなる。これら、突拍子ない衝動は、すべて、どろぼう入来の前兆と考えて、間違いないようだ。読者も、お気をつけるがよい。体験者の言は、必ず、信じなけれ・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  9. ・・・からだじゅう、トマトがつぶれたみたいで、頸にも胸にも、おなかにも、ぶつぶつ醜怪を極めて豆粒ほども大きい吹出物が、まるで全身に角が生えたように、きのこが生えたように、すきまなく、一面に噴き出て、ふふふふ笑いたくなりました。そろそろ、両脚のほう・・・<太宰治「皮膚と心」青空文庫>
  10. ・・・十坪の庭にトマトを植え、ちくわを食いて、洗濯に専念するも、これ天職、われとわがはらわたを破り、わが袖、炎々の焔あげつつあるも、われは嵐にさからって、王者、肩そびやかしてすすまなければならぬ、さだめを負うて生れた。大礼服着たる衣紋竹、すでに枯・・・<太宰治「HUMAN LOST」青空文庫>
  11. ・・・ 赤楽の茶わんもトマトスープでも入れられては困るであろう。<寺田寅彦「青磁のモンタージュ」青空文庫>
  12. ・・・まさか有田の乞食婆の喰っていたあの唐辛子のかかった真赤なうどんと、ポツオリの旗亭のトマトのかかった赤いスパゲッティとの類似のためであろうとも思われない。しかしこの二つの、時間的にも空間的にも遠く距れた心像をつなぎ合せている何物かがあるだけは・・・<寺田寅彦「二つの正月」青空文庫>
  13. ・・・ところが二人は、はたけにトマトを十本植えていた。そのうち五本がポンデローザでね、五本がレッドチェリイだよ。ポンデローザにはまっ赤な大きな実がつくし、レッドチェリーにはさくらんぼほどの赤い実がまるでたくさんできる。ぼくはトマトは食べないけれど・・・<宮沢賢治「黄いろのトマト」青空文庫>
  14. ・・・「あああたしはゆっくりでいいんだからお前さきにおあがり、姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いて行ったよ。」「ではぼくたべよう。」 ジョバンニは窓のところからトマトの皿をとってパンといっしょにしばらくむしゃむしゃたべました・・・<宮沢賢治「銀河鉄道の夜」青空文庫>
  15. ・・・家といってもそれは町はずれの川ばたにあるこわれた水車小屋で、ゴーシュはそこにたった一人ですんでいて午前は小屋のまわりの小さな畑でトマトの枝をきったり甘藍の虫をひろったりしてひるすぎになるといつも出て行っていたのです。ゴーシュがうちへ入ってあ・・・<宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」青空文庫>
  16. ・・・風は不断のオルガンを弾じ雲はトマトの如く又馬鈴薯の如くである。路のかたわらなる草花は或は赤く或は白い。金剛石は硬く滑石は軟らかである。牧場は緑に海は青い。その牧場にはうるわしき牛佇立し羊群馳ける。その海には青く装える鰯も泳ぎ大なる鯨も浮ぶ。・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  17. ・・・ 三つ十五カペイキでトマトを買った。てのひらにのっけて雪道を歩くとそれは烏瓜のようだった。実際美味くなかった。ナルザン鉱泉の空瓶をもってって牛乳を買う50к。ゴム製尻あてのような大きい輪パン一ルーブル。となりの車室の子供づれの細君が二つ・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  18. ・・・人気ない樹かげと長い塀との間の朝の地べたから巨大な白い髄が抽け出たような異様さで、その脚元にくさったトマトの濃い赤さ、胡瓜の皮の青さ、噎えたものの匂いをちらばしている。 通りすぎようとする人影に、コリーは同じほどの高さでその顔を向けた。・・・<宮本百合子「犬三態」青空文庫>
  19. ・・・こういう母親は、自分の子にトマトをたべさせようと思って、店先に一つしかないのを見れば、もう一人そこにいる母親がどんな切迫した必要から、やはりその一つのトマトを欲しく思っているかもしれないなどとは思いもせず、必要の人が多ければ多いほど、我勝ち・・・<宮本百合子「科学の精神を」青空文庫>
  20. ・・・それから夏ミカンをよくあがるように。トマトはまだでしょうか。おかゆのお弁当を一ヵ月つづけておきました。朝牛乳、玉子二つ、一つはナマ一つは半ジュク、御注文のとおりいたしました。本のこともすぐ計らいます。どうかくれぐれもお大切に。お元気なのは分・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  21. ・・・今年は、フント一ルーブルのトマト売が出ている。葡萄売も出ている。高いところでラジオ拡声ラッパが二十一度の明るい北方の夏空へギター合奏を流している。ソヴェト十三年の音と光だ。ずらりと並んだ乳母車のなかでは、いる、いる! それ等の音と光に向って・・・<宮本百合子「子供・子供・子供のモスクワ」青空文庫>
  22. ・・・夏は卵のかわりにトマトをたべます。 昼はごく簡単な日本食をとります。 夜は六七時頃、三度のうちでは一ばん御馳走のある食卓にむかいます。        嗜好 わたくしは支那料理が非常に好きです。日本料理も西洋料理も、お・・・<宮本百合子「身辺打明けの記」青空文庫>
  23. ・・・ウラジーミル大公の食堂に今日一皿二十カペイキのサラダがトマトと胡瓜の色鮮やかに並び、シベリアの奥で苔の採集を仕事としている背中の丸い白い髯の小学者が妻と木彫のテーブルについているのを眺めることは絶対に不愉快でありえない、しかし、ゴーリキー自・・・<宮本百合子「スモーリヌイに翻る赤旗」青空文庫>
  24. ・・・ やがてそろそろ朝日に暑気が加って肌に感じられる時刻になると、白いルバーシカ、白い丸帽子やハンティングが現れ、若い娘たちの派手な色のスカートも翻って、胡瓜の青さ、トマトの赤さ、西瓜のゆたかな山が到るところで目について来る。 ロシヤの・・・<宮本百合子「モスクワ」青空文庫>