と‐も‐あれ例文一覧 18件

  1. ・・・「大慈大悲は仏菩薩にこそおわすれ、この年老いた気の弱りに、毎度御意見は申すなれども、姫神、任侠の御気風ましまし、ともあれ、先んじて、お袖に縋ったものの願い事を、お聞届けの模様がある。一たび取次いでおましょうぞ――えいとな。…… や、・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  2. ・・・少い人たち二人の処、向後はともあれ、今日ばかりは一杯でなしに、一口呑んだら直ぐに帰って、意気な親仁になれと云う。の、婆々どののたっての頼みじゃ。田鼠化為鶉、親仁、すなわち意気となる。はッはッはッ。いや。当家のお母堂様も御存じじゃった、親仁こ・・・<泉鏡花「錦染滝白糸」青空文庫>
  3. ・・・が、議論はともあれ、初めは微酔気味であったのが段々真剣になって低い沈んだ調子でポツリポツリと話すのが淋しい秋の寂寞に浸み入るような気がして、内心承服出来ない言葉の一つ一つをシンミリと味わせられた。「その女をどうしようッてのだい?」「・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  4. ・・・ 何はともあれ、人生の楽しみにして良書を得た時より、さらに深きものは他にないということができます。「書を読んで、悉く信ずれば、読まざるに如かず」という諺があります。蓋し、至言となします。いかに、尊敬する人の著書にしろ、時代に推移・・・<小川未明「書を愛して書を持たず」青空文庫>
  5. ・・・「浄瑠璃みたいな文学的要素がちょっともあれへん」 と、言いきかせた。彼は国漢文中等教員検定試験の勉強中であった。それで、お君は、「あわれ逢瀬の首尾あらば、それを二人が最期日と、名残りの文のいいかわし、毎夜毎夜の死覚悟、魂抜けてと・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  6. ・・・しかもあとお茶をすすり、爪楊子を使うとは、若気の至りか、厚顔しいのか、ともあれ色気も何もあったものではなく、Kはプリプリ怒り出して、それが原因でかなり見るべきところのあったその恋も無残に破れてしまったのである。けれども今もなお私は「月ヶ瀬」・・・<織田作之助「大阪発見」青空文庫>
  7. ・・・悪い男云々を聴き咎めて蝶子は、何はともあれ、扇子をパチパチさせて突っ立っている柳吉を「この人私の何や」と紹介した。「へい、おこしやす」種吉はそれ以上挨拶が続かず、そわそわしてろくろく顔もよう見なかった。 お辰は娘の顔を見た途端に、浴衣の・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  8. ・・・ 何はともあれ、小沢は著ていたレインコートをあわてて脱いだ。 そして、娘の裸の体へぱっと著せてやった。「ありがとう」雨の音で消されてしまうくらいの小さな声で言って、娘は飛びつくように、レインコートにくるまってしまうと、ほっとした・・・<織田作之助「夜光虫」青空文庫>
  9. ・・・掛けては置くものだと、それをもって世間狭い大阪をあとに、ともあれ東京へ行く、その途中、熱海で瞳は妊娠していると打ち明けた。あんたの子だと言われるまでもなく、文句なしにそのつもりで、きくなり喜んだが、何度もそれを繰りかえして言われると、ふと松・・・<織田作之助「雪の夜」青空文庫>
  10. ・・・白の袖夕風に吹き靡かすを認めあれはと問えば今が若手の売出し秋子とあるをさりげなく肚にたたみすぐその翌晩月の出際に隅の武蔵野から名も因縁づくの秋子をまねけば小春もよしお夏もよし秋子も同じくよしあしの何はともあれおちかづきと気取って見せた盃が毒・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  11. ・・・しかし私は自分の畠にもない素人評が実際子供の励ましになるのかどうか、それにすら迷った。ともあれ、次郎の言うことには、たよろうとするあわれさがあった。 次郎の作った画を前に置いて、私は自分の内に深く突き入った。そこにわが子を見た。なんとな・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  12. ・・・所謂刳磔の苦労をして、一作、一作を書き終えるごとに、世評はともあれ、彼の屈辱の傷はいよいよ激烈にうずき、痛み、彼の心の満たされぬ空洞が、いよいよひろがり、深まり、そうして死んだのである。傑作の幻影にだまくらかされ、永遠の美に魅せられ、浮かさ・・・<太宰治「逆行」青空文庫>
  13. ・・・――君のこの前の作品、あのホラ、染めた髪の女が出て来る――少くともあれとは比較にならないね」 みんなドッと笑った。云われた当人は、少し顔を赤らめながら、やっぱり大笑いした。「だが、材料はまだ整理が足りない。ゴチャゴチャしている。いら・・・<宮本百合子「「鎌と鎚」工場の文学研究会」青空文庫>
  14. ・・・ 商人は商人気質の鋭さ万能に、家を守る女性は、何はともあれ我家のやりくり専一に、それぞれ主観の利益に立った個々の生きかたを続けて来たところへ、今日は一方から謂わば純理的な方針が与えられ、しかもその純理的な算数の根本には、まだ従来の生産の・・・<宮本百合子「主婦意識の転換」青空文庫>
  15. ・・・ 禰宜様宮田は、すぐ帰ってもらったことに満足し、お石は何はともあれ来てくれたことに満足して、家中には久しぶりで平和が戻って来たのであった。 けれども、使は三日にあげずよこされる。そして、ことわられては素直に帰って行く。「またおき・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  16. ・・・私たちは何はともあれ婦人民主クラブ員なのだから、日本の今日の民主主義の歴史的な性質、方向などについて、簡単ながら間違いない理解をもっていた方が便利だろう。 今日、世界には三つの民主主義がある。ブルジョア民主主義、新民主主義、社会主義的民・・・<宮本百合子「三つの民主主義」青空文庫>
  17. ・・・わからない男だ、というとき、その言葉には相手が人生的なことかあるいは職業的なことか、何はともあれ原理的な点で正当な理解をもっていないという意味がこめられている。わからない女だね、という表現は、いつの場合も決してそれほど原理的なことの判断につ・・・<宮本百合子「ものわかりよさ」青空文庫>
  18. ・・・丁度、美術愛好者が、古代ギリシャ建築の明美な柱列を見た時、心を打れ、何はともあれ、アカンサスの葉で飾られた精緻な柱頭と、単純で力強い柱台とに注意を向けた如く、学徒が、狂暴な程、雑多な原質の目覚める青年期、不思議に還元的色彩を帯びる更年期を特・・・<宮本百合子「われを省みる」青空文庫>