とらわれ〔とらはれ〕【囚われ】例文一覧 19件

  1. ・・・ 幽霊などを見る者は迷信に囚われて居るからである。ではなぜ迷信に捉われているのか? 幽霊などを見るからである。こう云う今人の論法は勿論所謂循環論法に過ぎない。 況や更にこみ入った問題は全然信念の上に立脚している。我々は理性に耳を借さない・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・つまりおとよさんの恋の手に囚われてしまっているのだから、省作が一人であがいた分には、いくらあがいたってなんにもならないのだ。この事件は省作の心だけではどうすることもできないのだ。     五 それから後のおとよさんは片思いの・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  3. ・・・ドストエフスキーの『罪と罰』の如きは露国の最大文学であるを確認しつつもなお、ドストエフスキーの文章はカラ下手くそで全で成っていないといってツルゲーネフの次位に置き、文学上の批判がともすれば文章の好悪に囚われていた。例えば現時の文学に対しても・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  4. ・・・僕はこの真面目と云うことは即ち自分が形式に囚われないと云うことであろうと思う。何者にも囚われないで自然人生を見ると云う気持、沁み/″\と感ずる気持が、真のシンセリティの気持である。 かくて始めて風の音を聴いても、音楽を聴いても、他のあら・・・<小川未明「動く絵と新しき夢幻」青空文庫>
  5. ・・・ 作家は、何ものにも囚われてはなりません。もし、囚われた時は、自由人でありません。さなきだに、今の作家は容易に自由人たることを許されていない。芸術家が、精神の自由を得なかった時は、もう死んだも同じようなものです。 この故に、芸術家た・・・<小川未明「作家としての問題」青空文庫>
  6. ・・・そして、旧習慣、常套、俗悪なる形式作法に囚われなければならぬのか。 塵埃に塗れた、草や、木が、風雨を恋うるように、生活に疲れた人々は、清新な生命の泉に渇するのであります。詩の使命を知るものは、童話が、いかに、この人生に重大な位置にあるか・・・<小川未明「『小さな草と太陽』序」青空文庫>
  7. ・・・ためからも、こうした怪しげな文筆など棄てて、ああした不幸な青年たちに直接に、自分として持ってきたすべてを捧げたい――そうしたところに自分の救いの道があるのではあるまいか、などと、いつものアル中的空想に囚われたりしたが、結局自分はその晩の光景・・・<葛西善蔵「死児を産む」青空文庫>
  8. ・・・すが、鎌倉から東京へ帰り、間もなく帰郷して例の関係事業に努力を傾注したのでしたが、慣れぬ商法の失敗がちで、つい情にひかされやすい私の性格から、ついにある犯罪を構成するような結果に立到り、表記の未決監に囚われの身となりおります次第、真に面目次・・・<葛西善蔵「父の出郷」青空文庫>
  9. ・・・ファラデーが action at a distance を無視したのでも、アインスタインが時と空間に関する伝習的の考えを根本から引っくり返して相対率原理の基礎を置いたのでも、いずれにしても伝習の権威に囚われない偉人の旋毛曲りに外ならないので・・・<寺田寅彦「科学上における権威の価値と弊害」青空文庫>
  10. ・・・学校を出てから、東京へ出て、時代の新しい空気に触れることを希望していながら、固定的な義姉の愛に囚われて、今のような家庭の主婦となったことについては、彼女自身ははっきり意識していないにしても、私の感じえたところから言えば、多少枉屈的な運命の悲・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  11. ・・・あれを真面目に見ているのは、虚偽の因襲に囚われた愚かな見物である。○立ち廻りとか、だんまりとか号するものは、前後の筋に関係なき、独立したる体操、もしくは滑稽踊として賞翫されているらしい。筋の発展もしくは危機切逼という点から見たら、いかに・・・<夏目漱石「明治座の所感を虚子君に問れて」青空文庫>
  12. ・・・ それで人間というものには二通りの色合があるということは今申した通りですが、このイミテーションとインデペンデントですが、片方はユニテー――人の真似をしたり、法則に囚われたりする人である。片方は自由、独立の径路を通って行く。これは人間のそ・・・<夏目漱石「模倣と独立」青空文庫>
  13. ・・・―― 彼は、恐しい夢でも見てるような、無気味な気持に囚われながら、追っかけられながら、デッキのボースンの処へ駆けつけた。「駄目だ。ボースン。奴あ死んでるぜ」 彼は監獄から出たての放免囚見たいに、青くなって云った。「何だって!・・・<葉山嘉樹「労働者の居ない船」青空文庫>
  14. ・・・、平田小六という「囚われた大地」という長篇小説をかいた元隆章閣の人などもはいっているし、婦人作家では私のほかにいね子[自注16]、松田さん[自注17]なども居ります。藤島まきという作家も出ました。文学におけるリアリズムの問題が、はじめ妙な傾・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  15.  特にとり立てて言うのは困難に感じますが、ナウカ社版の第一回全ソヴェト作家大会報告や「ひらかれた処女地」など。 注目すべき作としては「青年」「獄」「牡丹のある家」「囚われた大地」等があると思いますが、最も傑れたものとは言・・・<宮本百合子「「今年の傑作小説」」青空文庫>
  16. ・・・大衆の多くを語らぬ口と、広く、深く視る便宜を益々縮められつつある眼とは、十分にその由って来るところをも究明しかねる日常生活の悪条件に囚われ勝ちである。政治と民衆とは決して近い隣りにはいない。経済の枢軸の廻転は民衆にとっては増税としてのみ最も・・・<宮本百合子「今日の文学の鳥瞰図」青空文庫>
  17.  偶然のことから、私は「囚われた大地」がまだ発表されず、あるいはその原稿も小部分しか書かれていなかったと思われる時分、平田小六氏と知り合う機会を得た。そのころ平田さんは、日本にはまだ農民の生活を如実に書いた文学がすくないとい・・・<宮本百合子「作家への課題」青空文庫>
  18. ・・・以外に何ものにも囚われない心を示している。彼は色道修行者のように女の享楽を焦点として国々を見て歩くのではない。また彼は美術史家のように、ただ古美術の遺品をのみ目ざして旅行するのでもない。彼は美しいものには何ものにも直ちに心を開く自由な旅行者・・・<和辻哲郎「享楽人」青空文庫>
  19. ・・・あるいはまた幻影に囚われた理想家を現実に引きもどした、という意味で。――しかしそれは決して以前よりも深い真実を捕えてくれたわけでなかった。それのもたらした新事実をあげれば、まず自然科学の進歩、社会主義の勃興、一般人民の物質的享楽への権利の主・・・<和辻哲郎「「自然」を深めよ」青空文庫>