とり‐かえ・す〔‐かへす〕【取(り)返す】例文一覧 14件

  1. ・・・ と祖母も莞爾して、嫁の記念を取返す、二度目の外出はいそいそするのに、手を曳かれて、キチンと小口を揃えて置いた、あと三冊の兄弟を、父の膝許に残しながら、出しなに、台所を竊と覗くと、灯は棕櫚の葉風に自から消えたと覚しく……真の暗がりに、も・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  2. ・・・「しかしながらわれらは外に失いしところのものを内において取り返すを得べし、君らと余との生存中にわれらはユトランドの曠野を化して薔薇の花咲くところとなすを得べし」と彼は続いて答えました。この工兵士官に預言者イザヤの精神がありました。彼の血管に・・・<内村鑑三「デンマルク国の話」青空文庫>
  3. ・・・ こののちは、自分が、できるだけ働いて、自分の力でそれを取り返すよりは、ほかに途がないことを感じました。 松蔵は、あの忘れがたいおじいさんのかたみである、そして、自分の大事なバイオリンを取り返すためには、どんな苦労をもいとわないと決・・・<小川未明「海のかなた」青空文庫>
  4. ・・・そして、人間のすべてが曾ては持っていた人間性を取り返すまでは決して容易の努力ではないと信ずるのであります。 もし今日の知識階級と名の付く者の中に、社会主義的精神の分らない者があったなら、其者は馬鹿とか利巧とか評される前に恐らく良心がない・・・<小川未明「草木の暗示から」青空文庫>
  5.  たいそう外科的手術を怖ろしがっている、若い婦人がありました。 もし、すこしぐらいの痛さを我慢をして、手術を受けるなら、十分健康を取り返すことができるのを、どうしても、その婦人は、手術を受けることを欲しなかったのです。 季候の変・・・<小川未明「世の中のこと」青空文庫>
  6. ・・・ 一先拝借して自分の急場を救った上で、その中に母から取返すとも、自分で工夫して金を作るとも、何とでもして取った百円を再び革包に入れ、そのまま人知れず先方に届ける。 天の賜とは実にこの事と、無上によろこび、それから二百円を入れたままの革包・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  7. ・・・このひけ目を取り返すには次のジェネレーションの自覚に期待するよりほかに全く望みはないように見える。     六 麦秋 だいぶ評判の映画であったらしいが、自分にはそれほどおもしろくなかった。それは畢竟、この映画には自分の求・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  8.  一九四五年の八月以来、日本のすべての生活は驚く程のテンポで推移している。日本の民主化がいわれ、やっと私たちの生命が私たちのものに戻された時、日本のインテリゲンチャは「自分」を取り返す為に熱中と混乱とを示した。何しろ戦争が強・・・<宮本百合子「前進的な勢力の結集」青空文庫>
  9. ・・・悪党どもなら匕首を振った後に仲直りするような場合にも、愛する者同志は、ただ一瞥一語のためにも仲をたがえ取り返すべからざるに至る。こうした心情生活が、殆ど完璧の域にあったことの記憶の中に説明のつきかねることの往々ある離別の秘密がひそんでいるの・・・<宮本百合子「バルザックについてのノート」青空文庫>
  10. ・・・そこで人々はこの事件に話を移して、フォルチュネ、ウールフレークが再びその手帳を取り返すことができるだろうかできないだろうかなど言い合った。 そして食事が終わった。 人々がコーヒーを飲み了ったと思うと、憲兵の伍長が入り口に現われた。か・・・<著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩「糸くず」青空文庫>
  11. ・・・その声がわが口から出てわが耳に入るや否や、庄兵衛はこの称呼の不穏当なのに気がついたが、今さらすでに出たことばを取り返すこともできなかった。「はい」と答えた喜助も、「さん」と呼ばれたのを不審に思うらしく、おそるおそる庄兵衛の気色をうかがっ・・・<森鴎外「高瀬舟」青空文庫>
  12. ・・・王子はその首の骨を取り返すために宮廷に行き、祖父の王の千人の妃の首を切って母妃の仇を討ったのち、母妃の首の骨を見つけ出して来た。それによって美しい妃の蘇りが成功する。この蘇った妃と、その首なきむくろに哺まれた王子と、父の王と、それが厳島の神・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  13. ・・・苦しいほどの緊張は快い静かな歓喜に返って行き、心臓の鼓動はまたゆるやかに低い調子を取り返す。 けれどもこの穏やかさは、視覚に集中した心が聴覚の方へ中心を移す一つの中間状態に過ぎない。僧侶たちが、仏を礼讃する心持ちにあふれながら読誦するあ・・・<和辻哲郎「偶像崇拝の心理」青空文庫>
  14. ・・・肉体の苦しみよりもむしろ虚偽と不誠実との刺激に苦しみもがいていた病人が、その瞬間に宿命を覚悟し、心の平静と清朗とを取り返すのを見た時、私の心はいかに異様な感情に慄えたろう。……私は感謝し喜び、そうして初めてまじり気のない感情でしみじみと病人・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>