とり‐けし【取(り)消し】例文一覧 17件

  1. ・・・これじゃ頼もしくないと思って、雑木の涼しい影が落ちている下へ、くたびれた尻をすえたまま、ややしばらく見ていたが、やはりくだらないという心もちは取消しようがない。第一、そばに立っている日本風のお堂との対照ばかりでも、悲惨なこっけいの感じが先に・・・<芥川竜之介「樗牛の事」青空文庫>
  2. ・・・川森さえ疾の昔に仁右衛門の保証を取消して、仁右衛門に退場を迫る人となっていた。市街地でも農場内でも彼れに融通をしようというものは一人もなくなった。佐藤の夫婦は幾度も事務所に行って早く広岡を退場させてくれなければ自分たちが退場すると申出た。駐・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  3. ・・・「もっとも、一所に道を歩行いていて、左とか右とか、私と説が違って、さて自分が勝つと――銀座の人込の中で、どうです、それ見たか、と白い……」「多謝。」「逞しい。」「取消し。」「腕を、拳固がまえの握拳で、二の腕の見えるまで、・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  4. ・・・八幡の鳥居の傍まで来て別れようとした時、何と思った乎、「イヤ、昨宵は馬鹿ッ話をした、女の写真屋の話は最う取消しだ、」とニヤリと笑いつつ、「飛んでもないお饒舌をしてしまった!」       * その晩の話を綜合して想像すると、・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  5. ・・・「いや、あれは取消しです。速記録から除いて貰いましょう。本員の失言でした」「まア」「あはは……。僕いま、親父の出している変てこな雑誌の編集を手伝っていて、実は音楽どころじゃないんです」と、白崎はまたまずいことを言いだしたが、しか・・・<織田作之助「昨日・今日・明日」青空文庫>
  6. ・・・うものは、その腹中に、どうしても死なぬ虫を一匹持っていて、最大の悲劇をも冷酷の眼で平気で観察しているものだ、と前回に於いても、前々回に於いても非難して来た筈でありますが、その非難をも、ちょっとついでに取り消してお目に掛けたくなりました。何も・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  7. ・・・屑物屋へはらうつもりで承知してしまったのだが、これはしばらく取消しにしよう。この手紙といっしょに延期するむね葉書かいた。どうせ来年の予定だったから、来年までには、僕も何とかなるつもりでいた――が、それまでに一人前になれるかどうか、疑問に思わ・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  8. ・・・ 議長が、それでは唯今の何とかを取消します、というたようであった。すると、また隅々からわあっという歓声とも怒号とも分らぬ声が聞こえた。 和服を着た肥った老人が登壇した。何か書類のようなものを鷲握みにして読みはじめたと思ったらすぐ終っ・・・<寺田寅彦「議会の印象」青空文庫>
  9. ・・・しかしこれを読んだために私がここに書いた事の一部を取り消したり変更する必要は起こらなかった。私の問題は「対象なき笑い」から出発して、笑いの生理と心理の中間に潜むかぎを捜そうとするのであるが、ベルグソンはすっかり生理を離れて純粋な心理だけの問・・・<寺田寅彦「笑い」青空文庫>
  10. ・・・しかし先生の告別の辞は十二日に立つと立たないとで変わるわけもなし、私のそれにつけ加えた蛇足な文句も、先生の去留によってその価値に狂いが出てくるはずもないのだから、われわれは書いたこと言ったことについて取り消しをだす必要は、もとより認めていな・・・<夏目漱石「戦争からきた行き違い」青空文庫>
  11. ・・・さっきの誓いも何もかもみんな取り消しだ。ギイギイギイ、フウ。ギイギイフウ。」と云いながら向うへ走って行ってしまいました。二人は落ちながらしっかりお互の肱をつかみました。この双子のお星様はどこ迄でも一緒に落ちようとしたのです。 二人のから・・・<宮沢賢治「双子の星」青空文庫>
  12. ・・・豚があんまり陰気な顔をしたものだから校長は急いで取り消しました。 それから農学校長と、豚とはしばらくしいんとしてにらみ合ったまま立っていた。ただ一言も云わないでじいっと立って居ったのだ。そのうちにとうとう校長は今日は証書はあきらめて、・・・<宮沢賢治「フランドン農学校の豚」青空文庫>
  13. ・・・竹内被告をのぞく十一名の全被告が意見開陳にあたって、強力に、公訴取消しを要求した。その理由は、この事件の取調べは、検事側の威嚇と独断と術策によってすすめられたもので、人権は蹂躙された。したがって被告としては各自にとって事実無根の公訴をみとめ・・・<宮本百合子「それに偽りがないならば」青空文庫>
  14. ・・・ 川口検事「不穏当と認められるならば取り消します。」 ところが、午後の法廷がひらかれると、この日も思いがけない事態が発生した。被告につづいて各主任弁護人の陳述に入ったとき、竹内被告の主任弁護人は誰かという問題が起ってきた。竹内被告が・・・<宮本百合子「それに偽りがないならば」青空文庫>
  15. ・・・彼女が自分の口から、来るな、会わない、と迄云い切ったのを、今更取り消し、折れることが、如何に、性格として不可能かは判って居る。其故、彼女を立て、此方から、被来って下さいと云うのに、何故からりと、朗らかに、その譲歩を受けられないのだろう。・・・<宮本百合子「二つの家を繋ぐ回想」青空文庫>
  16. ・・・と特記されているのであるが、秋に「父が死去したので、入学を取消し、家事の後始末をするため、荷物を背負って商いをやる。」一九〇八年。「家事整理の傍ら、受験勉強をなし、再び高等学校の入学試験に応ず。学科試験には優良の成績で及第したが、体格検査の・・・<宮本百合子「山本有三氏の境地」青空文庫>
  17. ・・・改正案では、子が婚姻をするのは年齢を問わず、父母、祖父母の同意がいることになり、未成年者がそれに反した婚姻をすると、父母、祖父母が取消してよいことになっている。元は男三十歳女二十五歳以後は婚姻は自主的にされたが、改正案によれば例え四十の男と・・・<宮本百合子「若い婦人のための書棚」青空文庫>