とり‐だ・す【取(り)出す】例文一覧 15件

  1. ・・・ これこれこう、こういう浴衣と葛籠の底から取出すと、まあ姉さんと進むる膝、灯とともに乗出す膝を、突合した上へ乗せ合って、その時はこういう風、仏におなりの前だから、優しいばかりか、目許口付、品があって気高うてと、お縫が謂えば、ちらちらと、・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  2. ・・・仲居さんは、あの人が財布の中のお金を取り出すのに、不自然なほど手間が掛るので、諦めてぺたりと坐りこんで、煙草すら吸いかねまい恰好で、だらしなく火鉢に手を掛け、じろじろ私の方を見るのだった。何という不作法な仲居さんだろうか、と私はぷいと横をむ・・・<織田作之助「天衣無縫」青空文庫>
  3. ・・・しかしどちらの手で掴んでいるのか、そしてそれをどう取出すのか分らなかった。 暗闇に点された火は、また彼の空虚な頭の中に点された火でもあった。彼は人心地を知った。 一本の燐寸の火が、焔が消えて炭火になってからでも、闇に対してどれだけの・・・<梶井基次郎「過古」青空文庫>
  4. ・・・画集の重たいのを取り出すのさえ常に増して力が要るな! と思った。しかし私は一冊ずつ抜き出してはみる、そして開けてはみるのだが、克明にはぐってゆく気持はさらに湧いて来ない。しかも呪われたことにはまた次の一冊を引き出して来る。それも同じことだ。・・・<梶井基次郎「檸檬」青空文庫>
  5. ・・・同じ火の芸術の人で陶工の愚斎は、自分の作品を窯から取出す、火のための出来損じがもとより出来る、それは一々取っては抛げ、取っては抛げ、大地へたたきつけて微塵にしたと聞いています。いい心持の話じゃありませんか。」「ムム、それで六兵衛一家の基・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  6. ・・・そこでまた思い切ってその翌朝、今度は団飯もたくさんに用意する、銭も少しばかりずつ何ぞの折々に叔父に貰ったのを溜めておいたのをひそかに取り出す、足ごしらえも厳重にする、すっかり仕度をしてしまって釜川を背後に、ずんずんずんずんと川上に上った。や・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  7. ・・・涼しい風の来そうなところを択んで、腰を掛けて、相川は洋服の落袋から巻煙草を取り出す。原は黒絽の羽織のまま腕まくりして、ハンケチで手の汗を拭いた。 黄に盛り上げた「アイスクリイム」、夏の果物、菓子等がそこへ持運ばれた。相川は巻煙草を燻しな・・・<島崎藤村「並木」青空文庫>
  8. ・・・あの母さんのように、困った夫の前へ、ありったけの金を取り出すような場合は別としても、もっと女の生活が経済的にも保障されていたなら、と今になって私も思い当たることがいろいろある。「娘のしたくは、こんなことでいいのか。」 私も、そこへ気・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  9. ・・・ Kは、三種類の外国煙草を、ハンドバッグから、つぎつぎ取り出す。 いつか、私は、こんな小説を書いたことがある。死のうと思った主人公が、いまわの際に、一本の、かおりの高い外国煙草を吸ってみた、そのほのかなよろこびのために、死ぬること、・・・<太宰治「秋風記」青空文庫>
  10. ・・・それでは一つ貰いましょうと云って、財布を取り出すために壷を一度棚に返そうとする時に、どうした拍子か誤ってその壷を取り落した。下には磁器の堅いものがゴタゴタ並んでいたので、元来脆いこの壷の口の処が少しばかり欠けてしまった。私は驚いて「どうもと・・・<寺田寅彦「ある日の経験」青空文庫>
  11. ・・・食糧箱の表面は一面に柔らかい凝霜でおおわれていて、見ただけではどれがなんだかわからないが、糧食係の男は造作もなく目的の箱を見いだして、表面の凝霜をかきのけてからふたを開き中味を取り出す。この廊下一面の凝霜の少なくも一部分は、隊員四十余名の口・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  12. ・・・それから Geld Suchen im Mehl というのは、洗面鉢へ盛ったメリケン粉の中へ顔を突っ込んで中へ隠してある銀貨を口で捜して取り出すのである。やっと捜し出してまっ白になった顔をあげて、口にたまった粉を吐き出しているところはたしか・・・<寺田寅彦「旅日記から(明治四十二年)」青空文庫>
  13. ・・・精妙ないいものの中から、そのいいところを取り出すにはやはりそれに応ずるだけの精微の仕掛けが必要であると思った。すぐれた頭の能力をもった人間に牛馬のする仕事を課していたような、済まない事をしていたというような気がするのであった。 鉄針と竹・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  14. ・・・ やがてわが部屋の戸帳を開きて、エレーンは壁に釣る長き衣を取り出す。燭にすかせば燃ゆる真紅の色なり。室にはびこる夜を呑んで、一枚の衣に真昼の日影を集めたる如く鮮かである。エレーンは衣の領を右手につるして、暫らくは眩ゆきものと眺めたるが、・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  15. ・・・十余年の昔、夫ピエールと二人で物理学校の中庭にある崩れかけた倉庫住居の四年間、ラジウムを取出すために瀝青ウラン鉱の山と取組合って屈しなかった彼女の不撓さ、さらに溯ってピエールに会う前後、パリの屋根裏部屋で火の気もなしに勉強していた女学生の熱・・・<宮本百合子「キュリー夫人」青空文庫>