とり‐ひき【取引】例文一覧 30件

  1. ・・・コオペラティヴと取引きが出来なくなったものだから」 僕等の乗った省線電車は幸いにも汽車ほどこんでいなかった。僕等は並んで腰をおろし、いろいろのことを話していた。T君はついこの春に巴里にある勤め先から東京へ帰ったばかりだった。従って僕等の・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  2. ・・・ 仁右衛門はこの取引をすましてから競馬場にやって来た。彼れは自分の馬で競走に加わるはずになっていたからだ。彼れは裸乗りの名人だった。 自分の番が来ると彼れは鞍も置かずに自分の馬に乗って出て行った。人々はその馬を見ると敬意を払うように・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  3. ・・・ところがその返事は意外にも、「あの小説は京都の日の出から直接に取引をしたものであれば、他に少しも関係はありません」と剣もほろろに挨拶をされて、悄然新聞社の門を出たことがある。 されば僕の作で世の中に出た一番最初のものは「冠弥左衛門」で、・・・<泉鏡花「おばけずきのいわれ少々と処女作」青空文庫>
  4. ・・・お魚はほんのつけたりで、おもに精進ものの取引をするんですよ。そういっては、十貫十ウの、いまの親仁に叱られるかも知れないけれど、皆が蓮根市場というくらいなんですわ。」「成程、大きに。――しかもその実、お前さんと……むかしの蓮池を見に、寄道・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  5. ・・・そこで、私は町の中部のかなり賑かな通へ出て、どこか人にも怪まれずに、蹲むか腰掛けかする所をと探すと、ちょうど取引会所が目についた。盛んに米や雑穀の相場が立っている。広い会所の中は揉合うばかりの群衆で、相場の呼声ごとに場内は色めきたつ。中には・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  6. ・・・今まで根強く嫌悪していたものが、ここでは日常茶飯事として簡単に取引きされていたのだ。そういうことへの嫌悪にあまりに憑かれていた自分があほらしくなった。豹一ははじめて女を知った。けれども、さすがに窓の下を走る車のヘッドライトが暗闇の天井を一瞬・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  7. ・・・第一、銀行の取引がない。だから、いちいち指定の市内の銀行まで取りに行かねばならぬのだが、家政婦は市内の東も西もわからぬ女である。といって十吉が起きて行く頃にはもう銀行は閉っている。ずるずるべったりに放って置いて、やがて市内で会合のある時など・・・<織田作之助「鬼」青空文庫>
  8. ・・・おきんの亭主はかつて北浜で羽振りが良くおきんを落籍して死んだ女房の後釜に据えた途端に没落したが、おきんは現在のヤトナ周旋屋、亭主は恥をしのんで北浜の取引所へ書記に雇われて、いわば夫婦共稼ぎで、亭主の没落はおきんのせいだなどと人に後指ささせぬ・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  9. ・・・「もっとも今も話したようなわけで、破産騒ぎまでしたあげくだから、取引店の方から帳簿まで監督されてる始末なんで、場合が場合だから、二階へ兄さんたちを置いてるとなると小面倒なことを言うかもしれませんが、しかしそれとてもたいしたことではないん・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  10. ・・・私は医科の小使というものが、解剖のあとの死体の首を土に埋めて置いて髑髏を作り、学生と秘密の取引をするということを聞いていたので、非常に嫌な気になった。何もそんな奴に頼まなくたっていいじゃないか。そして女というものの、そんなことにかけての、無・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  11. ・・・これが人生の神秘というもので、そういう感じがないと常識的、取引的、身の振り方をつけるための品定めのようになって恋愛のたましいがぬけるからだ。こんなふうにいうとむずかしい態度になるようだが、そこが造化のたくみで、純な娘の本能の中に、自分を保護・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  12. ・・・問屋と取引のある或る宿屋では内地米三十俵も積重ねる。それを売って呉れぬかというと、これはお客に出すために買ったのだが、相場がだいぶ違うのだという。 じゃ、「闇」で買ったのかときく。いや「闇」じゃないんだがという。──どうだかあやしいもの・・・<黒島伝治「外米と農民」青空文庫>
  13. ・・・日本国は堺の商人、商人の取引、二言は無いと申したナ。木沢殿所持の宝物は木沢殿から頂戴して遣わす。宜いではござらぬか、木沢殿。失礼ながら世に宝物など申すは、いずれ詰らぬ、下らぬもの。心よく呉れて遣って下されい。我等同志がためになり申す。……黙・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  14. ・・・お三輪が小竹の隠居と言われる時分には、旦那は疾くにこの世にいない人で、店も守る一方であったが、それでも商法はかなり手広くやり、先代が始めた上海の商人との取引は新七の代までずっと続いていた。 お三輪は濃い都会の空気の中に、事もなく暮してい・・・<島崎藤村「食堂」青空文庫>
  15. ・・・お爺さんは一代のうちに蔵をいくつも建てたような手堅い商人であったが、総領の子息にはいちばん重きを置いたと見えて、長いことかかって自分で経営した網問屋から、店の品物から、取引先の得意までつけてそっくり子息にくれた。ところが子息は、お爺さんから・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  16. ・・・彼はこの女と、ほんの二、三度、闇の物資の取引きをした事があるだけだが、しかし、この女の鴉声と、それから、おどろくべき怪力に依って、この女を記憶している。やせた女ではあるが、十貫は楽に背負う。さかなくさくて、ドロドロのものを着て、モンペにゴム・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  17. ・・・ウィイン市内で金貸業をしているものは多いが、一人としてポルジイと取引をしたことのないものはない。いざ金がいるとなると、ポルジイはどんな危険な相談にでも乗る。お負にそれを洒々落々たる態度で遣って除ける。ある時ポルジイはプリュウンという果の干し・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  18. ・・・ 主人公の老富豪が取引所の柱の陰に立って乾坤一擲の大賭博を進行させている最中に、従僕相手に五十銭玉一つのかけをするくだりがある。そのかけにも老主人が勝ってそうしてすまして相手の銭をさらって、さて悠々と強敵と手詰めの談判に出かけるところに・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  19. ・・・しかし、この機構の背後には色々の人間がさまざまの用談をし取引を進行させており、あらゆる思惟と感情の流れが電流の複雑な交錯となってこの交換台に集散しているのである。 現象を記載するだけが科学の仕事だというスローガンがしばしば勘違いに解釈さ・・・<寺田寅彦「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  20. ・・・現に科学者哲学者などは直接世間と取引しては食って行けないからたいていは政府の保護の下に大学教授とか何とかいう役になってやっと露命をつないでいる。芸術家でも時に容れられず世から顧みられないで自然本位を押し通す人はずいぶん惨澹たる境遇に沈淪して・・・<夏目漱石「道楽と職業」青空文庫>
  21. ・・・ 父兄はもちろん、取引先きも得意先きも、十露盤ばかりのその相手に向い、君は旧弊の十露盤、僕は当世の筆算などと、石筆をもって横文字を記すとも、旧弊の連中、なかなかもって降参の色なくして、筆算はかえって無算視せらるるの勢なり。いわんや、その・・・<福沢諭吉「小学教育の事」青空文庫>
  22. ・・・夫は取引の旅行中にその女どもに逢っていますので、イソダンでは誰も知らずにいるのでございます。 そこでわたくしはどういたしたらよろしいのでございましょう。それについて誰に相談いたしましょう。決してこの土地の人には打明けたくございません。・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  23. ・・・ まともに相剋に立ち入っては一生を賭しても解決はむずかしいのだからと、今日の文化がもっている凹みの一つである女らしさの観念をこちらから把んで、そこで女らしさの取引きを行って処世的にのしてゆくという態度も今日の女の生きる打算のなかには目立・・・<宮本百合子「新しい船出」青空文庫>
  24. ・・・ 彼方では一般が商取引風になっているように、やはり文筆を執りつつあるものの間にも、それがあります。作品として出来上がった結果のよしあしは別として、日本などとは丁度反対で、名人気質の人がどうも少ないようです。 この私の見方は丁度、三人・・・<宮本百合子「アメリカ文士気質」青空文庫>
  25. ・・・その一冊にさらに五パーセントの取引税がかかる。子供たちに買ってやる絵本にもその五パーセントはついて来る。国会でも問題になったこのたちのわるい大衆課税は、政府としてやむをえないこととして押しきった。理由は天文学的数字の予算をまかなえないからで・・・<宮本百合子「偽りのない文化を」青空文庫>
  26. ・・・収穫物の取引は集団農場と国営の生産組合とが直接やるのであるから、だまされる心配をする必要がない。 その他に便利は沢山ある。 集団農場には托児所、共同食堂、クラブなどはつきものとなっている。 私は、来ていた人に、自分がソヴェト同盟・・・<宮本百合子「今にわれらも」青空文庫>
  27. ・・・ 寧ろ、現代の資本主義が強く文化分野を支配するようになってから、その取引場としてパリ、ロンドン、ニューヨークという風な首都が、文化・芸術の成果を集中しはじめた。文化・芸術の結実は、そのものとして人民に愛され、貴ばれる本質から変化させられ・・・<宮本百合子「木の芽だち」青空文庫>
  28. ・・・ペルシャの商人までそこに出て来て、何百万ルーブリという取引がある。ニージュニ・ノヴゴロド市の埠頭、嘗てゴーリキーが人足をしたことのある埠頭から、ヴォルガ航行の汽船が出る。母なるヴォルガ河、船唄で世界に知られているこの大河の航行は、実に心地の・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」青空文庫>
  29. ・・・はでなサロン向の画商との所謂大家的取引とは何と違うでしょう。ゴッホは自分の弟を最も信頼する画商として持っていました。ルノアールは水ぽい絵描きですが、セザンヌに対しては厚い心を持っていた様です。この伝記とチャンポンに小説を読みましょう。実に小・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  30. ・・・婿は機屋と取引上の関係のある男で、それをことわっては、機屋で困るような事情があるらしい。佐野さんは、初めはお蝶をなだめ賺すようにしてあしらっている様子であったが、段々深くお蝶に同情して来て、後にはお蝶と一しょになって、機屋一家に対してどうし・・・<森鴎外「心中」青空文庫>