ない‐ぶ【内部】例文一覧 30件

  1. ・・・ 大寺院の内部もまた広大です。そのコリント風の円柱の立った中には参詣人が何人も歩いていました。しかしそれらは僕らのように非常に小さく見えたものです。そのうちに僕らは腰の曲がった一匹の河童に出合いました。するとラップはこの河童にちょっと頭・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  2. ・・・砂の上に建てられた旧道徳を壊って、巌の上に新道徳を築かんとした内部の要求の力である。わたしは以前彼と共に、善とか美とか云う議論をした時、こう云った彼の風貌を未だにはっきりと覚えている。「そりゃ君、善は美よりも重大だね。僕には何と云っても重大・・・<芥川竜之介「「菊池寛全集」の序」青空文庫>
  3. ・・・寺院の戸が開いた。寺院の内部は闇で、その闇は戸の外に溢れ出るかと思うほど濃かった。その闇の中から一人の男が現われた。十歳の童女から、いつの間にか、十八歳の今のクララになって、年に相当した長い髪を編下げにして寝衣を着たクララは、恐怖の予覚を持・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  4. ・・・しかしながら自分の内部的要求は私をして違った道を採らしている」と。これでここに必要な二人の会話のだいたいはほぼ尽きているのだが、その後また河上氏に対面した時、氏は笑いながら「ある人は私が炬燵にあたりながら物をいっていると評するそうだが、全く・・・<有島武郎「宣言一つ」青空文庫>
  5. ・・・理窟からでなく内部から滅亡する。しかしそれはまだまだ早く滅亡すれば可いと思うがまだまだだ。日本はまだ三分の一だ。B いのちを愛するってのは可いね。君は君のいのちを愛して歌を作り、おれはおれのいのちを愛してうまい物を食ってあるく。似たね。・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  6. ・・・そうしてその論争によって、純粋自然主義がその最初から限定されている劃一線の態度を正確に決定し、その理論上の最後を告げて、ここにこの結合はまったく内部において断絶してしまっているのである。     四 かくて今や我々には、自己・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  7. ・・・彼の徳川時代の初期に於て、戦乱漸く跡を絶ち、武人一斉に太平に酔えるの時に当り、彼等が割合に内部の腐敗を伝えなかったのは、思うに将軍家を始めとして大名小名は勿論苟も相当の身分あるもの挙げて、茶事に遊ぶの風を奨励されたのが、大なる原因をなし・・・<伊藤左千夫「茶の湯の手帳」青空文庫>
  8.  デパートの内部は、いつも春のようでした。そこには、いろいろの香りがあり、いい音色がきかれ、そして、らんの花など咲いていたからです。 いつも快活で、そして、また独りぼっちに自分を感じた年子は、しばらく、柔らかな腰掛けにからだを投げて・・・<小川未明「青い星の国へ」青空文庫>
  9. ・・・私の内部のすすや、あのくもの巣などは、きれいにはらわれたのです。それからというものは、なんという私の生活の変わり方であったでしょうか。 毎日、毎日、私は、いやというほど、石炭を腹に入れます。もはや寒い、ひもじい思いなんかというものは、夢・・・<小川未明「煙突と柳」青空文庫>
  10. ・・・続いて、某銀行内部の中傷記事が原因して罰金三十円、この後もそんなことが屡あって、結局お前は元も子もなくしてしまい無論廃刊した。 お前は随分苦り切って、そんな羽目になった原因のおれの記事をぶつぶつ恨みおかしいくらいだったから、思わずにやに・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  11. ・・・ 焼けた大阪劇場も内部を修理して、もう元通りの映画とレヴュが掛っていた。常盤座ももう焼けた小屋とは見えず、元の姿にかえって吉本の興行が掛っていた。 その常盤座の前まで、正月の千日前らしい雑閙に押されて来ると、またもや呼び停められた。・・・<織田作之助「神経」青空文庫>
  12. ・・・盛りあがった気味悪い肉が内部から覗いていた。またある痕は、細長く深く切れ込み、古い本が紙魚に食い貫かれたあとのようになっている。 変な感じで、足を見ているうちにも青く脹れてゆく。痛くもなんともなかった。腫物は紅い、サボテンの花のようであ・・・<梶井基次郎「ある心の風景」青空文庫>
  13. ・・・雨後の空気のなかに窓を明け放ち、乗客も程よい電車の内部は、暗い路を通って来た私達の前を、あたかも幸福そのものが運ばれて其処にあるのだと思わせるような光で照されていました。乗っている女の人もただ往来からの一瞥で直ちに美しい人達のように思えまし・・・<梶井基次郎「橡の花」青空文庫>
  14. ・・・ 何時自分が東京を去ったか、何処を指して出たか、何人も知らない、母にも手紙一つ出さず、建前が済んで内部の雑作も半ば出来上った新築校舎にすら一瞥もくれないで夜窃かに迷い出たのである。 大阪に、岡山に、広島に、西へ西へと流れて遂にこの島・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  15. ・・・読書しないでいると内部が空虚になっていく。読書しない青年には有望な者はいない。天才はたとい課業の読書は几帳面でないまでも、図書館には籠って勉強するものである。 読書にとらわれる、とらわれないというのはそれ以上の高い立場からの要請であって・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  16. ・・・ と、彼は、それと同じことを、鮮人部落の地理や、家の格好や、その内部の構造や、美しい娘のことなどを、執拗に憲兵隊で曹長に訊ねられたことを思い出した。「女というものは恐ろしいもんだよ。そいつはいくらでも金を吸い取るからな。」 松本・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  17. ・・・片口は無いと見えて山形に五の字の描かれた一升徳利は火鉢の横に侍坐せしめられ、駕籠屋の腕と云っては時代違いの見立となれど、文身の様に雲竜などの模様がつぶつぶで記された型絵の燗徳利は女の左の手に、いずれ内部は磁器ぐすりのかかっていようという薄鍋・・・<幸田露伴「貧乏」青空文庫>
  18. ・・・彼女の内部にはこんな独言を言う二人の人が居た。 おげんはもう年をとって、心細かった。彼女は嫁いで行った小山の家の祖母さんの死を見送り、旦那と自分の間に出来た小山の相続人でお新から言えば唯一人の兄にあたる実子の死を見送り、二年前には旦那の・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  19. ・・・われはこの内部を入学式のとき、ただいちど見た。寺院の如き印象を受けた。いまわれは、この講堂の塔の電気時計を振り仰ぐ。試験には、まだ十五分の間があった。探偵小説家の父親の銅像に、いつくしみの瞳をそそぎつつ、右手のだらだら坂を下り、庭園に出たの・・・<太宰治「逆行」青空文庫>
  20. ・・・どうしても自分の心の内部に生活している人の眼である。」「彼が壇上に立つと聴衆はもうすぐに彼の力を感ずる。ドイツ語がわかる分らぬは問題でない。ともかくも力強く人に迫るある物を感ずる。」「重大な事柄を話そうとする人にふさわしいように、ゆ・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  21. ・・・辰之助は庭先の方に、道太と向かいあって坐りながら言ったが、古びていたけれど、まだ内部はどうもなっていなかった。以前廂なぞ傾いでいたこともあったけれど、いくらか手入れもしたらしかった。「古びのついたところがいいね」「もうだめや。少し金・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  22. ・・・印刷機械の錆付きそうな会社の内部に在って、利平達は、職長仲間の団体を造って、この争議に最初の間は「公平なる中立」の態度を持すと声明していた。尤もそれを信用する争議団員は一人もありはしなかったが……しかし、モウ今日では、利平達は、社長の唯一の・・・<徳永直「眼」青空文庫>
  23. ・・・ われわれ過渡期の芸術家が一度びこの霊廟の内部に進入って感ずるのは、玉垣の外なる明治時代の乱雑と玉垣の内なる秩序の世界の相違である。先ず案内の僧侶に導かれるまま、手摺れた古い漆塗りの廻廊を過ぎ、階段を後にして拝殿の堅い畳の上に坐って、正・・・<永井荷風「霊廟」青空文庫>
  24. ・・・元々開化が甲の波から乙の波へ移るのはすでに甲は飽いていたたまれないから内部欲求の必要上ずるりと新らしい一波を開展するので甲の波の好所も悪所も酸いも甘いも甞め尽した上にようやく一生面を開いたと云って宜しい。したがって従来経験し尽した甲の波には・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  25. ・・・いようなスッキリした服を着て、沢山歩いたり、どうしても、どんなに私が自惚れて見ても、勇気を振い起して見ても、寄りつける訳のものじゃない処の日本の娘さんたちの、見事な――一口に云えば、ショウウインドウの内部のような散歩道を、私は一緒になって、・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  26. ・・・また、いかなる盗賊にても博徒にても、外に対しては乱暴無状なりといえども、その内部に入りて仲間の有様を見れば、朋輩の間、自から約束あり、規則あり。すなわちその約束規則は自家の安全をはかるものより外ならず。しかのみならず、この法外の輩が、たがい・・・<福沢諭吉「教育の目的」青空文庫>
  27. ・・・砲弾にて破損せる古き穀倉の内部、辛くも全滅を免かれしバナナン軍団、マルトン原の臨時幕営。右手より曹長先頭にて兵士一、二、三、四、五、登場、一列四壁に沿いて行進。曹長「一時半なのにどうしたのだろう。バナナン大将・・・<宮沢賢治「饑餓陣営」青空文庫>
  28. ・・・信州の宿屋の一こま、産婆のいかがわしい生活の一こま、各部は相当のところまで深くつかまれているけれども、場面から場面への移りを、内部からずーと押し動かしてゆく流れの力と幅とが足りないため、移ったときの或るぎこちなさが印象されるのである。 ・・・<宮本百合子「「愛怨峡」における映画的表現の問題」青空文庫>
  29. ・・・侵略された内部の皮膚は乾燥した白い細粉を全面に漲らせ、荒された茫々たる沙漠のような色の中で、僅かに貧しい細毛が所どころ昔の激烈な争いを物語りながら枯れかかって生えていた。だが、その版図の前線一円に渡っては数千万の田虫の列が紫色の塹壕を築いて・・・<横光利一「ナポレオンと田虫」青空文庫>
  30. ・・・美術院の展覧する日本画が明らかに示しているように、この革新は外部の革新であって内部のそれではないのである。 美術院展覧会を一覧してまず感ずることは、そこに技巧があって画家の内部生命がないことである。東洋画の伝統は千年の古きより一年前の新・・・<和辻哲郎「院展日本画所感」青空文庫>