なが・い【長い/永い】例文一覧 54件

  1. ・・・もう一人はやや黄ばみかけた、長い口髭をはやしている。 そのうちに二十前後の支那人は帳簿へペンを走らせながら、目も挙げずに彼へ話しかけた。「アアル・ユウ・ミスタア・ヘンリイ・バレット・アアント・ユウ?」 半三郎はびっくりした。が、・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  2. ・・・彼はさきほどから長い間ぼんやりとそのさまを眺めていたのだ。「もう着くぞ」 父はすぐそばでこう言った。銀行から歳暮によこす皮表紙の懐中手帳に、細手の鉛筆に舌の先の湿りをくれては、丹念に何か書きこんでいた。スコッチの旅行服の襟が首から離・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3.  この犬は名を附けて人に呼ばれたことはない。永い冬の間、何処にどうして居るか、何を食べて居るか、誰も知らぬ。暖かそうな小屋に近づけば、其処に飼われて居る犬が、これも同じように饑渇に困められては居ながら、その家の飼犬だというの・・・<著:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ 訳:森鴎外「犬」青空文庫>
  4. ・・・B 気長い事を言うなあ。君は元来性急な男だったがなあ。A あまり性急だったお蔭で気長になったのだ。B 悟ったね。A 絶望したのだ。B しかしとにかく今の我々の言葉が五とか七とかいう調子を失ってるのは事実じゃないか。A・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  5. ・・・お濠ン許で、長い尻尾で、あの、目が光って、私、私を睨んで、恐かったの。」 と、くるりと向いて、ひったり母親のその柔かな胸に額を埋めた。 また顔を見合わせたが、今はその色も変らなかった。「おお、そうかい、夢なんですよ。」「恐か・・・<泉鏡花「女客」青空文庫>
  6. ・・・三角形に畝をなした、十六角豆の手も高く、長い長いさやが千筋に垂れさがっている。家におった昔、何かにつけて遊んだ千菜畑は、雑然として昔ながらの夏のさまで、何ともいいようなくなつかしい。 堀形をした細長い田に、打ち渡した丸木橋を、車夫が子ど・・・<伊藤左千夫「紅黄録」青空文庫>
  7. ・・・だが、叔母に似た性質で、――客の前へ出ては内気で、無愛嬌だが、――とんまな両親のしていることがもどかしくッて、もどかしくッてたまらないという風に、自分が用のない時は、火鉢の前に坐って、目を離さず、その長い頤で両親を使いまわしている。前年など・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  8. ・・・ が、この円転滑脱は天禀でもあったが、長い歳月に段々と練上げたので、ことさらに他人の機嫌を取るためではなかった。その上に余り如才がなさ過ぎて、とかく一人で取持って切廻し過ぎるのでかえって人をテレさせて、「椿岳さんが来ると座が白ける」と度・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  9. ・・・それで彼女は長い手紙を書きます。実に読むのに骨が折れる。しかしながら私はいつでもそれを見て喜びます。その女は信者でも何でもない。毎月三日月様になりますと私のところへ参って「ドウゾ旦那さまお銭を六厘」という。「何に使うか」というと、黙っている・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  10. ・・・どうしたらいいだろうかと、それからというものは、毎日、赤い、長いそでを顔にあてては、泣いて悲しまれたのであります。 皇子とお姫さまの、約束の結婚の日が、いよいよ近づいてまいりました。お姫さまは、どうしたらいいだろうかと、お供の人々におた・・・<小川未明「赤い姫と黒い皇子」青空文庫>
  11. ・・・家といったってどうせ荒家で、二間かそこいらの薄暗い中に、お父もお母も小穢え恰好して燻ってたに違いねえんだが……でも秋から先、ちょうど今ごろのような夜の永い晩だ、焼栗でも剥きながら、罪のねえ笑話をして夜を深かしたものだっけ、ね。あのころの事を・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  12. ・・・ 爺さんはそう言いながら、側に置いてある箱から長い綱の大きな玉になったのを取り出しました。それから、その玉をほどくと、綱の一つの端を持って、それを勢よく空へ投げ上げました。 すると、投げ上げた網の上の方で鉤か何かに引っかかりでもした・・・<小山内薫「梨の実」青空文庫>
  13. ・・・太長い足であった。 寝ることになったが、その前に雨戸をあけねばならぬ、と思った。風通しの良い部屋とはどこをもってそう言うのか、四方閉め切ったその部屋のどこにも風の通う隙間はなく、湿っぽい空気が重く澱んでいた。私は大気療法をしろと言った医・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  14. ・・・スタンブールから此ルシチウクまで長い辛い行軍をして来て、我軍の攻撃に遭って防戦したのであろうが、味方は名に負う猪武者、英吉利仕込のパテント付のピーボヂーにもマルチニーにも怯ともせず、前へ前へと進むから、始て怖気付いて遁げようとするところを、・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  15. ・・・ 横井は彼の訪ねて来た腹の底を視透かしたかのように、むずかしい顔をして、その角張った広い顔から外へと跳ねた長い鬚をぐい/\と引張って、飛び出た大きな眼を彼の額に据えた。彼は話題を他へ持って行くほかなかった。「でも近頃は節季近くと違っ・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  16. ・・・その男はそのときどんなことを思ったかというと、これはいかにも古都ウィーンだ、そしていま自分は長い旅の末にやっとその古い都へやって来たのだ――そういう気持がしみじみと湧いたというのです」「そして?」「そして静かに窓をしめてまた自分のベ・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  17. ・・・ 川柳は日の光にその長い青葉をきらめかして、風のそよぐごとに黒い影と入り乱れている。その冷ややかな陰の水際に一人の丸く肥ッた少年が釣りを垂れて深い清い淵の水面を余念なく見ている、その少年を少し隔れて柳の株に腰かけて、一人の旅人、零落と疲・・・<国木田独歩「河霧」青空文庫>
  18. ・・・というのが夫婦愛で、これは長い年月を経済生活、社会生活の線にそうて、助け合ってきた歴史から生まれたものである。 そして不思議なことには、この人は子どもも可愛がるが、生活欲望も非常に強い。妻らしく、母らしい婦人が必ずしも生活欲望が弱いとし・・・<倉田百三「愛の問題(夫婦愛)」青空文庫>
  19. ・・・ 下顎骨の長い、獰猛に見える伍長が突っ立ったまゝ云った。 彼は、何故、そっちへ行かねばならないか、訊ねかえそうとした。しかし、うわ手な、罪人を扱うようなものゝ云い方は、変に彼を圧迫した。彼は、ポケットの街の女から貰った眼の大きい写真・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  20. ・・・「そんなものだったかネ、何だか大変長い間見えなかったように思ったよ。そして今日はまた定りのお酒買いかネ。」「ああそうさ、厭になっちまうよ。五六日は身体が悪いって癇癪ばかり起してネ、おいらを打ったり擲いたりした代りにゃあ酒買いのお使い・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  21. ・・・その生涯が満足な幸福な生涯ならば、むろん、長いほどよいのである。かつ大きな人格の光を千載にはなち、偉大なる事業の沢を万人にこうむらすにいたるには、長年月を要することが多いのは、いうまでもない。 伊能忠敬は、五十歳から当時三十余歳の高橋作・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  22. ・・・――お安は長い間その人から色々と話をきいていた。 母親はワザ/\東京まで出てきて、到々自分の息子に会わずに帰って行った。「お安や、健はどうしてた……?」 汽車の中で、母親は恐ろしいものに触れるようにビクビクしながらきいた。「・・・<小林多喜二「争われない事実」青空文庫>
  23. ・・・薫は、春咲く蘭に対して、秋蘭と呼んで見てもいいもので、かれが長い冬季の霜雪に耐えても蕾を用意するだけの力をもった北のものなら、これは激しい夏の暑さを凌いで花をつける南のものだ。緑も添い、花も白く咲き出る頃は、いかにも清い秋草の感じが深い。こ・・・<島崎藤村「秋草」青空文庫>
  24. ・・・男等の一人で、足の長い、髯の褐色なのが、重くろしい靴を上げて材木をこづいた。鴉のやはり動かずに止まっていた材木である。鴉は羽ばたきもせず、頭も上げず、凝然たる姿勢のままで、飢渇で力の抜けた体を水に落した。そして水の上でくるくると輪をかいて流・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  25. ・・・ウイリイはこれから長い間、海や岡をいくのにちょうどいい友だちが出来たと思って喜びました。 船は追手の風で浪の上をすらすらと走って、間もなく大きな大海の真中へ出ました。 そうすると、さっきのむく犬が、用意してある百樽のうじ虫をみんな魚・・・<鈴木三重吉「黄金鳥」青空文庫>
  26. ・・・そして長い間その事を忘れていたのだわ。それに気が付いたのは、実はたった今よ。(劇なぜ黙っているの。さっきにからわたしにばかり饒舌らしていて、一言も言ってくれないのね。そんなにして坐っていて、わたしの顔を見ているその目付で、わ・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:森鴎外「一人舞台」青空文庫>
  27. ・・・くずおれておかあさんはひざをつき、子どもをねかしてその上を守るように自分の頭を垂れますと、長い毛が黒いベールのように垂れ下がりました。 しかして両手をさし出してだまったなりでいのりました。子どもの額からは苦悶の汗が血のしたたりのように土・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎「真夏の夢」青空文庫>
  28. ・・・ 例え、スバーは物こそ云えないでも、其に代る、睫毛の長い、大きな黒い二つの眼は持っていました。又、彼女の唇は、心の中に湧いて来る種々な思いに応じて、物は云わないでも、風が吹けば震える木の葉のように震えました。 私共が言葉で自分達の考・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  29. ・・・ と多少、自信に似たものを得て、まえから腹案していた長い小説に取りかかった。 昨年、九月、甲州の御坂峠頂上の天下茶屋という茶店の二階を借りて、そこで少しずつ、その仕事をすすめて、どうやら百枚ちかくなって、読みかえしてみても、そんなに悪い・・・<太宰治「I can speak」青空文庫>
  30. ・・・丁度美しい小娘がジュポンの裾を撮んで、ぬかるみを跨ごうとしているのを見附けた竜騎兵中尉は、左の手にを握っていた軍刀を高く持ち上げて、極めて熱心にその娘の足附きを見ていたが、跨いでしまったのを見届けて、長い脚を大股に踏んで、その場を立ち去った・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>