なか‐ごろ【中頃】例文一覧 24件

  1. ・・・ いや、余事を申上げまして恐入りますが、唯今私が不束に演じまするお話の中頃に、山中孤家の怪しい婦人が、ちちんぷいぷい御代の御宝と唱えて蝙蝠の印を結ぶ処がありますから、ちょっと申上げておくのであります。 さてこれは小宮山良介という学生・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  2. ・・・丁度秋の中頃の寒くも暑くもない快い晩で、余り景色が好いので二人は我知らず暫らく佇立って四辺を眺めていた。二葉亭は忽ち底力のある声で「明月や……」と叫って、較や暫らく考えた後、「……跡が出ない。が、爰で名句が浮んで来るようでは文人の縁が切れな・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  3. ・・・今普請してる最中でっけど、中頃には開店させて貰いま」 そして、開店の日はぜひ招待したいから、住所を知らせてくれと言うのである。住所を控えると、「――ぜひ来とくれやっしゃ。あんさんは第一番に来て貰わんことには……」 雑誌のことには・・・<織田作之助「神経」青空文庫>
  4. ・・・と、中頃は余り言いすごしたと思ったので、末にはその意を濁してしまった。言ったとて今更どうなることでも無いので、図に乗って少し饒舌り過ぎたと思ったのは疑いも無い。 中村は少し凹まされたかども有るが、この人は、「肉の多きや刃その骨に及ば・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  5. ・・・その代りになるべき新しい利器を求めている彼の手に触れたのは、前世紀の中頃に数学者リーマンが、そのような応用とは何の関係もなしに純粋な数学上の理論的の仕事として残しておいた遺物であった。これを錬え直して造った新しい鋭利なメスで、数千年来人間の・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  6. ・・・よく訳のわかった巧者な実験家の教師が得られるならば中頃の学級からやり始めていい。そうしてもラテン文法の練習などではめったに出逢わないような印象と理解を期待する事が出来るだろう。」「ついでながら近頃やっと試験的に学校で行われ出した教授の手・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  7. ・・・ チェイン・ローは河岸端の往来を南に折れる小路でカーライルの家はその右側の中頃に在る。番地は二十四番地だ。 毎日のように川を隔てて霧の中にチェルシーを眺めた余はある朝ついに橋を渡ってその有名なる庵りを叩いた。 庵りというと物寂び・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  8. ・・・最後の巻、即ち十七世紀の中頃から維新の変に至るまでの沿革は、今なお述作中にかかる未成品に過ぎなかった。その上去年の第一巻とこれから出る第三巻目は、先生一個の企てでなく、日本の亜細亜協会が引き受けて刊行するのだという事が分った。従って先生の読・・・<夏目漱石「マードック先生の『日本歴史』」青空文庫>
  9. ・・・ 去年の中頃に、お節が長病いをした時、貸りてまだ返さずにある十円ばかりの金の事を云い出されては、口惜しいけれど、それでもとは云われなかった。 自分が、それを返す余地がないと知って、余計に見込んで苦しめる様な事をするお金も堪らなく憎ら・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  10. ・・・けれども、だんだん子供が帰って来、入り乱れる足音、馳ける廊下の轟きが増し、長い休の中頃になろうものなら、何と云おうか、学校中はまるで悦ぶ子供で満ち溢れてしまう。 四十分か五十分の日中のお休みは、何といいものであったろう! 鐘が鳴るのに、・・・<宮本百合子「思い出すかずかず」青空文庫>
  11. ・・・ 歩く時いつでも右の袂の中頃をもって居るのが癖だと云う事を見つけて仙二はわけもなく可笑しかった。 その娘は村の人誰からも快くあつかわれた、そしてだれでもが、 お嬢さんとか、お嬢さま、とか呼んで居た。 仙二は朝早く起きるとすぐ・・・<宮本百合子「グースベリーの熟れる頃」青空文庫>
  12. ・・・ 此処も夏の中頃までは手入も行き届いて居たし、中のものも、今ほどめっぽう大きくなって居なかったので、青々と調って気持がよかったが、もう近頃は何とも彼んとも云われないほどゴチャゴチャになって居る。 背がのびる草だからと云って後の方に植・・・<宮本百合子「後庭」青空文庫>
  13. ・・・あんまり早く達治さんが御婚礼してしまうと困るが、来年の中頃以後であったら何とかなりそうで楽しみです。家のプラン想像なさることが出来るでしょう? 二階は達治さん達。今の下の部屋が隆治さん。その奥へお二人というわけなのです。ずっと戸外が見え・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  14. ・・・を書いたのち、一九三〇年の中頃から、私は、机の上において、何となしその頁をひらいて数行をよむことで創作への熱心を刺戟されるような文学を見出せなくなって、途方にくれた。けれどもこの経験は、日本の社会の現実認識の方法と文学評価が、全体として志賀・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  15. ・・・ 大正の中頃からのちの激しい時代のうつりかわりと、その間に転変した女性一般の生活の大きな変化は、千葉先生と私との間をもいつとはなし吹きわけることとなった。どちらもそれぞれに結婚もした。先生はそれより前にどういう事情でか学校をやめられた。・・・<宮本百合子「時代と人々」青空文庫>
  16. ・・・最初の部分は、小石川の動力の響が近隣の小工場から響いて来る二階で。中頃の部分は、鎌倉の明月谷の夏。我々は胡瓜と豆腐ばかり食べて、夜になると仕事を始めた。彼女はそっちの部屋でチェホフを。私はこっちの部屋で自分の小説を。蛾が、深夜に向って開け放・・・<宮本百合子「シナーニ書店のベンチ」青空文庫>
  17. ・・・ 大正の中頃から昭和へかけての時分、母はお孝さんに誘われて沢田正二郎の芝居を見物するようになった。 比較的芝居は観る方で、演芸画報をかかさずとっていたが、有名な沢正を観たのは、お孝さんのすすめによってであった。帰って来て、「あれ・・・<宮本百合子「白藤」青空文庫>
  18. ・・・ それがね何でも夏の中頃だと思ってましたけど一晩の中に貸家の札がおきまりにはすにはってあったんで大変な噂になりましたっけが酒屋の小僧がねこんな事を云ってましたよ。「あの『じじい』はあの年をつかまつって居て銘酒屋の女房と馳け落・・・<宮本百合子「千世子(三)」青空文庫>
  19. ・・・ 一日中書斎に座って、呆んやり立木の姿や有難い本の列などを眺めながら、周囲の沈んだ静けさと、物懶さに連れて、いつとはなし今自分の座って居る丁度此の処に彼の体の真中頃を置いて死に掛った叔父の事を思い出して居た。 私が七つの時に叔父は死・・・<宮本百合子「追憶」青空文庫>
  20. ・・・ 或る大変涼しい晩――もう秋の中頃がすぎて、フランネル一枚では風を引きそうな、星のこぼれそうな夜であった。 八月に生れた赤坊を一番奥の部屋でねかしつけて居ると、どっかで、多勢の男の声が崩れる様に笑うのが耳のはたでやかましくやかま・・・<宮本百合子「二十三番地」青空文庫>
  21. ・・・一体に秋の中頃の黄色っぽい日差しで四方には何の声もしない。幕が上ると中央から少し下手によった所に置いてある腰掛にたった一人第一の女が何をするともなしにつたの赤く光るのを見て居る。かなり富んだらしい顔つきをして大変に目の大きい女。・・・<宮本百合子「胚胎(二幕四場)」青空文庫>
  22. ・・・「だってまだ七月の今日十六日ですもん九月の中頃でなくっちゃあ帰りゃあしないんだもの……。若しあんまり二人で別れんのがつらかったら京都の娘になっちまいましょう、ネ、そうすりゃあいいんだもの下らない事考えっこなし……」「ほんまに……考えん方・・・<宮本百合子「ひな勇はん」青空文庫>
  23. ・・・ 空の中頃に二かたまり、大きく雲が現れた。その雲に西日が遮られ、屈曲した強い光線が海面に落ちた。先刻から吹き始めた風を孕んで、沖にいた帆船が或る距離を保ちながら帰って来た。丁度その塊雲の下と思われる地点へさしかかると、急に船は暗い紅色の・・・<宮本百合子「帆」青空文庫>
  24. ・・・ 秋の中頃旅を終えて男が帰って来た。その日も彼の女は青白く光る小石に優しいつぶやきをなげながら男には只「お帰んなさい、面白かったでしょう」と云ったばかりであった。そして原稿紙の一っぱいちらばって居る卓子に頬杖をつきながら小声にふとからか・・・<宮本百合子「芽生」青空文庫>