ながの【長野】例文一覧 17件

  1. ・・・私たち二人は、その晩、長野の町の一大構の旅館の奥の、母屋から板廊下を遠く隔てた離座敷らしい十畳の広間に泊った。 はじめ、停車場から俥を二台で乗着けた時、帳場の若いものが、「いらっしゃい、どうぞこちらへ。」 で、上靴を穿かせて、つ・・・<泉鏡花「革鞄の怪」青空文庫>
  2. ・・・あの時、長野の月の橋で、――一生、もう、決して他人ではないと誓ったじゃないか。――此家へ来てくれた以上は、門も、屋根も、押入も、畳も、その火鉢も、皆、姉さんのものじゃないか。白糸 おや、姉さんとなりましたよ。誰かに教ったね。だあれかも、・・・<泉鏡花「錦染滝白糸」青空文庫>
  3. ・・・飯綱は元来山の名で、信州の北部、長野の北方、戸隠山につづいている相当の高山である。この山には古代の微生物の残骸が土のようになって、戸隠山へ寄った方に存する処がある。天狗の麦飯だの、餓鬼の麦飯だのといって、この山のみではない諸処にある。浅間山・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  4. ・・・それで自分は小高い山の上にある長野の測候所を出た。善光寺から七八町向うの質屋の壁は白く日をうけた。庭の内も今は草木の盛な時で、柱に倚凭って眺めると、新緑の香に圧されるような心地がする。熱い空気に蒸される林檎の可憐らしい花、その周囲を飛ぶ蜜蜂・・・<島崎藤村「朝飯」青空文庫>
  5. ・・・ 一汽車待つ間、話して、お島の友達は長野の方へ乗って行った。その日は日曜だった。高瀬は浅黄の股引に、尻端を折り、腰には手拭をぶらさげ、憂鬱な顔の中に眼ばかり光らせて、他から帰って来た。お島は勝手口の方へ自慢の漬物を出しに行って来て、炉辺・・・<島崎藤村「岩石の間」青空文庫>
  6. ・・・上田から長野へ電線で送られた唱歌が長野局から電波で放送され、それがエーテルを伝わってもとの上田の発源地へ帰って来ているのである。何でもない当り前の事であるが、ちょっと変な気のするものである。 あとで新聞を見たら、この地で七十年ぶりという・・・<寺田寅彦「高原」青空文庫>
  7. ・・・ 路地にひらいた三尺縁で、長野と深水が焼酎をのんでいた。長野は、赤い組長マークのついた菜葉服の上被を、そばの朝顔のからんだ垣にひっかけて、靴ばきのままだが、この家の主人である深水は、あたらしいゆあがりをきて、あぐらをかいている。「そ・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  8. ・・・雲如は江戸の商家に生れたが初文章を長野豊山に学び、後に詩を梁川星巌に学び、家産を蕩尽した後一生を旅寓に送った奇人である。晩年京師に留り遂にその地に終った。雲如の一生は寛政詩学の四大家中に数えられた柏木如亭に酷似している。如亭も江戸の人で生涯・・・<永井荷風「向嶋」青空文庫>
  9. ・・・ ヴィタミンABCでなじみぶかい理研のコンツェルンは、工学博士、子爵大河内正敏氏その他を主として、長野や群馬、新潟などの寒村に、「共同作業場ともいえないくらいの小さな作業場」をつくり都会の大工場で同じ機械を使って造り出す能率の二倍以上の・・・<宮本百合子「新しい婦人の職場と任務」青空文庫>
  10. ・・・ダディーは長野宇平治氏と話し、オーケストラは鳴る。   十一日 本田をたずねようとしてミルス・ホテルに行く番地をききに来る。ダディーはかえらず。自分は赤いスウェターを着る。ネクタイの先のほつれたのを縫ってあげる。   十二日 博物館・・・<宮本百合子「「黄銅時代」創作メモ」青空文庫>
  11. ・・・ ゆうべ、八時というのは、長野の町へ出てのかえりであった。 善光寺を建てた坊さんは、長野の市街が天然にもっている土地の勾配というものを実にうまくとらえ、造形化したものだと思う。見通しの美的効果というものを、敏感に利用している。そ・・・<宮本百合子「上林からの手紙」青空文庫>
  12. ・・・然し、大阪、高知、長野等拡大中央委員会にわざわざ代表が出席した程比較的強力な支部からの報告でさえ、その中には一言も、支部に於ける婦人委員会の問題、婦人大衆に対する文学的働きかけについての対策というものは言及されていなかった。 これは作家・・・<宮本百合子「国際無産婦人デーに際して」青空文庫>
  13. ・・・ 十月三日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 長野県下高井郡上林温泉せきや方より〕 十月三日。一日に仕事が終らず、二日に出発。上野から長野まで汽車。長野から湯田中まで電鉄。その後自動車でのぼり二十分ばかり来ると、桜並木のところに、店頭・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  14. ・・・弁護士界の長老である正木、長野、和光、吉田などをこめる十一名の弁護士がこの公判に参加している。これらの弁護士団は、「本件の如き憲法や新刑訴の趣旨を蹂りんしているのではないかと被告がすでに思っているような事件においては」「法令が適正に運用され・・・<宮本百合子「それに偽りがないならば」青空文庫>
  15.  現代の日本の作家の中で、その作品に最も多く自然をうけ入れ、示しているのは誰であろう。島崎藤村をその一人としてあげ得ると思う。 藤村は、明治五年、長野県の馬籠で生れた。家は馬籠の旧本陣で、そこの大規模な家の構え、召使いな・・・<宮本百合子「藤村の文学にうつる自然」青空文庫>
  16. ・・・青森市では、記載もれの市民大会が開かれ、市長以下責任者が退陣しなければならなくなった。長野の或るところでは、役場の責任者が、責任感から行方不明となり、自殺したかもしれないと云われている。 このような大量な記載もれの生じた原因は、何だった・・・<宮本百合子「春遠し」青空文庫>
  17. ・・・実に英吉利人はいずくに来ても英吉利人なりと打笑いぬ。長野にて車を下り、人力車雇いて須坂に来ぬ。この間に信濃川にかけたる舟橋あり。水清く底見えたり。浅瀬の波舳に触れて底なる石の相磨して声するようなり。道の傍には細流ありて、岸辺の蘆には皷子花か・・・<森鴎外「みちの記」青空文庫>