ながれ‐こ・む【流れ込む】例文一覧 16件

  1. ・・・コーヒー茶わんの縁がまさにくちびると相触れようとする瞬間にぱっと頭の中に一道の光が流れ込むような気がすると同時に、やすやすと解決の手掛かりを思いつくことがしばしばあるようである。 こういう現象はもしやコーヒー中毒の症状ではないかと思って・・・<寺田寅彦「コーヒー哲学序説」青空文庫>
  2. ・・・警備の巡査、兵士、それから新聞社、保険会社、宗教団体等の慰問隊の自動車、それから、なんの目的とも知れず流れ込むいろいろの人の行きかいを、美しい小春日が照らし出して何かお祭りでもあるのかという気もするのであった。今度の地震では近い所の都市が幸・・・<寺田寅彦「時事雑感」青空文庫>
  3. ・・・そうすると水面の高い方から低い方へ海の水が盛んに流れ込むので強い潮の流れが出来ます。瀬戸内海にはこのような場所が沢山にあります。中でも早吸の瀬戸などは神武天皇が東征の時に御通りになったというので、歴史で名高くその名も潮流の早い事を示していて・・・<寺田寅彦「瀬戸内海の潮と潮流」青空文庫>
  4. ・・・ 私の想像は無論群集に押されて第一室へ流れ込む。先ず何かしら大きな屏風の面に散布した色彩が期待に緊張した視線に打つかる。近くで見てはどうも全体の統一した感じが得られないと思って引下がって見ようとすると、その絵の前に立ちはだかった人々の群・・・<寺田寅彦「帝展を見ざるの記」青空文庫>
  5. ・・・陸地の上の空気は海上よりも強くあたたまり、膨張して高い所の空気が持ち上がるから、そこで海のほうへあふれ出すので、それを補うため、下では海面から陸のほうへ空気が流れ込むのがすなわちこの風です。それだから海軟風の吹く前には、空の高い所では逆の風・・・<寺田寅彦「夏の小半日」青空文庫>
  6. ・・・という事が非常に明確な実感となって自分の頭に流れ込む。重苦しい夜の圧迫が今ようやく除かれるのだという気がすると同時にこわばって寝苦しかった肉体の端から端までが急に柔らかく快くなる。しばらく途絶えていた鳥の声がまた聞こえる。するとどういうもの・・・<寺田寅彦「病院の夜明けの物音」青空文庫>
  7.  東京××大学医学部附属病院、整形外科病室第N号室。薄暗い廊下のドアを開けて、室へはいると世の中が明るい。南向きの高い四つの窓から、東京の空の光がいっぱいに流れ込む。やや煤けた白い壁。婦人雑誌の巻頭挿画らしい色刷の絵が一枚貼・・・<寺田寅彦「病院風景」青空文庫>
  8. ・・・神社や寺院の前に立つ時に何かしら名状のできないある物が不信心な自分の胸に流れ込むと同じように、これらの書物の中から流れ出る一種の空気のようなものは知らぬ間に自分の頭にしみ込んで、ちょうど実際に読書する事によって得られる感じの中から具体的なす・・・<寺田寅彦「丸善と三越」青空文庫>
  9. ・・・そしてあらしの物音の中に流れ込む自分の笑声をきわめて自然なもののように感ずるのであった。 あるいは門前の川が汎濫して道路を浸している時に、ひざまでも没する水の中をわたり歩いていると、水の冷たさが腿から腹にしみ渡って来る、そうしてからだじ・・・<寺田寅彦「笑い」青空文庫>
  10. ・・・館を繞りて緩く逝く江に千本の柳が明かに影をひたして、空に崩るる雲の峰さえ水の底に流れ込む。動くとも見えぬ白帆に、人あらば節面白き舟歌も興がろう。河を隔てて木の間隠れに白くひく筋の、一縷の糸となって烟に入るは、立ち上る朝日影に蹄の塵を揚げて、・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  11. ・・・風に喰い留められた渦は一度になだれて空に流れ込む。暫くすると吹き出す烟りの中に火の粉が交じり出す。それが見る間に殖える。殖えた火の粉は烟諸共風に捲かれて大空に舞い上る。城を蔽う天の一部が櫓を中心として大なる赤き円を描いて、その円は不規則に海・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  12. ・・・この吉日をとり逃したら又何時ふんだんな人間の涙と呻きが私の喉に流れ込むかしれたものではない。一面濛々とした雲の海。凄じい風に押されて、彼方に一団此方に一団とかたまった電光を含む叢雲が、揺れ動き崩れかかる、その隙間にちらり、ちらり・・・<宮本百合子「対話」青空文庫>
  13. ・・・ 目の下を流れて行く川が、やがて、うねりうねって、向うのずうっと向うに見えるもっと大きい河に流れ込むのから、目路も遙かな往還に、茄子の馬よりもっと小っちゃこい駄馬を引いた胡麻粒ぐらいの人が、平べったくヨチヨチ動いているのまで、一目で見わ・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  14. ・・・黎明、朝、ひる間、順々に外光がたっぷり八畳に流れ込む。夜、森とした中で机に向ってい、ひょいと頭を擡げると、すぐ前に在る障子の硝子面、外の硝子の面と、いきなり二重に自分の顔や手つきが映り、不気味になる。――ああ、こんなにすき透し! 泥棒にすっ・・・<宮本百合子「春」青空文庫>
  15. ・・・坂からの傾斜があるから、泥水はどしどし門内に流れ込む。粘土が泥濘になる。小舎の敷藁――若しあるとして――もぐちょぐちょであろう。斑の、いやに人間みたいな顔付の犬は、小舎の中にも居られず、さりとて鎖があるから好きな雨やどりの場所を求めることも・・・<宮本百合子「吠える」青空文庫>
  16. ・・・ 朝、日が昇ると一緒に硝子窓から射込む光線が縞に成って寝室に流れ込むほど、建物も粗末だった。 五つの年から、畑のある家で大きく成った泰子は、貸家払底の恐ろしさを始めて味わされた。 其ばかりか、その附近には、幼稚園の中のように子供・・・<宮本百合子「われらの家」青空文庫>