なき‐ふ・す【泣(き)伏す】例文一覧 4件

  1. ・・・ ようよう一こと言ったが、おとよはまた泣き伏すのである。「省さん、あとから手紙で申し上げますから、今夜は思うさま泣かしてください」 しどろもどろにおとよは声を呑むのである。省作はとうとう一語も言い得ない。 悲しくつらく玉の緒・・・<伊藤左千夫「春の潮」青空文庫>
  2. ・・・さして行く笠置の山、と仰せられては、藤原季房ならずとも、泣き伏すにきまっている。あまりの事に、はにかんで、言えないだけなのである。わかり切った事である。鳴かぬ蛍は、何とかと言うではないか。これだけ言ってさえも、なんだか、ひどく残念な気がする・・・<太宰治「一燈」青空文庫>
  3. ・・・しばらく私のすがたを見つめているうちに、私には面皰もあり、足もあり、幽霊でないということが判って、父は憤怒の鬼と化し、母は泣き伏す。もとより私は、東京を離れた瞬間から、死んだふりをしているのである。どのような悪罵を父から受けても、どのような・・・<太宰治「玩具」青空文庫>
  4. ・・・女の人形の運動は男のよりもより多く細かな曲線を描くのはもとより当然であるが、それが人形であるためにそういう運動の特徴がいっそう抽象示揚されるのであろう。泣き伏すところなどでも肩の運動一つでその表情の特徴が立派に表現される。見ているものは熱い・・・<寺田寅彦「生ける人形」青空文庫>