なげき【嘆き/×歎き】例文一覧 23件

  1. ・・・我々の神はこの嘆きを憐れみ、雌の河童の脳髄を取り、雄の河童を造りました。我々の神はこの二匹の河童に『食えよ、交合せよ、旺盛に生きよ』という祝福を与えました。……」 僕は長老の言葉のうちに詩人のトックを思い出しました。詩人のトックは不幸に・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  2. ・・・ 永久なる眠りも冷酷なる静かさも、なおこのままわが目にとどめ置くことができるならば、千重の嘆きに幾分の慰藉はあるわけなれど、残酷にして浅薄な人間は、それらの希望に何の工夫を費さない。 どんなに深く愛する人でも、どんなに重く敬する人で・・・<伊藤左千夫「奈々子」青空文庫>
  3. ・・・僕とて民子の死と聞いて、失神するほどの思いであれど、今目の前で母の嘆きの一通りならぬを見ては、泣くにも泣かれず、僕がおろおろしている所へ兄夫婦が出てきた。「お母さん、まアそう泣いたって仕方がない」 と云えば母は、かまわずに泣かしてお・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  4. ・・・「ついてはご自身で返事書きたき由仰せられ候まま御枕もとへ筆墨の用意いたし候ところ永々のご病気ゆえ気のみはあせりたまえどもお手が利き候わず情けなき事よと御嘆きありせめては代筆せよと仰せられ候間お言葉どおりを一々に書き取り申し候 必・・・<国木田独歩「遺言」青空文庫>
  5. ・・・倉皇として奔命し、迫害の中に、飢えと孤独を忍び、しかも真理のとげ難き嘆きと、共存同悲の愍みの愛のために哭きつつ一生を生きるのである。「日蓮は涙流さぬ日はなし」と彼はいった。 日蓮は日本の高僧中最も日本的性格を持ったそれである。彼において・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  6. 天の原かかれる月の輪にこめて別れし人を嘆きもぞする 私たちがこの人生に生きていろいろな人々に触れあうとき、ある人々はその感情の質が大変深くてかつ潤うているのに出会うものである。そして経験によるとこの種の人々は・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  7. ・・・隣室の夫も、ねむられない様子で、溜息が聞え、私も思わず溜息をつき、また、あのおさんの、 女房のふところには 鬼が棲むか あああ 蛇が棲むか とかいう嘆きの歌が思い出され、夫が起きて私の部屋へやって来て、私はからだを固くし・・・<太宰治「おさん」青空文庫>
  8. ・・・と、地団駄踏んで、その遺言書に記してあったようだが、私も、いまは、その痛切な嘆きには一も二も無く共鳴したい。たかが熊本君ごときに、酒を飲む人の話は、信用できませんからね、と憫笑を以て言われても、私には、すぐに撥ね返す言葉が無い。冷水摩擦を毎・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  9. ・・・狐には穴あり、鳥には巣あり、されど人の子には枕するところ無し、とはまた、自由思想家の嘆きといっていいだろう。一日も安住を許されない。その主張は、日々にあらたに、また日にあらたでなければならぬ。日本に於いて今さら昨日の軍閥官僚を罵倒してみたっ・・・<太宰治「十五年間」青空文庫>
  10. ・・・私の嘆きを真面目に答えたつもりなのでした。 質問は、あまりありませんでした。仕方が無いから、私は独白の調子でいろいろ言いました。ありがとう、すみません、等の挨拶の言葉を、なぜ人は言わなければならないか。それを感じた時、人は、必ずそれを言・・・<太宰治「みみずく通信」青空文庫>
  11. ・・・強い人にも嘆き悲しみ悶えはある。しかしそれは弱いもののそれとは何処かちがった響がある。 宇都野さんの歌の音調にはやはり自ずからな特徴がある。それは如何なる点に存するか明白に自覚し得ないが、やはり子音母音の反復律動に一種の独自の方式がある・・・<寺田寅彦「宇都野さんの歌」青空文庫>
  12. ・・・「青い天使」「嘆きの天使」というのを見た。同じ監督がこのあとに作った「モロッコ」を見たあとでこれを見たことは一つのおもしろい経験であった。著名な科学者の一代の大論文を読んで感心したあとで、その人のその論文を書くまでの道筋を逆にたどってそれま・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  13. ・・・ 一番目「嘆きの天使」はかつてスタンバーク監督ディートリヒ主演の映画を見ていたので、それとこれとを比較して見るという興味があった。さて「高等中学」の教室に現われた教授ウンラートはと見ると、遠方から見たいったいの風貌がエミール・ヤニングス・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  14. ・・・冬の闇夜に悪病を負う辻君が人を呼ぶ声の傷しさは、直ちにこれ、罪障深き人類の止みがたき真正の嘆きではあるまいか。仏蘭西の詩人 Marcel Schwob はわれわれが悲しみの淵に沈んでいる瞬間にのみ、唯の一夜、唯の一度われわれの目の前に現われ・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  15. ・・・只眼にあまる情けと、息に漏るる嘆きとにより、昼は女の傍えを、夜は女の住居の辺りを去らぬ誠によりて、我意中を悟れかしと物言わぬうちに示す」クララはこの時池の向うに据えてある大理石の像を余念なく見ていた。「第二を祈念の時期と云う。男、女の前に伏・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  16. ・・・絶えざる不満、圧迫の下に束縛されて、嘆き悲しみつつ軈ては其にも馴れて無感覚に成った不幸な魂が、如何うして輝く肉体の所有者に成れますでしょう。 基督教が赤子の時から吹き込んだ「平等なるべき」人類として、彼等の尊重すべき伴侶として立つべき位・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  17. ・・・戦争で子を失ったすべての母たちの嘆きが、子さんの苦悩に表徴されているようにわたしには感じられた。そして、妻たちの悲しみが。愛が破壊されたということで、子さんは最もはげしく戦争の惨禍をうけた婦人の一人である。 香織さんの霊が不滅であると信・・・<宮本百合子「その願いを現実に」青空文庫>
  18. ・・・ この伝説は、圧迫を蒙って来た少数民族の嘆きと憤りとを語るばかりだろうか。わたしには、そればかりと思えない。もしわたくしたちの生活に毎日毎夜うけいれている文字のすべてが、独占資本の権力によって廻転されている印刷能力からうちのめされて来る・・・<宮本百合子「文学と生活」青空文庫>
  19. ・・・彼等が見出そうと欲したのは五年目に見るソヴェトに対するゴーリキイの失望と、偉大な声楽家シャリアピンが金の儲からぬロシアを捨てて、しかも古いロシアの嘆きの唱を歌いつつ稼いでいるように、ソヴェトを見限るであろうということであった。 一方ソヴ・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」青空文庫>
  20. ・・・あるいは生活の幸福というものを、動かない形にはめて考えてきた老年の女性が、こわされながらもまだ生活の現実にのこっている積極な可能性をつかめないで、その一つの文章が嘆きと愚痴に終ってしまっているにしろ。やっぱりそこには実感が溢れ、そのような実・・・<宮本百合子「「未亡人の手記」選後評」青空文庫>
  21. ・・・ヨーロッパの第一次大戦において経験された破壊を心から嘆き、戦争が非人道的な所業であることを心から恥じているヨーロッパの多くの進歩的な人々は、真面目に第二次大戦を防ごうとしていたし、あらゆる形、あらゆる会議、あらゆる力の均衡を発見する方法をつ・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>
  22. ・・・長者夫妻は非常な嘆きに沈んで、鷲が飛んで行ったその深山の中へ、子をさがしに分け入った。 玉王をさらった鷲は、阿波の国のらいとうの衛門の庭のびわの木に嬰児をおろして、虚空に飛び去った。衛門は子がなかったので、美しい子を授かったことを喜び、・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  23. ・・・烏は績を謳歌してカアカアと鳴く、ただ願わくば田吾作と八公が身の不運を嘆き命惜しの怨みを呑んで浮世を去った事を永しえに烏には知らさないでいたい。 孝は東洋倫理の根本である、神も人もこれを讃美する。寒夜裸になって氷の上に寝たら鯉までが感心し・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>