な・す【成す】例文一覧 28件

  1. ・・・一部を成すとは称し難い。しかし兎に角一部を成している。   或自警団員の言葉 さあ、自警の部署に就こう。今夜は星も木木の梢に涼しい光を放っている。微風もそろそろ通い出したらしい。さあ、この籐の長椅子に寝ころび、この一本のマニ・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・しずまんとす 寒光地に迸つて刀花乱る 殺気人を吹いて血雨淋たり 予譲衣を撃つ本意に非ず 伍員墓を発く豈初心ならん 品川に梟示す竜頭の冑 想見る当年怨毒の深きを     曳手・単節荒芽山畔路叉を成す 馬を駆て帰来る日斜き易し 虫喞凄涼・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  3. ・・・そのために手当を貰っているという説を成すものもあった。私は手当云々は信じられなかったが、しかし自治委員の前では自分の思う所を述べられないと思った。が、たった一つ彼等の眼をくらますことの出来ないものがあった。それは私の髪の毛である。ある日それ・・・<織田作之助「髪」青空文庫>
  4. ・・・そこを助けたのが、丹造今日の大を成すに与って力のあった古座谷某である。古座谷はかつて最高学府に学び、上海にも遊び、筆硯を以って生活をしたこともある人物で、当時は土佐堀の某所でささやかな印刷業を営んでいた……。 まず無難な書き方だ。あとで・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  5. ・・・今のところ、せっせと書けば、食うに困るというほどでもないが、没落した家を再興し、産を成すようなタイプとは、私は正反対の人間だ。今は食うに困らなくても、やがて私もまた父と同じように身を亡ぼしてしまうかも知れない。そして、それは酒のためではない・・・<織田作之助「中毒」青空文庫>
  6. ・・・神経衰弱の八割までは眼の屈折異常と関係があるという説を成す医者もあるくらいだから――、とこんな風に僕は我田引水し、これも眼の良い杉山平一などとグルになって、他の眼鏡の使用を必要とする友人を掴えて、さも大発見のようにこの説を唱えて、相手をくさ・・・<織田作之助「僕の読書法」青空文庫>
  7. ・・・昔を今に成す由もないからな。 しかし彼時親類共の態度が余程妙だった。「何だ、馬鹿奴! お先真暗で夢中に騒ぐ!」と、こうだ。何処を押せば其様な音が出る? ヤレ愛国だの、ソレ国難に殉ずるのという口の下から、如何して彼様な毒口が云えた? あい・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  8. ・・・ 記してあるのみならず、平生予に向っても昔し蘇東坡は極力孟子の文を学び、竟に孟子以外に一家を成すに至った。若しお前が私の文を学んで、私の文に似て居る間は私以上に出ることは出来ない。誰でも前人以外に新機軸を出さねばならぬと誨えられた。・・・<幸徳秋水「文士としての兆民先生」青空文庫>
  9. ・・・ 次に舜典に徴するに、舜は下流社會の人、孝によりて遂に帝位を讓られしが、その事蹟たるや、制度、政治、巡狩、祭祀等、苟も人君が治民に關して成すべき一切の事業は殆どすべて舜の事蹟に附加せられ、且人道中最大なる孝道は、舜の特性として傳へらるゝ・・・<白鳥庫吉「『尚書』の高等批評」青空文庫>
  10. ・・・ 映画芸術が四次元空間における建築の芸術である以上、それをただ一人の芸術家の手で完成することははなはだ困難である。建築が設計者製図者を始めとしてあらゆる種類の工人の手を借りてできあがるように、一つの映画ができあがるまでには実に門外漢の想・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  11. ・・・あの前編前半のクライマックスを成す刃傷の心理的経過をもう少し研究してほしいという気がする。自分の見る点では、内匠頭はいよいよ最後の瞬間まではもっとずっと焦躁と憤懣とを抑制してもらいたい。そうして最後の刹那の衝動的な変化をもっと分析して段階的・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  12. ・・・の一部を成すところの科学はやはり「言葉」でつづられた記録でありまた予言であり、そうしてわれわれのこの世界に普遍的なものでなければならないのである。 文字で書き現わされていて、だれでもが読めるようになったものでなければ、それはやはり科学で・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  13. ・・・しかし、ヘブライ語の相撲という言葉の根幹を成す「アバク」という語は本来「塵埃」の意味があるからやはり地べたにころがしっこをするのであったかもしれない。そうして相撲の結果として足をくじいてびっこを引くこともあったらしい。それから、これは全く偶・・・<寺田寅彦「相撲」青空文庫>
  14. ・・・近来はしばしば、家庭の不幸に遇い、心身共に銷磨して、成すべきことも成さず、尽すべきことも尽さなかった。今日、諸君のこの厚意に対して、心窃に忸怩たらざるを得ない。幼時に読んだ英語読本の中に「墓場」と題する一文があり、何の墓を見ても、よき夫、よ・・・<西田幾多郎「或教授の退職の辞」青空文庫>
  15. ・・・其両親に遠ざかるは即ち之に離れざるの法にして、我輩の飽くまでも賛成する所なれども、或は家の貧富その他の事情に由て別居すること能わざる場合もある可きなれば、仮令い同居しても老少両夫婦の間は相互に干渉することなく、其自由に任せ其天然に従て、双方・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  16. ・・・さればこそ習慣は第二の天性を成すといい、幼稚の性質は百歳までともいう程のことにて、真に人の賢不肖は、父母家庭の教育次第なりというも可なり。家庭の教育、謹むべきなり。 然るに今、この大切なる仕事を引受けたる世間の父母を見るに、かつて子を家・・・<福沢諭吉「家庭習慣の教えを論ず」青空文庫>
  17. ・・・この家の内に養われてこの事情を目撃する子供にして、果たして何らの習慣を成すべきや。家内安全を保護する道徳の教えも、貴重は則ち貴重なれども、更に貴重なる公務には叶わぬものなりとて、既に公務に対して卑屈の習慣を養成し、次いで年齢に及びて人間社会・・・<福沢諭吉「教育の事」青空文庫>
  18. ・・・けだし人生の教育は生れて家風に教えられ、少しく長じて学校に教えられ、始めて心の体を成すは二十歳前後にあるものの如し。この二十年の間に教育の名を専にするものは、ただ学校のみにして、凡俗また、ただ学校の教育を信じて疑わざる者多しといえども、その・・・<福沢諭吉「政事と教育と分離すべし」青空文庫>
  19. ・・・すなわち人間の家を成すものにして、これを私徳の美という。内に私徳の修まるあれば、外に発して朋友の信となり、治者被治者の義となり、社会の交際法となるべし。 けだし社会は個々の家よりなるものにして、良家の集合すなわち良社会なれば、徳教究竟の・・・<福沢諭吉「読倫理教科書」青空文庫>
  20. ・・・如何となれば、夫婦既に配偶の大倫を紊りて先ず不徳の家を成すときは、この家に他の徳義の発生すべき道理あらざればなり。近く有形のものについて確かなる証拠を示さんに、両親の身体に病あればその病毒は必ず子孫に遺伝するを常とす、人の普く知る所にして、・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  21. ・・・すなわち国を立てまた政府を設る所以にして、すでに一国の名を成すときは人民はますますこれに固着して自他の分を明にし、他国他政府に対しては恰も痛痒相感ぜざるがごとくなるのみならず、陰陽表裏共に自家の利益栄誉を主張してほとんど至らざるところなく、・・・<福沢諭吉「瘠我慢の説」青空文庫>
  22. ・・・其事に見われしもの之を事の持前というに、事の持前は猶物の持前の如く、是亦形を成す所以のものなり。火の形に熱の意あれば水の形にも冷の意あり。されば火を見ては熱を思い、水を見ては冷を思い、梅が枝に囀ずる鶯の声を聞ときは長閑になり、秋の葉末に集く・・・<二葉亭四迷「小説総論」青空文庫>
  23. ・・・蕪村の牡丹を詠ずるはあながち力を用いるにあらず、しかも手に随って佳句を成す。句数も二十首の多きに及ぶ。そのうち数首を挙ぐれば牡丹散って打重なりぬ二三片牡丹剪って気の衰へし夕かな地車のとゞろとひゞく牡丹かな日光の土にも彫れ・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  24. ・・・人として、偉大な人生の些やかな然し大切な一節を成す自分の運命として、四囲の関係の裡に在る我を通観する事に馴れない彼女は、自分の苦しむ苦、自分の笑う歓喜を、自分の胸一つの裡に帰納する事は出来ても、苦しむ自分、笑う自分を、自分でより普遍的な人類・・・<宮本百合子「概念と心其もの」青空文庫>
  25. ・・・工場・農村に於ては特に生産者としての婦人を、また生産者の妻や妹を、また出征兵士の家族たる婦人を、街頭サークルに於ては多分その主たるメンバーを成すだろう失業せる婦人を。 だから婦人の同盟員やサークル内の活動的婦人メンバーはさきに立ってメー・・・<宮本百合子「メーデーに備えろ」青空文庫>
  26. ・・・人は社会を成す動物だ。樵夫は樵夫と相交って相語る。漁夫は漁夫と相交って相語る。予は読書癖があるので、文を好む友を獲て共に語るのを楽にして居た。然るに国民之友の主筆徳富猪一郎君が予の語る所を公衆に紹介しようと思い立たれて、丁度今猪股君が予に要・・・<森鴎外「鴎外漁史とは誰ぞ」青空文庫>
  27. ・・・しかし遣りようでは、激成するというような傾きを生じ兼ねない。その候補者はどんな人間かと云うと、あらゆる不遇な人間だね。先年壮士になったような人間だね。」 茶を飲んで席を起つものがちらほらある。 木村は隠しから風炉鋪を出して、弁当の空・・・<森鴎外「食堂」青空文庫>
  28. ・・・それは Aesthet として徹底する道であるとともに、またさらにより高い世界へ転向する可能性を激成する道である。けれども彼にはそれがない。彼の製作はいかにも突き入って行く趣を欠いている。すべてが核心に触れていない。 このような三人の相・・・<和辻哲郎「転向」青空文庫>