な‐だい【名題/名代】例文一覧 22件

  1. ・・・もっとも風中と保吉とは下戸、如丹は名代の酒豪だったから、三人はふだんと変らなかった。ただ露柴はどうかすると、足もとも少々あぶなかった。我々は露柴を中にしながら、腥い月明りの吹かれる通りを、日本橋の方へ歩いて行った。 露柴は生っ粋の江戸っ・・・<芥川竜之介「魚河岸」青空文庫>
  2. ・・・その弟の主水重昌は、慶長十九年大阪冬の陣の和が媾ぜられた時に、判元見届の重任を辱くしたのを始めとして、寛永十四年島原の乱に際しては西国の軍に将として、将軍家御名代の旗を、天草征伐の陣中に飜した。その名家に、万一汚辱を蒙らせるような事があった・・・<芥川竜之介「忠義」青空文庫>
  3. ・・・あるいは商売附合いの宴会へも父親の名代を勤めさせる――と云った具合に骨を折って、無理にも新蔵の浮かない気分を引き立てようとし始めました。そこでその日も母親が、本所界隈の小売店を見廻らせると云うのは口実で、実は気晴らしに遊んで来いと云わないば・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  4. ・・・…… 名代である。       二 畠一帯、真桑瓜が名産で、この水あるがためか、巨石の瓜は銀色だと言う……瓜畠がずッと続いて、やがて蓮池になる……それからは皆青田で。 畑のは知らない。実際、水槽に浸したのは、真蒼な西・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  5. ・・・ 且つ仕舞船を漕ぎ戻すに当っては名代の信者、法華経第十六寿量品の偈、自我得仏来というはじめから、速成就仏身とあるまでを幾度となく繰返す。連夜の川施餓鬼は、善か悪か因縁があろうと、この辺では噂をするが、十年は一昔、二昔も前から七兵衛を知っ・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  6. ・・・「名代な魔所でござります。」「何か知らんが。」 と両手で頤を扱くと、げっそり瘠せたような顔色で、「一ッきり、洞穴を潜るようで、それまで、ちらちら城下が見えた、大川の細い靄も、大橋の小さな灯も、何も見えぬ。 ざわざわざわざ・・・<泉鏡花「朱日記」青空文庫>
  7. ・・・るな、しばらく人間とは交らぬ、と払い退けるようにしてそれから一式の恩返しだといって、その時、饅頭の餡の製し方を教えて、屋根からまた行方が解らなくなったと申しますが、それからはその島屋の饅頭といって街道名代の名物でございます。」   ・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  8. ・・・六七人と銑吉がこの近所の名代の天麸羅で、したたかに食い且つ飲んで、腹こなしに、ぞろぞろと歩行出して、つい梅水の長く続いた黒塀に通りかかった。 盛り場でも燈を沈め、塀の中は植込で森と暗い。処で、相談を掛けてみたとか、掛けてみるまでもなかっ・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  9. ・・・ ――これが、名代の阿部川だね、一盆おくれ。―― と精々喜多八の気分を漾わせて、突出し店の硝子戸の中に飾った、五つばかり装ってある朱の盆へ、突如立って手を掛けると、娘が、まあ、と言った。 ――あら、看板ですわ―― いや、正の・・・<泉鏡花「雛がたり」青空文庫>
  10. ・・・という芭蕉の句も、この辺という名代の荒海、ここを三十噸、乃至五十噸の越後丸、観音丸などと云うのが、入れ違いまする煙の色も荒海を乗越すためか一際濃く、且つ勇ましい。 茶店の裏手は遠近の山また山の山続きで、その日の静かなる海面よりも、一層か・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  11. ・・・ が、蔵前を通る、あの名代の大煙突から、黒い山のように吹出す煙が、渦巻きかかって電車に崩るるか、と思うまで凄じく暗くなった。 頸許がふと気になると、尾を曳いて、ばらばらと玉が走る。窓の硝子を透して、雫のその、ひやりと冷たく身に染むの・・・<泉鏡花「妖術」青空文庫>
  12. ・・・「おっかさんの名代だ、娘に着せるのに仔細ない。」「はい、……どうぞ。」 くるりと向きかわると、思いがけず、辻町の胸にヒヤリと髪をつけたのである。「私、こいしい、おっかさん。」 前刻から――辻町は、演芸、映画、そんなものの・・・<泉鏡花「縷紅新草」青空文庫>
  13. ・・・総領は児供の時から胆略があって、草深い田舎で田の草を取って老朽ちる器でなかったから、これも早くから一癖あった季の弟の米三郎と二人して江戸へ乗出し、小石川は伝通院前の伊勢長といえばその頃の山の手切っての名代の質商伊勢屋長兵衛方へ奉公した。この・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  14. ・・・尤も一と頃倫敦の社交夫人間にカメレオンを鍾愛する流行があったというが、カメレオンの名代ならYにも勤まる。 そういえばYの衣服が近来著るしく贅沢になって来た。新裁下しのセルの単衣に大巾縮緬の兵児帯をグルグル巻きつけたこの頃のYの服装は玄関・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  15. ・・・かつて或る暴風雨の日に俄に鰻が喰いたくなって、その頃名代の金杉の松金へ風雨を犯して綱曳き跡押付きの俥で駈付けた。ところが生憎不漁で休みの札が掛っていたので、「折角暴風雨の中を遥々車を飛ばして来たのに残念だ」と、悄気返って頻に愚痴ったので、帳・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  16. ・・・日の髪結いにまで当り散らし欺されて啼く月夜烏まよわぬことと触れ廻りしより村様の村はむら気のむら、三十前から綱では行かぬ恐ろしの腕と戻橋の狂言以来かげの仇名を小百合と呼ばれあれと言えばうなずかぬ者のない名代の色悪変ると言うは世より心不めでたし・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  17. ・・・しかし、それにしても乗っているのが青バスであるのに、服装がどうも自分の想像している名代女優というものの服装とはぴったり符合しない。多分銘仙というのであろう。とにかくそこいらを歩いている普通十人並の娘達と同じような着物に、やはりありふれたよう・・・<寺田寅彦「初冬の日記から」青空文庫>
  18. ・・・キングは名代を遣わして参列させ、その他ケンブリッジ大学や王立協会の主要な人々も会葬し、荘園の労働者は寺の門前に整列した。墓はターリング・プレースの花園に隣った寺の墓地の静かな片隅にある。赤い砂岩の小さな墓標には "For now we se・・・<寺田寅彦「レーリー卿(Lord Rayleigh)」青空文庫>
  19. ・・・絵看板と同じく脚本の名題もまたそれに劣らぬ文字が案出されている。レヴューの名題には肉体とか絢爛とか誘惑とかいう文字が羅列され、演劇には姦淫、豺狼、貪乱といったような文字が選び出されている。 浅草の興行街には久しく剣劇といいチャンバラとい・・・<永井荷風「裸体談義」青空文庫>
  20. ・・・ 三ツばかり先の名代部屋で唾壺の音をさせたかと思うと、びッくりするような大きな欠伸をした。 途端に吉里が先に立ッて平田も後から出て来た。「お待遠さま。兄さん、済みません」と、吉里の声は存外沈着いていた。 平田は驚くほど蒼白た・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  21. ・・・ここにおいて一国衆人の名代なる者を設け、一般の便不便を謀て政律を立て、勧善懲悪の法、はじめて世に行わる。この名代を名づけて政府という。その首長を国君といい、附属の人を官吏という。国の安全を保ち、他の軽侮を防ぐためには、欠くべからざるものなり・・・<福沢諭吉「中津留別の書」青空文庫>
  22. ・・・ 当方は名代の三段がえし、旅順口はステッセル将軍と乃木大将と会見の場、サア只今! 只今! せり上り活人形大喝采一の谷はふたば軍記! 店々で呼び合う声と広告旗、絵看板、楽隊の響で、せまい団子坂はさわぎと菊の花でつまった煙突のようだった。白と黒・・・<宮本百合子「菊人形」青空文庫>