なにわ‐ぶし〔なには‐〕【花節/波節】例文一覧 26件

  1. ・・・が、その相手は何かと思えば、浪花節語りの下っ端なんだそうだ。君たちもこんな話を聞いたら、小えんの愚を哂わずにはいられないだろう。僕も実際その時には、苦笑さえ出来ないくらいだった。「君たちは勿論知らないが、小えんは若槻に三年この方、随分尽・・・<芥川竜之介「一夕話」青空文庫>
  2. ・・・昼も薄暗いカフェの中にはもう赤あかと電燈がともり、音のかすれた蓄音機は浪花節か何かやっているようです。子犬は得意そうに尾を振りながら、こう白へ話しかけました。「僕はここに住んでいるのです。この大正軒と云うカフェの中に。――おじさんはどこ・・・<芥川竜之介「白」青空文庫>
  3. ・・・あれは全く尋常小学を出てから、浪花節を聴いたり、蜜豆を食べたり、男を追っかけたりばかりしていた、そのせいに違いない。こうお君さんは確信している。ではそのお君さんの趣味というのが、どんな種類のものかと思ったら、しばらくこの賑かなカッフェを去っ・・・<芥川竜之介「葱」青空文庫>
  4. ・・・ 上框に腰をかけていたもう一人の男はやや暫らく彼れの顔を見つめていたが、浪花節語りのような妙に張りのある声で突然口を切った。「お主は川森さんの縁のものじゃないんかの。どうやら顔が似とるじゃが」 今度は彼れの返事も待たずに長顔の男・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  5. ・・・そこで、小さな懐中へ小口を半分差込んで、圧えるように頤をつけて、悄然とすると、辻の浪花節が語った……「姫松殿がエ。」 が暗から聞える。――織次は、飛脚に買去られたと言う大勢の姉様が、ぶらぶらと甘干の柿のように、樹の枝に吊下げられて、・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  6. ・・・議会の開けるまで惰眠を貪るべく余儀なくされた末広鉄腸、矢野竜渓、尾崎咢堂等諸氏の浪花節然たる所謂政治小説が最高文学として尊敬され、ジュール・ベルネの科学小説が所謂新文芸として当時の最もハイカラなる読者に款待やされていた。 二十五年前には・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  7. ・・・ 後は浪花節を呻る声と、束藁のゴシゴシ水のザブザブ。 二階には腎臓病の主が寝ているのである。窓の高い天井の低い割には、かなりに明るい六畳の一間で、申しわけのような床の間もあって、申しわけのような掛け物もかかって、お誂えの蝋石の玉がメ・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  8. ・・・新派の芝居や喜劇や放送劇や浪花節や講談や落語や通俗小説には、一種きまりきった百姓言葉乃至田舎言葉、たとえば「そうだんべ」とか「おら知ンねえだよ」などという紋切型が、あるいは喋られあるいは書かれて、われわれをうんざりさせ、辟易させ、苦笑させる・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  9. ・・・ おれもお前に貰って、見たが、版がわるい上に、紙も子供の手習いにも使えぬ粗末なもので、むろん黒の一色刷り、浪花節の寄席の広告でも、もう少し気の利いたのを使うと思われるような代物だった。余程熱心に読まねば判読しがたい、という点も勘定に入れ・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  10. ・・・いう綽名を持ち、一年三百六十五日、一日も欠かさず、お前たちの生命は俺のものだという意味の、愚劣な、そしてその埋め合わせといわん許りに長ったらしい、同じ演説を、朝夕二回ずつ呶鳴り散らして、年中声が涸れ、浪花節語りのように咽を悪くし、十分毎にペ・・・<織田作之助「昨日・今日・明日」青空文庫>
  11. ・・・おきまりの会費で存分愉しむ肚の不粋な客を相手に、息のつく間もないほど弾かされ歌わされ、浪花節の三味から声色の合の手まで勤めてくたくたになっているところを、安来節を踊らされた。それでも根が陽気好きだけに大して苦にもならず身をいれて勤めていると・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  12. ・・・』『ナニ別に、ただ少しばかし……』『今夜宅で浪花節をやらすはずだから幸ちゃんもおいでなさいな、そらいつかの梅竜』お神さんは卒然言葉をはさんだ。『そうですか、来ましょう、それじゃあまた晩に』と言って幸吉は帰ってしまった。『幸ち・・・<国木田独歩「郊外」青空文庫>
  13. ・・・――野球の放送も、演芸も、浪花節も、オーケストラも。俺はすっかり喜んでしまった。これなら特等室だ、蒸しッ返えしの二十九日も退屈なく過ごせると思った。然し皆はそのために「特等室」と云っているのではなかった。始め、俺にはワケが分らなかった。・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  14. ・・・先日も、佐渡情話とか言う浪花節のキネマを見て、どうしてもがまんができず、とうとう大声をはなって泣きだして、そのあくる朝、厠で、そのキネマの新聞広告を見ていたら、また嗚咽が出て来て、家人に怪しまれ、はては大笑いになって、もはや二度と、キネマへ・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  15. ・・・日本の浪花節みたいな、また、講釈師みたいな、勇壮活溌な作家たちには、まるで理解ができないのではあるまいか。おそらく、豊島先生は、いちども、そんな勇壮活溌な、喧嘩みたいなことを、なさったことはないのではあるまいか。いつも、負けてばかり、そうし・・・<太宰治「豊島與志雄著『高尾ざんげ』解説」青空文庫>
  16. ・・・ これと同じような聯想作用に関係しているためかと思われるのは、例えば落語とか浪花節とかを宅のラジオで聞くと、それがなんとなくはなはだ不自然な、あるまじきものに聞こえて困ることである。それらの演芸の声だけでなくて演芸者自身がその声にくっつ・・・<寺田寅彦「ラジオ雑感」青空文庫>
  17. ・・・園遊会にも行こう。浪花節も聞こう。女優の鞦韆も下からのぞこう。沙翁劇も見よう。洋楽入りの長唄も聞こう。頼まれれば小説も書こう。粗悪な紙に誤植だらけの印刷も結構至極と喜ぼう。それに対する粗忽干万なジゥルナリズムの批評も聞こう。同業者の誼みにあ・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  18. ・・・ 左側に玉の井館という寄席があって、浪花節語りの名を染めた幟が二、三流立っている。その鄰りに常夜燈と書いた灯を両側に立て連ね、斜に路地の奥深く、南無妙法蓮華経の赤い提灯をつるした堂と、満願稲荷とかいた祠があって、法華堂の方からカチカチカ・・・<永井荷風「寺じまの記」青空文庫>
  19. ・・・な官吏、軍人、実業家達及び彼等と膝を交えて大人並に腹のある遊興も出来る一群の作家に指導される文化水準の低い、何故浪花節が悪趣味なのかも分らない、偉い官吏、軍人、実業家ではない人間の大群として考えられているのである。 作家は大衆の心を語る・・・<宮本百合子「「大人の文学」論の現実性」青空文庫>
  20. ・・・ 大衆というものを、文化においても創造的能力より消費的面において見る、つまり『キング』と浪花節と講談、猥談をこのむものとしてだけ見て、しかもそういう大衆の中には種々な社会層の相異があり、その相異から生じる利害の相異もまたあるという現実を・・・<宮本百合子「今日の文学に求められているヒューマニズム」青空文庫>
  21. ・・・彼等は依然として浪花節を好んで講談本を読んでいるではないかという風に問題がおこされたのであった。 そして、これ等の論者の言に従えば、これまでの純文学は民衆の真にあるがままの生活に何等ふれるところがない。要するに文学青年どものもてあそびも・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  22. ・・・戦争がはじまったとき、すべての浪花節、すべての映画、すべての流行唄、いわゆる大衆娯楽の全部が戦争宣伝に動員された。大衆文学・大衆小説はその先頭に立った。原稿紙に香水を匂わせるという優にやさしい堤千代も、吉屋信子も、林芙美子も、女の作家ながら・・・<宮本百合子「商売は道によってかしこし」青空文庫>
  23. ・・・道、〔欄外に〕Leading passion for Utari.     周囲の人 母 好人物 ドメスティック 弟 山雄   富次郎 バチェラー一族 姉 浪花節語り     K、Sの性格・・・<宮本百合子「一九二五年より一九二七年一月まで」青空文庫>
  24. ・・・この種の論者は、浪花節を何よりすきと思っている民衆の感情にぴったりするようなものを作家は創造して大衆化しなければならないと主張した。大衆にわかるように書かなければならないと主張した。谷川徹三氏はその「文化均衡論」で、現代は民衆の文化水準と知・・・<宮本百合子「全体主義への吟味」青空文庫>
  25. ・・・ 外は星夜の深い闇がいっぱいに拡がってどっかで下手な浪花節をうなって居るのが聞えて来た。 千世子の草履の音と京子の日和のいきな響が入りまじっていかにも女が歩くらしい音をたて時々思い出した様に又ははじけた様に笑う声が桜の梢に消えて行っ・・・<宮本百合子「千世子(三)」青空文庫>
  26. ・・・それが不思議な縁で、ふいと浪花節と云うものを聴いた。忠臣孝子義士節婦の笑う可く泣く可く驚く可く歎ず可き物語が、朗々たる音吐を以て演出せられて、処女のように純潔無垢な将軍の空想を刺戟して、将軍に睡壺を撃砕する底の感激を起さしめたのである。畑は・・・<森鴎外「余興」青空文庫>