なまり【×訛り】例文一覧 19件

  1. ・・・ところが、ある年の初夏、八十人あまりのおもに薩摩の士が二階と階下とに別れて勢揃いしているところへ駈けつけてきたのは同じ薩摩訛りの八人で、鎮撫に来たらしかったが、きかず、押し問答の末同士討ちで七人の士がその場で死ぬという騒ぎがあった。騒ぎがは・・・<織田作之助「螢」青空文庫>
  2. ・・・その京都言葉に変な訛りがあった。身嗜みが奇麗で、喬は女にそう言った。そんなことから、女の口はほぐれて、自分がまだ出てそうそうだのに、先月はお花を何千本売って、この廓で四番目なのだと言った。またそれは一番から順に検番に張り出され、何番かまでは・・・<梶井基次郎「ある心の風景」青空文庫>
  3. ・・・ケイズと申しますと、私が江戸訛りを言うものとお思いになる方もありましょうが、今は皆様カイズカイズとおっしゃいますが、カイズは訛りで、ケイズが本当です。系図を言えば鯛の中、というので、系図鯛を略してケイズという黒い鯛で、あの恵比寿様が抱いてい・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  4. ・・・ふたたび郷平橋を渡りつつ、赤平川を郷平川ともいうは、赤平の文字もと吾平と書きたるを音もて読みしより、訛りて郷平となりたるなりという昔の人の考えを宜ない、国神野上も走りに走り越し、先には心づかざりし道の辺に青石の大なる板碑立てるを見出しなどし・・・<幸田露伴「知々夫紀行」青空文庫>
  5. ・・・ハクランカイをごらんなさればよろしいに、と南国訛りのナポレオン君が、ゆうべにかわらぬ閑雅の口調でそうすすめて、にぎやかの万国旗が、さっと脳裡に浮んだが、ばか、大阪へ行く、京都へも行く、奈良へも行く、新緑の吉野へも行く、神戸へ行く、ナイヤガラ・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  6. ・・・肘と肘とをぶっつけ合い、互いに隣りの客を牽制し、負けず劣らず大声を挙げて、おういビイルを早く、おういビエルなどと東北訛りの者もあり、喧々囂々、やっと一ぱいのビイルにありつき、ほとんど無我夢中で飲み畢るや否や、ごめん、とも言わずに、次のお客の・・・<太宰治「禁酒の心」青空文庫>
  7. ・・・という十八枚の短篇小説は、私の作家生活の出発になったのであるが、それが意外の反響を呼んだので、それまで私の津軽訛りの泥臭い文章をていねいに直して下さっていた井伏さんは驚き、「そんな、評判なんかになる筈は無いんだがね。いい気になっちゃいけない・・・<太宰治「十五年間」青空文庫>
  8. ・・・ その細君は、津軽訛りの無い純粋の東京言葉を遣っていた。酔いのせいもあって、私は奇妙な錯覚を起したのである。ツネちゃんは、色白で大柄なひとだったそうではないか。「馬鹿、何を言ってやがる。足か。きのう木炭の配給を取りに一里も歩いて足に・・・<太宰治「雀」青空文庫>
  9. ・・・ 僕は君がしばらく故郷の部隊にいるうちに、ひどく東北訛りの強くなったのに驚き、かつは呆れた。 ざッざッざッと列は僕の眼前を通過する。君はその列にはまるで無関心のように、やたらにしゃべる。それは君が、僕に逢ったらまずどのような事を言っ・・・<太宰治「未帰還の友に」青空文庫>
  10. ・・・こんどはいつ御出でかと例の幡多訛りで問う。おれの事だからいつだかわからんと云ったような事を云うてザブ/\とすまし、机の上をザット片付けて革鞄へ入れるものは入れ、これでよしとヴァイオリンを出して second position の処を開けてヘ・・・<寺田寅彦「高知がえり」青空文庫>
  11. ・・・隣りに言葉訛り奇妙なる二人連れの饒舌もいびきの音に変って、向うのせなあが追分を歌い始むれば甲板に誰れの持て来たものか轡虫の鳴き出したるなど面白し。甲板をあちこちする船員の靴音がコツリ/\と言文一致なれば書く処なり。夢魂いつしか飛んで赴く処は・・・<寺田寅彦「東上記」青空文庫>
  12. ・・・マイヤーの講義はザクセン訛りがひどく「小さい」をグライン「戦争」をグリークという調子で、どうも分りにくくて困った。 ネルンストの「物理化学」もひやかしに一、二度聴いたことがあったが、西洋人にしては脊の低いずんぐりした体格で、それが高い聴・・・<寺田寅彦「ベルリン大学(1909-1910)」青空文庫>
  13. ・・・洗髪に黄楊の櫛をさした若い職人の女房が松の湯とか小町湯とか書いた銭湯の暖簾を掻分けて出た町の角には、でくでくした女学生の群が地方訛りの嘆賞の声を放って活動写真の広告隊を見送っている。 今になって、誰一人この辺鄙な小石川の高台にもかつては・・・<永井荷風「伝通院」青空文庫>
  14. ・・・と車掌が地方訛りで蛇足を加えた。 真直な往来の両側には、意気な格子戸、板塀つづき、磨がらすの軒燈さてはまた霜よけした松の枝越し、二階の欄干に黄八丈に手拭地の浴衣をかさねた褞袍を干した家もある。行書で太く書いた「鳥」「蒲焼」なぞの行燈があ・・・<永井荷風「深川の唄」青空文庫>
  15. ・・・其の言語を聞くに多くは田舎の訛りがある。 ここに最奇怪の念に堪えなかったのは、其等無頼の徒に対して給仕女が更に恐るる様子のないことであった。殊にお民は寧心やすい様子で、一人一人に其姓名を挙げ、「誰々さんとはライオン時代からよく知っている・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  16. ・・・と下女は肥後訛りの返事をする。「じゃ、ともかくもその栓を抜いてね。罎ごと、ここへ持っておいで」「ねえ」 下女は心得貌に起って行く。幅の狭い唐縮緬をちょきり結びに御臀の上へ乗せて、絣の筒袖をつんつるてんに着ている。髪だけは一種異様・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  17. ・・・日本というものの独自性の或る面、外来語でも何でもいつしか自国語にしてしまって、便利なように訛りさえして、日常の便利につかうところに、寧ろ示されてさえいると思えるが如何だろう。 文章のわかりやすさ、無制限に数の多い漢字を整理し、複雑な仮名・・・<宮本百合子「今日の文章」青空文庫>
  18. ・・・ ござんす、というところがいく分鼻にかかる訛りを響かせながら、坐っているみんなに挨拶するようにして徳田球一が入って来た。一方の窓を背にして置かれていた小机の前に坐った。「どうも今日はお忙しいところをすみませんでした」 女のひとた・・・<宮本百合子「風知草」青空文庫>
  19. ・・・須磨子の日向訛りが商人に通ぜぬので、用が弁ぜずにすごすご帰ることが多い。 お佐代さんは形ふりに構わず働いている。それでも「岡の小町」と言われた昔の俤はどこやらにある。このころ黒木孫右衛門というものが仲平に逢いに来た。もと飫肥外浦の漁師で・・・<森鴎外「安井夫人」青空文庫>