なみ‐う・つ【波打つ】例文一覧 4件

  1. ・・・されどその幻に似て遠きかなたに浮かべるさまは年若き者の夢想を俤にして希望という神の住みたもうがごとく、青年の心これに向かいてはただ静かに波打つのみ。 林の貫きて真直に通う路あり、車もようよう通い得るほどなれば左右の梢は梢と交わり、夏は木・・・<国木田独歩「わかれ」青空文庫>
  2. ・・・ 深い紺碧をたたえてとうとうとはて知らず流れ行く其の潮は、水底の数知れぬ小石の群を打ちくだき、岩を噛み、高く低く波打つ胸に、何処からともなく流れ入った水沫をただよわせて、蒼穹の彼方へと流れ去る。 此の潮流を人間は、箇人主義又は利己主・・・<宮本百合子「大いなるもの」青空文庫>
  3. ・・・これは男よりも女の方が細かく、正直に、同一の物に向っても或る時は極端に悪く、或る時はこの上もなく可愛いという、感情の大きな動揺が波打つことによって、その本心が何処にあるかを知ろうとすること、それに就いては男よりも、女がもっと深く屡々反省する・・・<宮本百合子「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」青空文庫>
  4. ・・・遽しい通行人の波打つ帽子の水準から、一寸高く頂を擡げている一つの婦人帽である。その帽子は、他のどれものように、右側の流れに乗ってこちらの鋪道にも来なければ、左側の潮流に従って京橋の方へとも動かない。丁度、行く群集、来る群集が自ら作る境めの庭・・・<宮本百合子「粗末な花束」青空文庫>