なら◦ん例文一覧 30件

  1. ・・・お酒の罎がずうっとならんでいて、すみの方には大きな鸚鵡の籠が一つ吊下げてあるんです。それが夜の所だと見えて、どこもかしこも一面に青くなっていました。その青い中で――私はその人の泣きそうな顔をその青い中で見たんです。あなただって見れば、きっと・・・<芥川竜之介「片恋」青空文庫>
  2. ・・・もう明るくなったガラス戸の外には、霜よけの藁を着た芭蕉が、何本も軒近くならんでいる。書斎でお通夜をしていると、いつもこの芭蕉がいちばん早く、うす暗い中からうき上がってきた。――そんなことをぼんやり考えているうちに、やがて人が減って書斎の中へ・・・<芥川竜之介「葬儀記」青空文庫>
  3. ・・・ K市街地の町端れには空屋が四軒までならんでいた。小さな窓は髑髏のそれのような真暗な眼を往来に向けて開いていた。五軒目には人が住んでいたがうごめく人影の間に囲炉裡の根粗朶がちょろちょろと燃えるのが見えるだけだった。六軒目には蹄鉄屋があっ・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  4. ・・・三人はクララの立っている美しい芝生より一段低い沼地がかった黒土の上に単調にずらっとならんで立っていた――父は脅かすように、母は歎くように、男は怨むように。戦の街を幾度もくぐったらしい、日に焼けて男性的なオッタヴィアナの顔は、飽く事なき功名心・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  5. ・・・そしてその学校の行きかえりにはいつでもホテルや西洋人の会社などがならんでいる海岸の通りを通るのでした。通りの海添いに立って見ると、真青な海の上に軍艦だの商船だのが一ぱいならんでいて、煙突から煙の出ているのや、檣から檣へ万国旗をかけわたしたの・・・<有島武郎「一房の葡萄」青空文庫>
  6. ・・・通らずともの事だけれど、なぜかまた、わざとにも、そこを歩行いて、行過ぎてしまってから、まだ死なないでいるって事を、自分で確めて見たくてならんのでしたよ。 危険千万。 だって、今だから話すんだけれど、その蚊帳なしで、蚊が居るッていう始・・・<泉鏡花「女客」青空文庫>
  7. ・・・疾くよくならんでどうするものか」「はい」「それでは御得心でございますか」 腰元はその間に周旋せり。夫人は重げなる頭を掉りぬ。看護婦の一人は優しき声にて、「なぜ、そんなにおきらいあそばすの、ちっともいやなもんじゃございませんよ・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  8. ・・・俺が覚えてからも、止むを得ん凶事で二度だけは開けんければならんじゃった。が、それとても凶事を追出いたばかりじゃ。外から入って来た不祥はなかった。――それがその時、汝の手で開いたのか。侍女 ええ、錠の鍵は、がっちりささっておりましたけれど・・・<泉鏡花「紅玉」青空文庫>
  9. ・・・省作もそろそろ起きねばならんでなお夜具の中でもさくさしている。すぐ起きる了簡ではあるが、なかなかすぐとは起きられない。肩が痛む腰が痛む、手の節足の節共にきやきやして痛い。どうもえらいくたぶれようだ。なあに起きりゃなおると、省作は自分で自分を・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  10. ・・・おれはえらい者にならんでもよいと云うのが間違っている。えらい者になる気が少しもなくても、人間には向上心求欲心が必要なのだ。人生の幸福という点よりそれが必要なのだ。向上心の弱い人は、生命を何物よりも重んずることになる。生命を極端に重んずるから・・・<伊藤左千夫「浜菊」青空文庫>
  11. ・・・西洋ふうの建物がならんでいて、通りには、柳の木などが植わっていました。けれども、なんとなく静かな町でありました。 さよ子はその街の中を歩いてきますと、目の前に高い建物がありました。それは時計台で、塔の上に大きな時計があって、その時計のガ・・・<小川未明「青い時計台」青空文庫>
  12. ・・・に古びていましたけれど、額ぎわを斬られて血の流れたのや、また青い顔をして、口から赤い炎を吐いている女や、また、顔が六つもあるような人間の気味悪いものの外に、鳥やさるや、ねこなどの顔を造ったものが幾つもならんでいたからです。片方の中には、あめ・・・<小川未明「空色の着物をきた子供」青空文庫>
  13. ・・・に自分がそれを、言ったことについては何も感じないらしく、またいろいろその娘の話をしながら最後に、「あの娘はやっぱりあのお婆さんが生きていてやらんことには、――あのお婆さんが死んでからまだ二た月にもならんでなあ」と嘆じて見せるのだった。・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  14. ・・・今日一つ原に会ってこの新聞を見せてやらなければならん」「無闇な事も出来ますまいが、今度の設計なら決して高い予算じゃ御座いませんよ、何にしろあの建坪ですもの、八千円なら安い位なものです」「いやその安価のが私ゃ気に喰わんのだが、先ず御互・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  15. ・・・においては反復熟読して暗記するばかりに読み味わうべきものである。 一度通読しては二度と手にとらぬ書物のみ書庫にみつることは寂寞である。 自分の職能の専門のための読書以外においては、「物識り」にならんがために濫読することは無用のことで・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  16. ・・・十四年までは、病気がよくならんのでブラ/\して暮してしまった。十五年十一月、文芸戦線同人となった。それ以来、文戦の一員として今日に到っている。短篇集に、「豚群」と「橇」がある。<黒島伝治「自伝」青空文庫>
  17. ・・・そこには、ちゃんといろんな御ちそうのお皿がならんでいました。 ウイリイは犬からよく言われて来たので、一ばんはじめの一皿だけたべて、あとのお皿へはちっとも手をつけませんでした。 御飯がすむと、王女は方々の部屋々々を見せてくれました。何・・・<鈴木三重吉「黄金鳥」青空文庫>
  18. ・・・その雑誌の広告が新聞に出て、その兵隊さんの名前も、立派な小説家の名前とならんでいるのを見たときは、私は、六年まえ、はじめて或る文芸雑誌に私の小品が発表された、そのときの二倍くらい、うれしかった。ありがたいと思った。早速、編輯者へ、千万遍のお・・・<太宰治「鴎」青空文庫>
  19. ・・・青扇は僕とならんでソファに腰をおろしてから、隣りの部屋へ声をかけたのである。 水兵服を着た小柄な女が、四畳半のほうから、ぴょこんと出て来た。丸顔の健康そうな頬をした少女であった。眼もおそれを知らぬようにきょとんと澄んでいた。「おおや・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  20. ・・・一同座敷の片側へ一列にならんで順々拝が始まる。自分も縁側へ出て新しく水を入れた手水鉢で手洗い口すすいで霊前にぬかずき、わが名を申上げて拍手を打つと花瓶の檜扇の花びらが落ちて葡萄の上にとまった。いちばん御拝の長かったは母上で、いちばん神様の御・・・<寺田寅彦「祭」青空文庫>
  21. ・・・それはハワイの写真で、汽船が沢山ならんでいる海の景色や、白い洋服を着てヘルメット帽をかぶった紳士やがあった。その紳士は林のお父さんで、紳士のたっているうしろの西洋建物の、英語の看板のかかった商店が、林の生れたハワイの家だということであった。・・・<徳永直「こんにゃく売り」青空文庫>
  22. ・・・ そばにならんですわって、竹ばしをけずっている母親が、びっくりしてきく。三吉は首をふって、ごまかすために自分の本箱のところへいって、小野からの手紙などとって、仕事場にもどってくる。――どうして、若い女にみられるのが、こんなにはずかしいだ・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  23. ・・・いうご注文でありましたが、その当時は何か差支があって、――岡田さんの方が当人の私よりよくご記憶と見えてあなたがたにご納得のできるようにただいまご説明がありましたが、とにかくひとまずお断りを致さなければならん事になりました。しかしただお断りを・・・<夏目漱石「私の個人主義」青空文庫>
  24. ・・・三日ほど奈良に滞留の間は幸に病気も強くならんので余は面白く見る事が出来た。この時は柿が盛になっておる時で、奈良にも奈良近辺の村にも柿の林が見えて何ともいえない趣であった。柿などというものは従来詩人にも歌よみにも見離されておるもので、殊に奈良・・・<正岡子規「くだもの」青空文庫>
  25. ○この頃は痛さで身動きも出来ず煩悶の余り精神も常に穏やかならんので、毎日二、三服の痲痺剤を飲んで、それでようよう暫時の痲痺的愉快を取って居るような次第である。考え事などは少しも出来ず、新聞をよんでも頭脳が乱れて来るという始末で、書くこと・・・<正岡子規「病牀苦語」青空文庫>
  26. ・・・ 所々には、水増しの時できた小さな壺穴の痕や、またそれがいくつも続いた浅い溝、それから亜炭のかけらだの、枯れた蘆きれだのが、一列にならんでいて、前の水増しの時にどこまで水が上ったかもわかるのでした。 日が強く照るときは岩は乾いてまっ・・・<宮沢賢治「イギリス海岸」青空文庫>
  27. ・・・ ところがそのときオツベルは、ならんだ器械のうしろの方で、ポケットに手を入れながら、ちらっと鋭く象を見た。それからすばやく下を向き、何でもないというふうで、いままでどおり往ったり来たりしていたもんだ。 するとこんどは白象が、片脚床に・・・<宮沢賢治「オツベルと象」青空文庫>
  28. ・・・ とがめはせぬワ、無理だとも思わぬワ、じゃが、マ、ただながめるだけの事で御あきらめなされと云わねばならん様な様子をあの精女はして居るじゃ。第三の精霊 ――第一の精霊 だれでも一度はうけるあまったるい苦しみじゃナ。そのあったかい涙をこ・・・<宮本百合子「葦笛(一幕)」青空文庫>
  29. ・・・「母はんは、苦労ばかりお仕やはっても、いい智恵の浮ばんお人やし、達やかて、まだ年若やさかい、何の頼りにもならん。 たよりにならない、母親や弟の事を思って、お君はうんざりした様な顔をした。 誰か一人、しっかりとっ附いて居て・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  30. ・・・「厄年や、あかん、今年やなんでも厄介にならんならん。」「そうか、四十二か、まアそこへ掛けやえせ。そして、亀山で酒屋へ這入ってたのかな?」「酒屋や、十五円貰うてたのやが、お前、どっと酒桶へまくれ込んでさ。医者がお前もう持たんと云い・・・<横光利一「南北」青空文庫>