なり‐きん【成(り)金】例文一覧 30件

  1. ・・・そこに大俗物の九頭竜と、頭の悪い美術好きの成金堂脇左門とが、娘でも連れてはいってくる。花田の弟になり切った俺がおまえといっしょにここにいて愁歎場を見せるという仕組みなんだ。どうだ仙人どももわかったか。花田の弟になる俺は生きて行くが、花田の兄・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  2. ・・・が、荒れた厩のようになって、落葉に埋もれた、一帯、脇本陣とでも言いそうな旧家が、いつか世が成金とか言った時代の景気につれて、桑も蚕も当たったであろう、このあたりも火の燃えるような勢いに乗じて、贄川はその昔は、煮え川にして、温泉の湧いた処だな・・・<泉鏡花「眉かくしの霊」青空文庫>
  3. ・・・大抵は悪紙に描きなぐった泥画であるゆえ、田舎のお大尽や成金やお大名の座敷の床の間を飾るには不向きであるが、悪紙悪墨の中に燦めく奔放無礙の稀有の健腕が金屏風や錦襴表装のピカピカ光った画を睥睨威圧するは、丁度墨染の麻の衣の禅匠が役者のような緋の・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  4. ・・・       七 おれの目的、同時にお前の宿願はこうして遂に達せられたわけだが、さて、お前は巨万の金をかかえてどうするかと見ていると、簡単に俗臭紛々たる成金根性を発揮しだした。 上本町に豪壮な邸宅を構えて、一本一万三千円・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  5. ・・・点鉄成金は仙術の事だが、利休は実に霊術を有する天仙の臨凡したのであったのである。一世は利休に追随したのである。人は争って利休の貴しとした物を貴しとした。これを得る喜悦、これを得る高慢のために高慢税を納めることを敢てしたのである、その高慢税の・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  6. ・・・「さあ、おれも成金だぞ。」 その次郎のふざけた言葉を聞くと、私はあわてて、「ばか。それだからお前たちはだめだ。」 としかった。 もはや、私の前には、太郎あてに銀行でつくって来た為替を送ることと、三郎にもこれを知らせること・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  7. ・・・他人の月給をそねみ、生活を批評し、自分の不平、例えば出張旅費の計算で陰で悪口の云い合い、出張成金めとか、奥さんがかおを歪めて、何々さんは出張ばかりで、――うちなんか三日の出張で三十円ためてかえりましたよ。すると一方の奥さんは、うちは出張して・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  8. ・・・これではまるで、そこらにたくさんある当り前の成金と少しも違っていないのですもの。けれども私は、あなたに悪くて、努めて嬉しそうに、はしゃいでいました。いつの間にか私は、あの、いやな「奥様」みたいな形になっていました。あなたは、女中を置こうとさ・・・<太宰治「きりぎりす」青空文庫>
  9. ・・・ 戦争成金のほかは、誰しも今は苦しいのだから、自分ひとりの生活苦は言うまいと思って努めて快活のふうを装っていたが、それでも、あまりに心細くて、或る先輩にあてこんな意味の手紙を書いて出した事がある。 拝啓。この手紙は、あなたに何かお願・・・<太宰治「十五年間」青空文庫>
  10. ・・・所詮あの人は、成金に過ぎない。 おけらというものがある。その人を尊敬し、かばい、その人の悪口を言う者をののしり殴ることによって、自身の、世の中に於ける地位とかいうものを危うく保とうと汗を流して懸命になっている一群のものの謂である。最も下・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  11. ・・・純朴な田舎の人たちに都会の成金どもがやたらに札びらを切って見せて堕落させたなんて言うけれども、それは、あべこべでしょう。都会から疎開して来た人はたいてい焼け出されの組で、それはもう焼かれてみなければわからないもので、ずいぶんの損害を受けてい・・・<太宰治「やんぬる哉」青空文庫>
  12. ・・・何せ相手がグリーンランドの途方もない成金ですから、ありふれたものじゃなかなか承知しないんです。」大学士は葉巻を横にくわえ、雲母紙を張った天井を、斜めに見上げて聴いていた。「たびたびご迷惑で、まことに恐れ入りますが、いかがなも・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>
  13. ・・・大小の軍需成金たちは、戦時利得税や、財産税をのがれるために濫費、買い漁りをしているから、インフレーションは決して緩和されない。却って、最近悪化して来ている。いくら、待遇改善しても、月給は物価に追いつく時は決してない。これがインフレーションの・・・<宮本百合子「合図の旗」青空文庫>
  14. ・・・本年ぐらいから、統計の上にもはっきり、専門学校を受験する女子学生の層がかわって、新円成金の娘さんがふえて来ています。普通の家庭の娘さんはアルバイトを考えずに、専門学校の生活を考えることは不可能になりました。アルバイトを二つもって医学の勉強を・・・<宮本百合子「新しい卒業生の皆さんへ」青空文庫>
  15. ・・・商売というものの性質も昨今は急速に変って来ているのだし、従って明治時代に描かれたような個人の立身出世の夢や、この一二年前のような戦時成金への夢想も既に現実のよりどころは喪っている。自分一人の儲け、自分一人の立身出世、それを狙うことの愚かさは・・・<宮本百合子「今日の耳目」青空文庫>
  16. ・・・何故なら、私たちの日々の暮しの経験では、成程この頃成金になった人々もある。時を得顔の、いろいろの特権をもって暮らしている人々もある。けれども、私たちの大部分はどうして暮しているかと云えば、決して市内でも、クラクソンを鳴らしてよいという別仕立・・・<宮本百合子「今日の生活と文化の問題」青空文庫>
  17. ・・・ この頃は、黄金のこはぜというような単純素朴な、云わば庶民的成金の夢物語は人々の耳に入らないけれども、本が大変売れるということにつれていろんな話を又聞きする。たとえば、本屋へ電話がかかって、四十円ほど本を見つくろって届けて下さいと云った・・・<宮本百合子「今日の読者の性格」青空文庫>
  18. ・・・旧来の戦争は文化の面を外見上からも萎縮させたが、今日ではそれが近代性において高度化して、戦争とともに一部に成金が生じる現象は、文化の分野にも見られるようになった。永年の窮迫と不遇から時局によって世間的に一躍し、温泉へ行って忙しい忙しいと小説・・・<宮本百合子「今日の文学と文学賞」青空文庫>
  19. ・・・日清、日露の両戦争の後には漱石がそれ等に対して猛烈な反撥を示した成金が現れ、実業家も権力に加った。日本で文学の仕事に従った人が同時に時の権力の精神的、文化的指導者であったのは、極めて短い開化期の文化建設の時期に於てのみであって、明治文学が口・・・<宮本百合子「今日の文学の鳥瞰図」青空文庫>
  20. ・・・きょうの宮さまとよばれる有閑な中年の男性たちが、あたりまえの一市民のようであって決してそうでないさかさ成金のスリルを愉しむのは、むしろあたりまえであろう。人間の笑いの中には一般人にとってあたり前のことが、どのようにあたりまえでなく行われるか・・・<宮本百合子「ジャーナリズムの航路」青空文庫>
  21. ・・・階級としての富農や成金に対して断然指導勢力を持ってるのはプロレタリアートじゃないか。 ――そうだ。特に五ヵ年計画の三年目になってる現在では、国内の問題でプロレタリアートが階級的に揺ぐ点なんか在りようない状態だ。が、忘れるな。プロレタリア・・・<宮本百合子「正月とソヴェト勤労婦人」青空文庫>
  22. ・・・戦時利得税をいずれ払わなくてはならず、しかも、大財閥に対してのように、政府が様々の法式を考案して、とり上げた金をまた元に戻してよこしてくれる当もない。戦時成金ばかりが、昨今、使ってしまえという性質の金銭をちらしているのである。 つい先頃・・・<宮本百合子「人民戦線への一歩」青空文庫>
  23.  私の生活も随分夥しい或は根本的な変化をうけていますが、それはおそらく、この四年の間に成金になりもしなかった大多数の国民が、その日々で経て来ている、その変りかただと思います。事の端々では、いろいろ特別な点もあるわけですが、し・・・<宮本百合子「生活的共感と文学」青空文庫>
  24. ・・・ 彼女が active に家のことをせず、成金くさくなって居るのは、憐れなふてくされ、と云えよう。 情があって、頭のない女のあわれさ。          ――○―― 中江さんの場合、 彼女の快活そうな様子はどこから来るか・・・<宮本百合子「一九二三年夏」青空文庫>
  25. ・・・皇太子が、唯一の御馳走は、カレーライスだと思っているということについて、人々は小生意気で早熟な闇成金の息子たちに対するのとはちがった、ほほ笑みをもらすのである。皇后が動物園へ行って、おもしろそうに笑って象を見ている、その姿に、世間を知らない・・・<宮本百合子「戦争はわたしたちからすべてを奪う」青空文庫>
  26. ・・・しかし、同じ戦敗のドイツの中でも、そしてあの世界史的なドイツのインフレーションの中でも、第一次大戦によって軍需成金となった新興財閥は存在した。それら一握りの新マーク階級の人々は彼等の特権にとって有利でない人民的な生産様式にドイツの社会が進化・・・<宮本百合子「それらの国々でも」青空文庫>
  27. ・・・そして、日本民族の運命を破滅させた戦争によって財を蓄え、社会的地位をのしあげた新興階級――漱石はこういう社会層を成金とよんだ――の子弟達が、人間となった天皇の子息とひとつ学校に入れるという親の感激によって、入学して来ているということ。学習院・・・<宮本百合子「日本の青春」青空文庫>
  28. ・・・船成金ができて、金のこはぜの足袋をはいたとさわがれたが、一般の人民生活は、それに便乗してせめても銀のこはぜの足袋でもはいただろうか。大正九年の大パニックで破産したのは郵船の株主ではなかった。米一升が五十銭を突破して米騒動がおこった。やっぱり・・・<宮本百合子「便乗の図絵」青空文庫>
  29. ・・・がおかれ、他の一端には「成金」がおかれていたことも、最も複雑な意味で当時の日本風俗の一断面を語っていると云えるのである。 今日の日本の諸風俗のありようというものは、つい先頃までは風俗描写の小説をもってリアリズムの文豪と称した一部の作家た・・・<宮本百合子「風俗の感受性」青空文庫>
  30. ・・・と、そこに営まれている社会の暗い恐るべく暴虐なツァーの封建的絶対制、その上に急に花咲き出した資本主義搾取の二重のおもしの下にあって苦しみ、人生を浪費する人民の悲劇を見つづけるロシアの作家たちは、植民地成金になった十九世紀から二十世紀初頭のイ・・・<宮本百合子「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」青空文庫>