な・る【成る/為る】例文一覧 30件

  1. ・・・思想家としてのマルクスの功績は、マルクス同様資本王国の建設に成る大学でも卒業した階級の人々が翫味して自分たちの立場に対して観念の眼を閉じるためであるという点において最も著しいものだ。第四階級者はかかるものの存在なしにでも進むところに進んで行・・・<有島武郎「宣言一つ」青空文庫>
  2. ・・・稿の成ると共に直ちにこれを東京に郵送して先生の校閲を願ったが、先生は一読して直ちに僕が当時の心状を看破せられた。返事は折返し届いて、お前の筆端には自殺を楽むような精神が仄見える。家計の困難を悲むようなら、なぜ富貴の家には生れ来ぬぞ……その時・・・<泉鏡花「おばけずきのいわれ少々と処女作」青空文庫>
  3. ・・・ その内に思案して、明して相談をして可いと思ったら、謂って見さっせえ、この皺面あ突出して成ることなら素ッ首は要らねえよ。 私あしみじみ可愛くってならねえわ。 それからの、ここに居る分にゃあうっかり外へ出めえよ、実は、」 と声・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  4. ・・・僕は、あの時成る程離縁問題が出た筈やと思た。」「成る程、これからがいよいよ人の気が狂い出すという幕だ、な。」「それが、さ、君忘れもせぬ明治三十七年八月の二十日、僕等は鳳凰山下を出発し、旅順要塞背面攻撃の一隊として、盤龍山、東鷄冠山の・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  5. ・・・僅かに『神稲水滸伝』がこれより以上の年月を費やしてこれより以上の巻を重ねているが、最初の構案者たる定岡の筆に成るは僅かに二篇十冊だけであって爾余は我が小説史上余り認められない作家の続貂狗尾である。もっともアレだけの巻数を重ねたのはやはり相当・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  6. ・・・とある其事である(約翰、単に神の子たるの名称を賜わる事ではない、実質的に神の子と為る事である、即ち潔められたる霊に復活体を着せられて光の子として神の前に立つ事である、而して此事たる現世に於て行さるる事に非ずしてキリストが再び現われ給う時に来・・・<内村鑑三「聖書の読方」青空文庫>
  7. ・・・わる事ではない、実質的に神の子と為る事である、即ち潔められたる霊に復活体を着せられて光の子として神の前に立つ事である、而して此事たる現世に於て行さるる事に非ずしてキリストが再び現われ給う時に来世に於て成る事であるは言わずして明かである、平和・・・<内村鑑三「聖書の読方」青空文庫>
  8. ・・・こう成るとは、ちゃんと見通していたのだ。 良いか。言ってやるぞ。……お前から手を引いた時、おれは既にお前の「今日ある」を予想していたのだ。だからこそ、手を引いた。お前の方では、おれを追い出してやったと、思っているらしいが、違う。おれの方・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  9. ・・・今に楽になりますよ、成る丈け安静にして居なさい」 これは毎日おきまりの様に聞く言葉でした。そして、医師は病人の苦しんでいるのを見かねて注射をします。再びまた氷で心臓を冷すことになりました。 その頃から、兄を呼べとか姉を呼べとか言い出・・・<梶井久「臨終まで」青空文庫>
  10. ・・・と誰かが気の無い返事を為る。「全くあの男ほど気の毒な人はないよ」と老人は例の哀れっぽい声。 気の毒がって下さる段は難有い。然し幸か不幸か、大河という男今以て生ている、しかも頗る達者、この先何十年この世に呼吸の音を続けますことやら。憚りな・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  11. ・・・ 不思議なもので一度、良心の力を失なうと今度は反対に積極的に、不正なこと、思いがけぬ大罪を成るべく為し遂んと務めるものらしい。 自分はそっとこの革包を私宅の横に積である材木の間に、しかも巧に隠匿して、紙幣の一束を懐中して素知らぬ顔を・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  12. ・・・という法則でなく、「と成る」という法則にしたがうものであり、その結果として両者融合せる新しき「いのち」が生誕するのだ。 子どもの生まれることを恐れる性関係は恋愛ではない。「汝は彼女と彼女の子とを養わざるべからず」 学生時代私はノ・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  13. ・・・それが果して成るか成らぬか。そこに脊骨が絞られるような悩みが……」「ト云うと天覧を仰ぐということが無理なことになるが、今更野暮を云っても何の役にも立たぬ。悩むがよいサ。苦むがよいサ。」と断崖から取って投げたように言って、中村は豪然と・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  14. ・・・ 成る程、俺は独房にいる。然し、決して「独り」ではないんだ。     せき、くさめ、屁 屁の音で隣りの独房にいる同志の健在なことを知る――三・一五の同志の歌で、シャバにいたとき、俺は何かの雑誌でそれを読んだことがあった。・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  15. ・・・の戸開けて今鳴るは一時かと仰ぎ視ればお月さまいつでも空とぼけてまんまるなり 脆いと申せば女ほど脆いはござらぬ女を説くは知力金力権力腕力この四つを除けて他に求むべき道はござらねど権力腕力は拙い極度、成るが早いは金力と申す条まず積ってもごろ・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  16. ・・・「どれ、そう温順しくしておばあさんの側に遊んでいてくれると、御褒美を一つ出さずば成るまいテ」 と言いながらおげんは菓子を取出して来て、それを三吉に分け、そこへ顔を見せたお新の前へも持って行った。「へえ、姉さんにも御褒美」 こ・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  17. ・・・彼の両親は、長い間散々種々やって見た揚句、到頭、彼もいつかは一人前の男に成るだろうと云う希望を、すっかり棄てて仕舞いました。一体、のらくら者と云うものは、家の者からこそ嫌がられますけれども、他処の人々は、誰にでも大抵気に入られると云う得を持・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  18. ・・・よろずのもの、これに拠りて成る。ふっと私は、忘れた歌を思い出したような気がした。たあいない風景ではあったが、けれども、私には忘れがたい。 あの夜の女工さんは、あのいい声のひとであるか、どうかは、それは、知らない。ちがうだろうね。・・・<太宰治「I can speak」青空文庫>
  19. ・・・ 映画の光学的映像より成る一つ一つのショットに代わるものが、連句では実感的心像で構成された長句あるいは短句である。そうしてこれらの構成要素はそのモンタージュのリズムによってあるいは急にあるいはゆるやかなる波動を描いて行く、すなわち音楽的・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  20. ・・・わたくしは此のたびの草稿に於ては、明治年間の東京を説くに際して、寡聞の及ぶかぎり成るべく当時の人の文を引用し、之に因って其時代の世相を窺知らしめん事を欲しているのである。 松子雁の饒歌余譚に曰く「根津ノ新花街ハ方今第四区六小区中ノ地ニ属・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  21. ・・・一段畢ると家の内はがやがやと騒がしく成る。煙草の烟がランプをめぐって薄く拡がる。瞽女は危ふげな手の運びようをして撥を絃へ挿んで三味線を側へ置いてぐったりとする。耳にばかり手頼る彼等の癖として俯向き加減にして凝然とする。そうかと思うとランプを・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  22. ・・・傍観者の態度に甘んずる学者の局外の観察から成る規則法則乃至すべての形式や型のために我々生活の内容が構造されるとなると少しく筋が逆になるので、我々の実際生活がむしろ彼ら学者に向って研究の材料を与えその結果として一種の形式を彼らが抽象する事がで・・・<夏目漱石「中味と形式」青空文庫>
  23. ・・・とにかく僕は、無用のおしゃべりをすることが嫌いなので、成るべく人との交際を避け、独りで居る時間を多くして居る。いちばん困るのは、気心の解らない未知の人の訪問である。それも用件で来るのは好いのだけれども、地方の文学青年なんかで、ぼんやり訪ねて・・・<萩原朔太郎「僕の孤独癖について」青空文庫>
  24. ・・・そんなことを為る奴もあるが、俺の方ではチャンと見張りしていて、そんな奴あ放り出してしまうんだ。それにそう無暗に連れて来るって訳でもないんだ。俺は、お前が菜っ葉を着て、ブル達の間を全で大臣のような顔をして、恥しがりもしないで歩いていたから、附・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  25. ・・・無理に強うれば虚偽と為る。教育家の注意す可き所なり。又嫁して後は我親の家に行くことも稀なる可し。況して他の家へも大方は自から行かずして使を以て音問す可しと言う。是れも先ず以て無用の注意なるが如し。女子結婚の後は自から其家事に忙しく、殊に子供・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  26. ・・・因て成るべく端折って記せば暫時の御辛抱を願うになん。 凡そ形あれば茲に意あり。意は形に依って見われ形は意に依って存す。物の生存の上よりいわば、意あっての形形あっての意なれば、孰を重とし孰を軽ともしがたからん。されど其持前の上より・・・<二葉亭四迷「小説総論」青空文庫>
  27. ・・・どうにか仕度いと思わずにはいられなく成る。 勿論、国として、ロシアが受けるべき批評は沢山あるだろう。けれども、何の為に、幾千万の人間が、まるで世界から見すてられ、一滴の愛もない飢餓の裡に犬死にをしなければならないのか。 世界は、今真・・・<宮本百合子「アワァビット」青空文庫>
  28. ・・・予は僅に二三の京阪の新聞紙を読んで、国の中枢の崇重しもてはやす所の文章の何人の手に成るかを窺い知るに過ぎぬので、譬えば簾を隔てて美人を見るが如くである。新聞紙の伝うる所に依れば、先ず博文館の太陽が中天に君臨して、樗牛が海内文学の柄を把って居・・・<森鴎外「鴎外漁史とは誰ぞ」青空文庫>
  29. ・・・ところがあの通りこの上もない出世をして、重畳の幸福と人の羨むにも似ず、何故か始終浮立ぬようにおくらし成るのに不審を打ものさえ多く、それのみか、御寵愛を重ねられる殿にさえろくろく笑顔をお作りなさるのを見上た人もないとか、鬱陶しそうにおもてなし・・・<若松賤子「忘れ形見」青空文庫>
  30. ・・・ この書の成るに当たって、永い間本を借してくだすった井上先生、大塚先生、小山内薫氏、本を送ってくだすった原太三郎氏、及び本の捜索に力を借してくだすった阿部次郎氏、岩波茂雄氏に厚くお礼を申し上げる。   大正四年八月鵠沼にて・・・<和辻哲郎「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」青空文庫>