なん‐かい【難解】例文一覧 16件

  1. ・・・保吉は英吉利語の教科書の中に難解の個所を発見すると、必ず粟野さんに教わりに出かけた。難解の、――もっとも時間を節約するために、時には辞書を引いて見ずに教わりに出かけたこともない訣ではない。が、こう云う場合には粟野さんに対する礼儀上、当惑の風・・・<芥川竜之介「十円札」青空文庫>
  2. ・・・藤岡にはコオエンの学説よりも、待合の方が難解なりしならん。恒藤はそんな事を知らざるに非ず。知って而して謹厳なりしが如し。しかもその謹厳なる事は一言一行の末にも及びたりき。例えば恒藤は寮雨をせず。寮雨とは夜間寄宿舎の窓より、勝手に小便を垂れ流・・・<芥川竜之介「恒藤恭氏」青空文庫>
  3. ・・・その間吉田は自然その話よりも話をする女の顔の方に深い注意を向けないではいられなかったのであるが、その女にはそういう吉田の顔が非常に難解に映るのかさまざまに吉田の気を測ってはしかも非常に執拗にその話を続けるのであった。そして吉田はその話が次の・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  4. ・・・ しかし、演説の言葉、形式が、百姓には、どうも難解である。研究会で、理論闘争をやるほどのものではないにしろ、なお、その臭味がある。そこで、百姓は、十分その意味を了解することが出来ない。「吾々、無産階級は……」と云う。既に、それが、一・・・<黒島伝治「選挙漫談」青空文庫>
  5. ・・・彼には清三がいろ/\むずかしいことを知って居り、難解な外国の本が読めるのが、丁度自分にそれだけの能力が出来たかのように嬉しいのだった。そして、ひまがあると清三のそばへ寄って行って話しかけた。「独逸語。」「……独逸語のうちでもこれは大・・・<黒島伝治「老夫婦」青空文庫>
  6. ・・・のみならず現にその知識みずからが、まだこの上幾らでも難解の疑問を提出して休まない。自己というその内容は何と何とだ。自己の生を追うた行止りはどうなるのだ。ことに困るのは、知識で納得の行く自己道徳というものが、実はどうしてもまだ崇高荘厳というよ・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  7. ・・・鴎外を難解な、深遠のものとして、衆俗のむやみに触れるべからずと、いかめしい禁札を張り出したのは、れいの「勉強いたして居ります。」女史たち、あるいは、大学の時の何々教授の講義ノオトを、学校を卒業して十年のちまで後生大事に隠し持って、機会在る毎・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  8. ・・・赤児の難解に多少の興を覚え、こいつをひとつと思って原稿用紙をひろげただけのことである。それゆえこの小説の臓腑といえば、あるひとりの男の三歳二歳一歳の思い出なのである。その余のことは書かずともよい。思い出せば私が三つのとき、というような書きだ・・・<太宰治「玩具」青空文庫>
  9. ・・・性格も、どこか難解なところがある。わからないところをたくさん持っている。暗い性質なのに、無理に明るく見せようとしているところも見える。しかし、なんといっても魅かれる女のひとだ。学校の先生なんてさせて置くの惜しい気がする。お教室では、まえほど・・・<太宰治「女生徒」青空文庫>
  10. ・・・このコリント後書は、神学者たちにとって、最も難解なものとせられている様であるが、私たちには、何だか、一ばんよくわかるような気がする。高揚と卑屈の、あの美しい混乱である。他の本で読んだのだが、パウロは、当時のキリスト党から、ひどい個人攻撃を受・・・<太宰治「パウロの混乱」青空文庫>
  11. ・・・難解「太初に言あり。言は神と偕にあり。言は神なりき。この言は太初に神とともに在り。万の物これに由りて成り、成りたる物に一つとして之によらで成りたるはなし。之に生命あり。この生命は人の光なりき。光は暗黒に照る。而して暗黒は之を・・・<太宰治「もの思う葦」青空文庫>
  12. ・・・あの先生、口髭をはやしていやがるけど、あの口髭の趣味は難解だ。うん、どだいあの野郎には、趣味が無いのかも知れん。うん、そうだ、評論家というものには、趣味が無い、したがって嫌悪も無い。僕も、そうかも知れん。なさけなし。しかし、口髭……。口髭を・・・<太宰治「渡り鳥」青空文庫>
  13. ・・・そのおかげで私は電車の中で難解の書物をゆっくり落ち付いて読みふける事ができる。宅にいれば子供や老人という代表的田舎者がいるので困るが、電車の中ばかりは全く閑静である。このような静かさは到底田舎では得られない静かさである。静か過ぎてあまりにさ・・・<寺田寅彦「田園雑感」青空文庫>
  14. ・・・ ニイチェの著書は、おそらく人間の書いた書物の中で、最も深遠で、且つ最も難解なものの一つであらう。その深遠な理由は、思想が人間性の苦悩の底へ、無限に深くもぐりこんで抜けないほどに根を持つて居るのと、多岐多様の複雑した命題が、至るとこ・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  15. ・・・ゆえにそれは、どんなに馬鹿げていても、難解でも必ず心の深部において万人の共通である。卑怯な成人たちに畢竟不可解なだけである。四 これは田園の新鮮な産物である。われらは田園の風と光の中からつややかな果実や、青い蔬菜といっしょにこれらの・・・<宮沢賢治「『注文の多い料理店』新刊案内」青空文庫>
  16. ・・・彼は長い間の難解な問題が思わずここに釈然とした思いがした」ところが、この作品のヒューマニズムの帰結なのである。「あらくれ」に同じ作者によって書かれている自分の家系の物語、愛子物語をあわせ読むと、舟橋氏のヒューマニズムが一般人間性の観・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>