なん‐だ【何だ】例文一覧 30件

  1. ・・・「おい、M!」 僕はいつかMより五六歩あとに歩いていた。「何だ?」「僕等ももう東京へ引き上げようか?」「うん、引き上げるのも悪くはないな。」 それからMは気軽そうにティッペラリイの口笛を吹きはじめた。・・・<芥川竜之介「海のほとり」青空文庫>
  2. ・・・「戸沢さんは何だって云うんです?」「やっぱり十二指腸の潰瘍だそうだ。――心配はなかろうって云うんだが。」 賢造は妙に洋一と、視線の合う事を避けたいらしかった。「しかしあしたは谷村博士に来て貰うように頼んで置いた。戸沢さんもそ・・・<芥川竜之介「お律と子等と」青空文庫>
  3. ・・・B 何だい。もうその時の挨拶まで工夫してるのか。A まあさ。「とうとう飽きたね」と君に言うね。それは君に言うのだから可い。おれは其奴を自分には言いたくない。B 相不変厭な男だなあ、君は。A 厭な男さ。おれもそう思ってる。・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  4. ・・・ ちょっと立どまって、大爺と口を利いた少いのが、続いて入りざまに、「じゃあ、何だぜ、お前さん方――ここで一休みするかわりに、湊じゃあ、どこにも寄らねえで、すぐに、汽船だよ、船だよ。」 銀鎖を引張って、パチンと言わせて、「出帆・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  5. ・・・二「何だ、もう帰ったのか。」「ええ、」「だってお気の毒様だと云うじゃないか。」「ほんとに性急でいらっしゃるよ。誰も帰ったとも何とも申上げはしませんのに。いいえ、そうじゃないんですよ。お気の毒様だと申しましたのは、・・・<泉鏡花「縁結び」青空文庫>
  6. ・・・「そうですねイ、わたし何だか夢の様な気がするの。今朝家を出る時はほんとに極りが悪くて……嫂さんには変な眼つきで視られる、お増には冷かされる、私はのぼせてしまいました。政夫さんは平気でいるから憎らしかったわ」「僕だって平気なもんですか・・・<伊藤左千夫「野菊の墓」青空文庫>
  7. ・・・と、お君のおきまり文句らしいのを聴くと、僕が西洋人なら僕の教えた片言を試みるのだろうと思われて、何だか厭な、小癪な娘だという考えが浮んだ。僕はいい加減に見つくろって出すように命じ、巻煙草をくわえて寝ころんだ。 まず海苔が出て、お君がちょ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  8. ・・・ こうなると、人間というものは妙に引け身になるもので、いつまでも一所にいると、何だか人に怪まれそうで気が尤める。で、私は見たくもない寺や社や、名ある建物などあちこち見て廻ったが、そのうちに足は疲れる。それに大阪鮨六片でやっと空腹を凌いで・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  9. ・・・ヒョロして、あの大きな体を三味線の上へ尻餅突いて、三味線の棹は折れる、清元の師匠はいい年して泣き出す、あの時の様子ったらなかったぜ、俺は今だに目に残ってる……だが、あんな元気のよかった父が死んだとは、何だか夢のようで本当にゃならねえ、一体何・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  10. ・・・ 五代は丹造のきょときょとした、眼付きの野卑な顔を見て、途端に使わぬ肚をきめたが、八回無駄足を踏ませた挙句、五時間待たせた手前もあって、二言三言口を利いてやる気になり、「――お前の志望はいったい何だ?」 と、きくと丹造はすかさず、・・・<織田作之助「勧善懲悪」青空文庫>
  11. ・・・「何だ、馬鹿奴! お先真暗で夢中に騒ぐ!」と、こうだ。何処を押せば其様な音が出る? ヤレ愛国だの、ソレ国難に殉ずるのという口の下から、如何して彼様な毒口が云えた? あいらの眼で観ても、おれは即ち愛国家ではないか、国難に殉ずるのではないか? ・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  12. ・・・お前のいう通り若くて上品で、それから何だッけな、うむその沈着いていて気性が高くて、まだ入用ならば学問が深くて腕が確かで男前がよくて品行が正しくて、ああ疲労れた、どこに一箇所落ちというものがない若者だ。 たんとそんなことをおっしゃいまし。・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  13. ・・・中央に構えていた一人の水兵、これは酒癖のあまりよくないながら仕事はよくやるので士官の受けのよい奴、それが今おもしろい事を始めたところですと言う。何だと訊ねると、みんな顔を見合わせて笑う、中には目でよけいな事をしゃべるなと止める者もある。それ・・・<国木田独歩「遺言」青空文庫>
  14. ・・・彼は、何だ、こんな男か、と思った。 二人が話している傍へ、通訳が、顔の平べったい、眉尻の下っている一人の鮮人をつれて這入って来た。阿片の臭いが鼻にプンと来た。鰌髭をはやし、不潔な陋屋の臭いが肉体にしみこんでいる。垢に汚れた老人だ。通訳が・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  15. ・・・其後親戚のものから、これを腰にさげて居れば犬が怖れて寄つかぬというて、大きな豹だか虎だかの皮の巾着を貰ったので、それを腰にぶらぶらと下げて歩いたが、何だか怪しいものをさげて居た為めででもあったかして犬は猶更吠えつくようで、しばしば柳屋の前で・・・<幸田露伴「少年時代」青空文庫>
  16. ・・・れへ……金田氏貴公も予て此の七兵衞は御存じだろう、不断はまるで馬鹿だね、始終心の中で何か考えて居って、何を問い掛けてもあい/\と答をする、それが来たので、妙な男で、あゝ来た来た、妙な物を着て来たなア、何だハヽヽ袖無しの羽織見たような物を着て・・・<著:三遊亭円朝 校訂:鈴木行三「梅若七兵衞」青空文庫>
  17. ・・・ 奥さんは子供衆の方にまで気を配りながら、「これ、繁、塾の先生が被入しったに御辞儀しないか――勇、お前はまた何だッてそんなところに立っているんだねえ――真実に、高瀬さん、私も年を取りましたら、気ぜわしくなって困りますよ――」 奥・・・<島崎藤村「岩石の間」青空文庫>
  18. ・・・ すると方々の王さまや王子たちは、何だ、そんなことなら、だれにだって出来ると言って、どんどんおしかけて来ました。 ところが、夜になって、王女のお部屋へとおされて、しばらく王女の顔を見ていると、どんな人でもついうとうと眠くなって、いつ・・・<鈴木三重吉「ぶくぶく長々火の目小僧」青空文庫>
  19. ・・・さっきもあんな工合に、さまざま黒板に書いて、新しい日本の姿というものをお前たちに教えたつもりだが、しかし、どうも、教えたあとで何だか、たまらなく不安で、淋しくなるのだ。僕には何もわかっていないんじゃないか、という気さえして来るのだ。かえって・・・<太宰治「春の枯葉」青空文庫>
  20. ・・・「かわいそうなことをしたね、何だえ、病気は?」「肺病だよ」「それは気の毒なことをしたね」 私はその前に一二度会ったことがあるので、かすかながらもその姿を思い浮かべることができた。私は一番先に思った。「遼陽陥落の日に……日本の・・・<田山花袋「『田舎教師』について」青空文庫>
  21. ・・・ 彼は、何だか、眼前が急に明るくなったように感じられた。腹心の、子飼の弟子ともいうべき子分達に、一人残らず背かれたことは、彼にとって此上ない淋しいことであった。川村にしても、高橋にしても、斎藤にしても、小野にしても、其他十数人の、彼を支・・・<徳永直「眼」青空文庫>
  22. ・・・「あれ」と一人が喫驚したようにいった。「どうした」「何だ」 罪を犯した彼等は等しく耳を欹てた。其一人は頻りに帯のあたりを探って居る。「何だ」「どうした」 他のものは又等しく折返して聞いた。「銭入どうかしっ・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  23. ・・・何と何だい」「何と何だって、たしかにあるんだよ。第一爪をはがす鑿と、鑿を敲く槌と、それから爪を削る小刀と、爪を刳る妙なものと、それから……」「それから何があるかい」「それから変なものが、まだいろいろあるんだよ。第一馬のおとなしい・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  24. ・・・「何だい」と私は急に怒鳴った。すると、私の声と同時に、給仕でも飛んで出て来るように、二人の男が飛んで出て来て私の両手を確りと掴んだ。「相手は三人だな」と、何と云うことなしに私は考えた。――こいつあ少々面倒だわい。どいつから先に蹴っ飛ばす・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  25. ・・・ 吉里は燭台煌々たる上の間を眩しそうに覗いて、「何だか悲アしくなるよ」と、覚えず腮を襟に入れる。「顔出しだけでもいいんですから、ちょいとあちらへおいでなすッて下さい」と、例のお熊は障子の外から声をかけた。「静かにしておくれ。お客・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  26. ・・・即ちこんな苦痛の中に住んでて、人生はどうなるだろう、人生の目的は何だろうなぞという問題に、思想上から自然に走ってゆく。実に苦しい。従ってゆっくりと其問題を研究する余裕がなく、ただ断腸の思ばかりしていた。腹に拠る所がない、ただ苦痛を免れん為の・・・<二葉亭四迷「予が半生の懺悔」青空文庫>
  27. ・・・けれども学校へ行っても何だか張合いがなかった。一年生はまだはいらないし三年生は居ない。居ないのでないもうこっちが三年生なのだが、あの挨拶を待ってそっと横眼で威張っている卑怯な上級生が居ないのだ。そこで何だか今まで頭をぶっつけた低い天井裏が無・・・<宮沢賢治「或る農学生の日誌」青空文庫>
  28. ・・・けれどもそれが何だろう」あらゆるものを投げ出したものに貞操なんか何だ? そして石川という共働者との場合には逃げ出した彼女は、「もっともっと自由な女性を自分の中に自覚していた、たとえ肉体は腐ってもよかった。革命を裏切らず、卑怯者にならずに自分・・・<宮本百合子「新しい一夫一婦」青空文庫>
  29. ・・・ かれらは叫んだ、『何だ古狸!』 そこでかれはだれもかれを信ずるものがないのに失望してますます怒り、憤り、上気あがって、そしてこの一条を絶えず人に語った。 日が暮れかかった。帰路につくべき時になった。かれは近隣のもの三人と同・・・<著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩「糸くず」青空文庫>
  30. ・・・「こいつは運がいい。」と私は思った。しかし時間を勘定してみてやはり一時間ばかり待たなければならない事がわかると、私の心はまた元へ戻り始めた。「何だ、こんな事で埋め合わせをするのか、畜生め。」私は仕方なく三等待合室へはいって行った。見ると質朴・・・<和辻哲郎「停車場で感じたこと」青空文庫>