なん‐ぼく【南北】例文一覧 30件

  1. ・・・それ以来、十八世紀の初期に至るまで、彼が南北両欧に亘って、姿を現したと云う記録は、甚だ多い。最も明白な場合のみを挙げて見ても、千五百七十五年には、マドリッドに現れ、千五百九十九年には、ウインに現れ、千六百一年にはリウベック、レヴェル、クラカ・・・<芥川竜之介「さまよえる猶太人」青空文庫>
  2. ・・・もしまたしまいまで御聞きになった上でも、やはり鶴屋南北以来の焼酎火のにおいがするようだったら、それは事件そのものに嘘があるせいと云うよりは、むしろ私の申し上げ方が、ポオやホフマンの塁を摩すほど、手に入っていない罪だろうと思います。何故と云え・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  3. ・・・ いろいろの乞食が、東西、南北、その国の都をいつも往来していますので、その国の人も、これには気づきませんでした。 乞食に姿をかえたお姫さまの使いのものは、いろいろなうわさを聞くことを得ました。そして、そのものは、急いで帰りました。・・・<小川未明「赤い姫と黒い皇子」青空文庫>
  4. ・・・ 老臣は船の上で、夜になれば空の星影を仰いで船のゆくえを知り、また朝になれば太陽の上るのを見てわずかに東西南北をわきまえたのであります。そのほかはなにひとつ目に止まるものもなく、どこを見ても、ただ茫々とした青海原でありました。あるときは・・・<小川未明「不死の薬」青空文庫>
  5. ・・・お午の夜店というのは午の日ごとに、道頓堀の朝日座の角から千日前の金刀比羅通りまでの南北の筋に出る夜店で、私はふたたび夜の蛾のようにこの世界にあこがれてしまったのです。 おもちゃ屋の隣に今川焼があり、今川焼の隣は手品の種明し、行灯の中がぐ・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  6. ・・・ 出したら最後、東西南北行方知れずだからね、あんたは」「あかんか」 大阪弁になっていた。「あかん。今夜中に書いて貰わんと、雑誌が出んですからね。あんたの原稿だけなんだ」「火野はまだだろう?」「いや、今着きましたよ」「・・・<織田作之助「四月馬鹿」青空文庫>
  7. ・・・ しかし東京の南北にかけては武蔵野の領分がはなはだせまい。ほとんどないといってもよい。これは地勢のしからしむるところで、かつ鉄道が通じているので、すなわち「東京」がこの線路によって武蔵野を貫いて直接に他の範囲と連接しているからである。僕・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  8. ・・・しかるにまた大多数の人はそれでは律義過ぎて面白くないから、コケが東西南北の水転にあたるように、雪舟くさいものにも眼を遣れば応挙くさいものにも手を出す、歌麿がかったものにも色気を出す、大雅堂や竹田ばたけにも鍬を入れたがる、運が好ければ韓幹の馬・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  9. ・・・東西南北、前後左右、あるいは大あるいは小、高きあり、ひくきあり、みの亀の尾ひきたるごとき者、臥したる牛の首あげたるごとき者あり、月島星島桂島、踞せるがごときが布袋島なら立てるごときは毘沙門島にや、勝手に舟子が云いちらす名も相応に多かるべし。・・・<幸田露伴「突貫紀行」青空文庫>
  10. ・・・中 南北朝の頃から堺は開けていた。正平の十九年に此処の道祐というものの手によって論語が刊出され、其他文選等の書が出されたことは、既に民戸の繁栄して文化の豊かな地となっていたことを語っている。山名氏清が泉州守護職となり、泉府と・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  11. ・・・ されば堯典記載の天文が、今日の科學的進歩の結果と相合はず、その十二宮、二十八宿を東西南北の相稱的位置に排列せることが、天文の實際にあはざることも、もとより當然のことなり。この堯典の記事は天文の實地觀測に立脚せるものには非ずして、占星思・・・<白鳥庫吉「『尚書』の高等批評」青空文庫>
  12. ・・・あなたがあやつる人生切り紙細工は大南北のものの大芝居の如く血をしたたらせている。あまり、煩さい無駄口はききますまい。ヴァレリイが俗っぽくみえるのはあなたの『逆行』『ダス・ゲマイネ』読後感でした。然し、ここには近代青年の『失われたる青春に関す・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  13. ・・・琵琶湖の東北の縁にほぼ平行して、南北に連なり、近江と美濃との国境となっている分水嶺が、伊吹山の南で、突然中断されて、そこに両側の平野の間の関門を形成している。伊吹山はあたかもこの関所の番兵のようにそびえているわけである。大垣米原間の鉄道線路・・・<寺田寅彦「伊吹山の句について」青空文庫>
  14. ・・・すなわち東西に走る連山が南北に走る断層線で中断されたものである。さらにまたこの海峡の西側に比べると東側の山脈の脊梁は明らかに百メートルほどを沈下し、その上に、南のほうに数百メートルもずれ動いたものである事がわかる。もっともこの断層の生成、こ・・・<寺田寅彦「怪異考」青空文庫>
  15. ・・・北米大陸では大山脈が南北に走っているためにこうした特異な現象に富んでいるそうで、この点欧州よりは少なくも一つだけ多くの災害の種に恵まれているわけである。北米の南方ではわがタイフーンの代わりにその親類のハリケーンを享有しているからますます心強・・・<寺田寅彦「災難雑考」青空文庫>
  16. ・・・ 北米のような大陸で、ことに南北の気流の比較的自由な土地はこの現象の生成に都合が好さそうに思われる。いくら米国でもこの天象を禁止し排斥する事は出来ないので、その予報の手がかりを研究しているのである。 我邦におけるこれらの現象の記録は・・・<寺田寅彦「凍雨と雨氷」青空文庫>
  17. ・・・莫約根津ト称スル地藩ハ東西二丁ニ充タズ、南北険ド三丁余。之ヲ七箇町ニ分割ス。則曰ク七軒町、曰ク宮永町、曰ク片町等ハ倶ニ皆廓外ニシテ旧来ノ商坊ナリ。曰ク藍染町、曰ク清水町、曰ク八重垣町等ハ僉廓内ニシテ再興以来ノ新巷ナリ。爾シテ花街ハ其ノ三分ノ・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  18. ・・・ 本所深川区内では○御蔵橋かかりし埋堀○南北の割下水○黒江町黒江橋ありし辺の溝渠。その他。 砂町では○元〆川○境川おんぼう堀。その他。 こんな事を識すのも今は落した財布の銭を数えるにも似ているであろう。        ○・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  19. ・・・かつて明治座の役者たちと共に、電車通の心行寺に鶴屋南北の墓を掃ったことや、そこから程遠からぬ油堀の下流に、三角屋敷の址を尋ね歩いたことも、思えば十余年のむかしとなった。 今日の深川は西は大川の岸から、東は砂町の境に至るまで、一木一草もな・・・<永井荷風「深川の散歩」青空文庫>
  20. ・・・文化年間に至って百花園の創業者佐原菊塢が八重桜百五十本を白髭神社の南北に植えた。それから凡三十年を経て天保二年に隅田村の庄家阪田氏が二百本ほどの桜を寺島須崎小梅三村の堤に植えた。弘化三年七月洪水のために桜樹の害せられたものが多かったので、須・・・<永井荷風「向嶋」青空文庫>
  21. ・・・そこで今度は二人してまた東西南北を馳け廻った揚句の果やはりチェイン・ローが善いという事になった。両人がここに引き越したのは千八百三十四年の六月十日で、引越の途中に下女の持っていたカナリヤが籠の中で囀ったという事まで知れている。夫人がこの家を・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  22. ・・・ 道楽と職業、一方に道楽という字を置いて、一方に職業という字を置いたのは、ちょうど東と西というようなもので、南北あるいは水火、つまり道楽と職業が相闘うところを話そうと、こういう訳である。すなわち道楽と職業というものは、どういうように関係・・・<夏目漱石「道楽と職業」青空文庫>
  23. ・・・いくら巡査が左へ左へと、月給を時間割にしたほどな声を出して、制しても、東西南北へ行く人をことごとく一直線に、同方向に、同速力に向ける事はできません。広い世界を、広い世界に住む人間が、随意の歩調で、勝手な方角へあるいているとすれば、御互に行き・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  24. ・・・その瞬間、磁石の針がくるりと廻って、東西南北の空間地位が、すっかり逆に変ってしまった。同時に、すべての宇宙が変化し、現象する町の情趣が、全く別の物になってしまった。つまり前に見た不思議の町は、磁石を反対に裏返した、宇宙の逆空間に実在したので・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  25. ・・・一九四九年から、南北統一のために努力しつづけていた朝鮮の人々の間に、どうして戦争がひきおこされたのだったろう。こんにち、朝鮮についてわたしたちは客観的に信じるに足りるだけの真実を開かれていない。 やがて歴史が新しい頁を開くとき朝鮮で演じ・・・<宮本百合子「世界は求めている、平和を!」青空文庫>
  26. ・・・ ○時計で南北を知るには、直射光線にうつる短針のかげをかさね、十二時とそれとの中央を南とし、正反対を北。 ○列車の速力は、二十二秒半にこすレールのつぎめの数が時数。 ドイツに Wanderlied の多いこと Faust でさえ・・・<宮本百合子「一九二三年夏」青空文庫>
  27. ・・・    村の南北に通じた里道に沿うて、子供沢山で居て貧しい小作男の夫婦が居るあばら屋がある。 町に地主を持って居て、その畑に働いて居るのだけれ共、段々に人数はますし、ゆとりのあるほど沢山とれる年がないので、夫婦は日の出る・・・<宮本百合子「農村」青空文庫>
  28. ・・・一里ばかり離れた郡山の町から一直線の新道がつくられて、そのポクポク道をやって来たものはおのずから村を南北に貫通している大通りへぶつかり、その道を真っ直ぐ突切ると爪先上りの道は同じ幅で松の植込みのある、いくらか昔話の龍宮に似た三層楼の村役場の・・・<宮本百合子「村の三代」青空文庫>
  29. ・・・彼らの話に拠ると、二人の家は村の南北に建っていて、二人の母は姉妹で、勘次の母は姉であるにも拘らず、秋三の家から勘次の父の家へ嫁いだものであった。けれども此の南北二家は親戚関係の成り立った当夜から、既に絶縁同様になっていた。と云うのは、秋三の・・・<横光利一「南北」青空文庫>
  30. ・・・しかし彼らが社会の裏に住む無恥な女を描き、性慾の衝動に動く浮薄な男を描き、あるいは山国海辺、あるいは大都会小都会の風物情緒を描く時には、それがあらゆる階級の男女や東西南北の諸地方を材料とするにかかわらず、またそれぞれの境遇や土地をおのおのそ・・・<和辻哲郎「「自然」を深めよ」青空文庫>