に‐あ・う〔‐あふ〕【似合う】例文一覧 30件

  1. ・・・お蓮さんに丸髷が似合うようになると、もう一度また昔のなりに、返らせて見たい気もしやしないか?」「返らせたかった所が、仕方がないじゃないか?」「ないがさ、――ないと云えば昔の着物は、一つもこっちへは持って来なかったかい?」「着物ど・・・<芥川竜之介「奇怪な再会」青空文庫>
  2. ・・・……それは容子が何とも言えない、よく似合う。よ。頼むから。」 と、かさに掛って、勢よくは言いながら、胸が迫って声が途切れた。「後生だから。」「はい、……あの、こうでございますか。」「上手だ。自分でも髪を結えるね。ああ、よく似・・・<泉鏡花「小春の狐」青空文庫>
  3. ・・・緋も紅も似合うものを、浅葱だの、白の手絡だの、いつも淡泊した円髷で、年紀は三十を一つ出た。が、二十四五の上には見えない。一度五月の節句に、催しの仮装の時、水髪の芸子島田に、青い新藁で、五尺の菖蒲の裳を曳いた姿を見たものがある、と聞く。……貴・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  4. ・・・ けれども、脊恰好から、形容、生際の少し乱れた処、色白な容色よしで、浅葱の手柄が、いかにも似合う細君だが、この女もまた不思議に浅葱の手柄で。鬢の色っぽい処から……それそれ、少し仰向いている顔つき。他人が、ちょっと眉を顰める工合を、その細・・・<泉鏡花「売色鴨南蛮」青空文庫>
  5. ・・・私は尼になった気で、(風呂敷を髪に姉円髷に結って見せたかったけれど、いっそこの方が似合うでしょう。早瀬 (そのかぶりものを、引手繰さあ、一所に帰ろう。お蔦 あの……今夜は内へ帰っても可いの。早瀬 よく、肯分けた、お蔦、それじゃ、・・・<泉鏡花「湯島の境内」青空文庫>
  6. ・・・この服装が一番似合うと大に得意になって写真まで撮った。服部長八の漆喰細工の肖像館という見世物に陳列された椿岳の浮雕塑像はこの写真から取ったのであった。 椿岳は着物ばかりでなく、そこらで売ってる仕入物が何でも嫌いで皆手細工であった。紙入や・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  7. ・・・公園のベンチの上で浮浪者にまじって野宿していても案外似合うのだ。 そんな彼が戎橋を渡って、心斎橋筋を真直ぐ北へ、三ツ寺筋の角まで来ると、そわそわと西へ折れて、すぐ掛りにある「カスタニエン」という喫茶店へはいって行ったから、驚かざるを得な・・・<織田作之助「四月馬鹿」青空文庫>
  8. ・・・バーテンというよりは料理場といった方が似合うところで、柳吉はなまこの酢の物など附出しの小鉢物を作り、蝶子はしきりに茶屋風の愛嬌を振りまいた。すべてこのように日本趣味で、それがかえって面白いと客種も良く、コーヒーだけの客など居辛かった。 ・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  9. ・・・ 好男子で、スンなりとのびた白い手に指環のよく似合う予審判事がそう云って、ベルを押した。ドアーの入口で待っていた特高が、直ぐしゃちこばった恰好で入ってきた。判事の云う一言々々に句読点でも打ってゆくように、ハ、ハア、ハッ、と云って、その度・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  10. ・・・と相川は笑いながら、「むう、仲々好く似合う」「青木君は――」と布施は引取って、「洋服を着たら若くなったという評判です」「どうも到る処でひやかされるなあ」と青木は五分刈の頭を撫でた。「時に、会の方はどう定りました」と相川は尋ねた。・・・<島崎藤村「並木」青空文庫>
  11. ・・・って、かの友人の許へ駈けつけ、簡単にわけを話し、十円でもって、そのあずけてあるところから取り戻し、それから、シャツ、ネクタイ、帽子、靴下のはてまで、その友人から借りて、そうして、どうやら服装が調うた。似合うも似合わぬもない、常識どおりの服装・・・<太宰治「花燭」青空文庫>
  12. ・・・山高帽子が似合うようでは、どだい作家じゃない。僕は、この秋から支那服着るのだ。白足袋をはきたい。白足袋はいて、おしるこたべていると泣きたくなるよ。ふぐを食べて死んだひとの六十パアセントは自殺なんだよ。君、秘密は守って呉れるね? 藤村先生の戸・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  13. ・・・この傘には、ボンネット風の帽子が、きっと似合う。ピンクの裾の長い、衿の大きく開いた着物に、黒い絹レエスで編んだ長い手袋をして、大きな鍔の広い帽子には、美しい紫のすみれをつける。そうして深緑のころにパリイのレストランに昼食をしに行く。もの憂そ・・・<太宰治「女生徒」青空文庫>
  14. ・・・紺絣には、あのほうが似合うでしょう。」 家内には、私のその時の思いつめた意気込みの程が、わからない。よく説明してやろうかと思ったが、面倒臭かった。「仙台平、」と、とうとう私まで嘘をついて、「仙台平のほうが、いいのだ。こんなに雨が降っ・・・<太宰治「善蔵を思う」青空文庫>
  15. ・・・サビガリさんが、よく似合う。いつも、小説ばっかり書いているおじさん。けさほどは、お葉書ありがとう。ちょうど朝御飯のとき着きましたので、みんなに読んであげました。そんなに毎日毎日チクチク小説ばっかり書いてらしたら、からだを悪くする。ぜひ、スポ・・・<太宰治「俗天使」青空文庫>
  16. ・・・附け鬚模様の銀鍍金の楯があなたによく似合うそうですよ。いや、太宰さんは、もう平気でその楯を持って構えていなさる。僕たちだけがまるはだかだ」「へんなことを言うようですけれども、君はまるはだかの野苺と着飾った市場の苺とどちらに誇りを感じます・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  17. ・・・実にその笑い声はその先生によく似合う。 あの作品の読者が、例えば五千人いたとしても、イヒヒヒヒなどという卑穢な言葉を感じたものはおそらく、その「高尚」な教授一人をのぞいては、まず無いだろうと私には考えられる。光栄なる者よ。汝は五千人中の・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  18. ・・・「そんなんじゃないのよ。」さちよは、暗闇の中で、とてもやさしく微笑んだ。「あたし、巴御前じゃない。薙刀もって奮戦するなんて、いやなこった。」「似合うよ。」「だめ。あたし、ちびだから、薙刀に負けちゃう。」 ふふ、と数枝は笑った・・・<太宰治「火の鳥」青空文庫>
  19. ・・・雨催の空濁江に映りて、堤下の杭に漣れんい寄するも、蘆荻の声静かなりし昔の様尋ぬるに由なく、渡番小屋にペンキ塗の広告看板かゝりては簑打ち払う風流も似合うべくもあらず。今戸の渡と云う名ばかりは流石に床し。山谷堀に上がれば雨はら/\と降り来るも場・・・<寺田寅彦「半日ある記」青空文庫>
  20. ・・・華族や金持がほれば似合うかも知れないが、僕にはそんなものは向かない。荒木又右衛門だって、ほっちゃいまい」「荒木又右衛門か。そいつは困ったな。まだそこまでは調べが届いていないからね」「そりゃどうでもいいが、ともかくもあしたは六時に起き・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  21. ・・・何故なら、必要、不必要、自分に似合う似合わない、その他多くの購買者が必ず持つ私的条件を全く超えて、全くそのもののよしあし、価値を見極めようとするから。そして又、少し眼の肥えた観賞者なら、そう何から何までに感服はすまい。美しいものをしんから愛・・・<宮本百合子「小景」青空文庫>
  22. ・・・母親や娘は、彼女等の手芸、刺繍、パッチ・ウワーク等を応用して、暇々に、新たな壁紙に似合う垂帳、クッション、足台等を拵える。 公共建築や宮殿のようなものは例外として、中流の、先ず心の楽しさを得たい為に、居心地よい家を作ろうとするような者は・・・<宮本百合子「書斎を中心にした家」青空文庫>
  23. ・・・この間うちパーマネントのことが大変やかましく云われていましたが、おしゃれもほんとうは、ぐっと進めば女の人の方からああ云う問題は自然解決してゆくものだし、当然そこを目指されていいものでしょう。似合う似合わぬから云っても、場所とか職業とか時代の・・・<宮本百合子「女性の生活態度」青空文庫>
  24. ・・・ 一番自分に似合う髪をやっと見つけたと思ったら、そういうわけなので、私は悲しいし、いやだし、心持をもてあまして、それから当分はまるで桜井の駅の絵にある正行のように、白い元結いで根のところを一つくくっただけの下げ髪にしていたことがあった。・・・<宮本百合子「青春」青空文庫>
  25. ・・・ ○賢こいので何か云ってだまったとき 美しさがある ○美しきインテレクチュアル婦人という心持〔欄外に〕二十四歳 水色のクレプ・ドシンのショールが似合うたち。桃色ろの半襟 色白、     四つの子供 楠生・・・<宮本百合子「一九二七年春より」青空文庫>
  26. ・・・夕飯がすんで夜の九時頃、私が自分の勉強も一休みしようと部屋から食堂に出てゆくと、質素な、別に似合うでもないどてらを着た父がテーブルの横のところに坐って帳面をひろげ、鉛筆をもって頻りにプランを描いております。草案をねるという工合のようでした。・・・<宮本百合子「父の手帳」青空文庫>
  27. ・・・ でも今日はいつもよりよっぽど奇麗に見えてますよ、気持がいい着物の色が―― それにね、 貴方みたいな人は黒っぽいものが一番似合う。 横縞は着るもんじゃあないんですよ、 大抵の時は横っぴろがりに見えるから。 母親の・・・<宮本百合子「千世子(三)」青空文庫>
  28. ・・・それでどの家も細かく葺いた木端屋根なのが、粗く而も優しい新緑の下で却って似合うのだ。裏通りなど歩くと、その木端屋根の上に、大きなごろた石を載せた家々もある。木曾を汽車で通ると、木曾川の岸に低く侘しく住む人間の家々の屋根が、やっぱりこんな風だ・・・<宮本百合子「夏遠き山」青空文庫>
  29. ・・・うしお染の横きりの細形の体にはたまらなく似合うのを着てまっかな帯をダラリと猫じゃらしに結んでチャンと御化粧がしてあった。こんな処で見るよりも倍も美くしい様子のお妙ちゃんにひっぱられたまんま三味線や鼓や太鼓のどっさりかけてある部屋を通った、そ・・・<宮本百合子「ひな勇はん」青空文庫>
  30. ・・・わたくしはあの写真の男に燕尾服がどんなに似合うだろうと想像すると、居ても立っても居られなかったのです。 女。ええ。まだ覚えていますの。 男。それからわたくしはあなたをちょっとの間も手離すまいとしたのですね。あなたが誰と知合になられた・・・<著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外「最終の午後」青空文庫>