に‐うま【荷馬】例文一覧 29件

  1. ・・・日がだいぶん西にまわったころ、ガラガラとつづいてゆく、荷馬車に出あいました。車の上には、派手な着物を被ておしろいをぬった女たちのほかに、犬や、さるも、いっしょに乗っていました。「ああ、サーカスが、どこかへゆくんだな。」と、信吉は、思いま・・・<小川未明「銀河の下の町」青空文庫>
  2. ・・・重い荷を車に積んでゆく、荷馬車の足跡や、轍から起こる塵埃に頭が白くなることもありましたが、花は、自分の行く末にいろいろな望みをもたずにはいられなかったのです。 道ばたでありますから、かや、はえがよくきて、その花の上や、また葉の上にもとま・・・<小川未明「くもと草」青空文庫>
  3. ・・・また、荷馬車がガラガラと夕暮れ方、浜の方へ帰ってゆくのにも出あいました。 男は、珍しい品が見つかると、心の中では飛びたつほどにうれしがりましたが、けっしてそのことを顔色には現しませんでした。かえって、口先では、「こんなものは、いくら・・・<小川未明「宝石商」青空文庫>
  4. ・・・橋の上を通る男女や荷馬車を、浮かぬ顔して見ているのだ。 近くに倉庫の多いせいか、実によく荷馬車が通る。たいていは馬の肢が折れるかと思うくらい、重い荷を積んでいるのだが、傾斜があるゆえ、馬にはこの橋が鬼門なのだ。鞭でたたかれながら弾みをつ・・・<織田作之助「馬地獄」青空文庫>
  5. ・・・黒橇や、荷馬車や、徒歩の労働者が、きゅうに檻から放たれた家畜のように、自由に嬉々として、氷上を辷り、頻ぱんに対岸から対岸へ往き来した。「今日は! タワーリシチ! 演説を傍聴さしてもらうぞ」 支那人、朝鮮人たち、労働者が、サヴエート同・・・<黒島伝治「国境」青空文庫>
  6. ・・・ジメ/\した田の上に家を建てゝ、そいつを貸したり、荷馬車屋の親方のようなことをやったり、製材所をこしらえたりやっていた。はじめのうちは金が、──地方の慾ばり屋がどんどん送ってよこすので──豊富で給料も十八円ずつくれたが、そのうち十七円にさげ・・・<黒島伝治「自伝」青空文庫>
  7. ・・・着いた晩は、お三輪もお力の延べてくれた床に入って、疲れた身体を休めようとしたが、生憎と自動車や荷馬車の音が耳についてよくも眠られなかった。この公園に近い休茶屋の外には一晩中こんな車の音が絶えないのかとお三輪に思われた。 朝になって見ると・・・<島崎藤村「食堂」青空文庫>
  8. ・・・手車や荷馬車に負傷者をつんでとおるのもあり、たずね人だれだれと名前をかいた旗を立てて、ゆくえの分らない人をさがしまわる人たちもあります。そのごたごたした中を、方々の救護班や、たき出しをのせた貨物自動車がかけちがうし、焼けあとのトタン板をがら・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  9. ・・・ 女中が迎えに来て荷馬車で帰る途中で、よその家庭の幸福そうな人々を見ているうちににんじんの心がだんだんにいら立って来て、無茶苦茶に馬を引っぱたいて狂奔させる、あすこの場面の伴奏音楽がよくできているように思う。ほんとうにやるせのない子供心・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  10. ・・・ そのうちに荷馬車の音がしておおぜいの人夫がやって来て、材木をころがしては車に積み始めたので、私はしばらく画架を片よせて避けなければならなかった。そこで少し離れた土管に腰をかけて煙草を吸いながらかきかけの絵の穴を埋める事を考えていた。・・・<寺田寅彦「写生紀行」青空文庫>
  11. ・・・とある踏切の所では煉瓦を積んだ荷馬車が木戸のあくのを待っていた。車の上の男は赤ら顔の肩幅の広い若者でのんきらしく煙管をくわえているのも絵になっていた。魚網を肩へかけ、布袋を下げた素人漁夫らしいのも見かけた。河畔の緑草の上で、紅白のあらい竪縞・・・<寺田寅彦「旅日記から(明治四十二年)」青空文庫>
  12.          一 神保町から小川町の方へ行く途中で荷馬車のまわりに人だかりがしていた。馬が倒れたのを今引起こしたところであるらしい。馬の横腹から頬の辺まで、雨上がりの泥濘がべっとりついて塗り立ての泥壁を見るようで・・・<寺田寅彦「断片(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  13. ・・・ あがりがまちのむこうには、荷馬車稼業の父親が、この春仕事さきで大怪我をしてからというもの、ねたきりでいたし、そばにはまだ乳のみ児の妹がねかしてあった。母親にすれば、倅の室の隅においている小さい本箱と、ちかごろときどき東京からくる手紙が・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  14. ・・・鼠色した鳩が二、三羽高慢らしく胸を突出して炎天の屋根を歩いていると、荷馬の口へ結びつけた秣桶から麦殻のこぼれ落ちるのを何処から迷って来たのか痩せた鶏が一、二羽、馬の脚の間をば恐る恐る歩きながら啄んでいた。人通は全くない。空気は乾いて緩に凉し・・・<永井荷風「夏の町」青空文庫>
  15. ・・・ ひるすぎ、野原の向うから、又キラキラめがねや器械が光って、さっきの四人の学者と、村の人たちと、一台の荷馬車がやって参りました。 そして、柏の木の下にとまりました。「さあ、大切な標本だから、こわさないようにして呉れ給え。よく包ん・・・<宮沢賢治「気のいい火山弾」青空文庫>
  16. ・・・するとある日、六七台の荷馬車が来て、いままでにできた糸をみんなつけて、町のほうへ帰りはじめました。みんなも一人ずつ荷馬車について行きました。いちばんしまいの荷馬車がたったとき、てぐす飼いの男が、ブドリに、「おい、お前の来春まで食うくらい・・・<宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」青空文庫>
  17. ・・・ 雲の縞は薄い琥珀の板のようにうるみ、かすかなかすかな日光が降って来ましたので、本線シグナルつきの電信柱はうれしがって、向こうの野原を行く小さな荷馬車を見ながら低い調子はずれの歌をやりました。「ゴゴン、ゴーゴー、 うすい・・・<宮沢賢治「シグナルとシグナレス」青空文庫>
  18. ・・・それにおれは野原でおかしな風に枯草を積んだ荷馬車に何べんもあってるんだ。ファゼーロ、お前ね、なんにも知らないふりして今夜はうちへ帰って寝ろ。おれはきっと五六日のうちにポラーノの広場をさがすから。」「そうかい。ぼくにはよくわからないなあ。・・・<宮沢賢治「ポラーノの広場」青空文庫>
  19. ・・・その樫の木はいつ其那ところへ芽を出したのだろうとは誰も考えもせず、永年荷馬車を一寸つないだり、子供が攀じ登りの稽古台にしたり、共同に役立てて暮して来た。沢や婆さんの存在もその通りであった。村人は、彼女が女であって、やはり金や家や着物がないと・・・<宮本百合子「秋の反射」青空文庫>
  20. ・・・最後の荷物を運ぶのについてったら、駅の正面に驢馬みたいな満州馬にひかせた支那人の荷馬車が止ってて、我々の荷物はその上につまれている。 支那人の馬車ひきは珍しく、三年前通ったハルビンの景色を思い出させた。三年の間に支那も変った。支那は今百・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  21. ・・・ その中庭へ荷馬車が入って来たら蹄の音が高くあたりの鼠色の建物に反響した。 二人の日本女が歩いてるハルトゥリナ通りにしろ、もとのニェフスキー・プロスペクトにしろ、モスクワとは違ってみんな木煉瓦の鋪装である。蹄の音はそこで柔かく、遠く・・・<宮本百合子「スモーリヌイに翻る赤旗」青空文庫>
  22. ・・・ 数露里行ったところで、はじめて一台の韃靼人の荷馬車をビュッと追い抜いた。幅のせまい、濃い緑、赤黄などで彩色した轎型の轅の間へ耳の立った驢馬をつけ、その轡をとって、風にさからい、背中を丸め、長着の裾を煽られながら白髯の老人がトボトボ進ん・・・<宮本百合子「石油の都バクーへ」青空文庫>
  23. ・・・ 円たく、パッカード、セダンの硝子扉の中に白粉をつけた娘の頸足が見える。赤い毛糸帽が自転車でとぶ。 荷馬車が二台ヨードをとる海藻をのせて横切る。 男の児が父親に手をひかれて来る 男の児の小さい脚でゴム長靴がゴボゴボと鳴った。・・・<宮本百合子「一九二七年春より」青空文庫>
  24. ・・・そこも右手はまだ松平の空地つづきで、せまい道幅いっぱいによく荷馬車がとまっていた。私たち子供は一列になって息をころして馬のわきをすりぬけ、すりぬけるや否や駈け出し、やがてとまってあとをふりかえってみた。こわいくせに、そのこわくて大きな馬の後・・・<宮本百合子「田端の汽車そのほか」青空文庫>
  25. ・・・北海道で、荷馬車のうしろへ口繩をいわいつけた馬にのってアイヌ村を巡った時、私の帯の間にはこの時計が入っていた。 ニューヨークの寄宿舎では豌豆がちの献立であったから腹がすいて困った。その時、デスクの上で何時かしらと眺めるのも、その時計であ・・・<宮本百合子「時計」青空文庫>
  26. ・・・ 樵夫の鈍い叫声に調子づけるように、泥がブヨブヨの森の端で、重荷に動きかねる木材を積んだ荷馬を、罵ったり苛責したりする鞭の音が鋭く響く。 ト思うと、日光の明るみに戸惑いした梟を捕まえて、倒さまに羽根でぶらさげながら、陽気な若者がどこ・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  27. ・・・ 往還で行き会う荷馬も、大方は、用事をすませれば、町方へ帰るものか、又は、村から村へと行きずりの馬である。 往還から垣もなく、見堺もなく並んで居る低い屋根は勿論「草ぶき」で性悪の烏がらちもなくついばんだり、長い月日の間にいつとはなし・・・<宮本百合子「農村」青空文庫>
  28. ・・・ 祖父の家には、荷馬車屋、韃靼人の従卒、軍人と、お喋りで陽気なその細君などが間借りしていて、中庭では年じゅう叫ぶ声、笑う声、駈ける足音が絶えないのであったが、台所の隣りに、窓の二つついた細長い部屋があった。その部屋を借りているのは、痩せ・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  29. ・・・をかげでは嗤って、贋金つくりだの、魔法師だの、背信者だのと噂している。荷馬車屋、韃靼人の従卒、軍人とジャム壺をもって歩いてふるまいながらおしゃべりをすることのすきな陽気なその細君などという下宿人の顔ぶれの中で、この「結構さん」は何という変な・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」青空文庫>