にぎ・る【握る】例文一覧 27件

  1. ・・・半之丞はこの金を握るが早いか、腕時計を買ったり、背広を拵えたり、「青ペン」のお松と「お」の字町へ行ったり、たちまち豪奢を極め出しました。「青ペン」と言うのは亜鉛屋根に青ペンキを塗った達磨茶屋です。当時は今ほど東京風にならず、軒には糸瓜なども・・・<芥川竜之介「温泉だより」青空文庫>
  2. ・・・ クラバックは細い目をかがやかせたまま、ちょっとマッグの手を握ると、いきなり戸口へ飛んでいきました。もちろんもうこの時には隣近所の河童が大勢、トックの家の戸口に集まり、珍しそうに家の中をのぞいているのです。しかしクラバックはこの河童たち・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  3. ・・・今にきっとシャヴルの代りに画筆を握るのに相違ない。そのまた挙句に気違いの友だちに後ろからピストルを射かけられるのである。可哀そうだが、どうも仕方がない。 保吉はとうとう小径伝いに玄関の前の広場へ出た。そこには戦利品の大砲が二門、松や笹の・・・<芥川竜之介「保吉の手帳から」青空文庫>
  4. ・・・私は産室に降りていって、産婦の両手をしっかり握る役目をした。陣痛が起る度毎に産婆は叱るように産婦を励まして、一分も早く産を終らせようとした。然し暫くの苦痛の後に、産婦はすぐ又深い眠りに落ちてしまった。鼾さえかいて安々と何事も忘れたように見え・・・<有島武郎「小さき者へ」青空文庫>
  5. ・・・ 驚いて白髪を握ると、耳が暖く、襖が明いて、里見夫人、莞爾して覗込んで、「もう可いんですよ。立花さん。」 操は二人とも守り得た。彫刻師はその夜の中に、人知れず、暗ながら、心の光に縁側を忍んで、裏の垣根を越して、庭を出るその後姿を・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  6. ・・・そして三円ぐらい手に握ると、昼間は将棋などして時間をつぶし、夜は二ツ井戸の「お兄ちゃん」という安カフェへ出掛けて、女給の手にさわり、「僕と共鳴せえへんか」そんな調子だったから、お辰はあれでは蝶子が可哀想やと種吉に言い言いしたが、種吉は「坊ん・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  7. ・・・そして二月経ったが、手一つ握るのも躊躇される気の弱さだった。手相見てやろかと、それがやっとのことだった。手相にはかねがね趣味をもっていて、たまに当るようなこともあった。 瞳の手は案外に荒れてザラザラしていたが、坂田は肩の柔かさを想像して・・・<織田作之助「雪の夜」青空文庫>
  8. ・・・』『ナニあの男の事だからいったんかせぎに出たからにはいくらかまとまった金を握るまでは帰るまい、堅い珍しい男だからどうか死なしたくないものだ。』『ほんとにね』とお絹は口の中、叔母は大きな声で『大丈夫、それにあの人は大酒を飲むの何の・・・<国木田独歩「置土産」青空文庫>
  9. ・・・人の眠催す様なるこの水音を源叔父は聞くともなく聞きてさまざまの楽しきことのみ思いつづけ、悲しきこと、気がかりのこと、胸に浮かぶ時は櫓握る手に力入れて頭振りたり。物を追いやるようなり。 家には待つものあり、彼は炉の前に坐りて居眠りてやおら・・・<国木田独歩「源おじ」青空文庫>
  10. ・・・婦人の自由の実力を握るための職業進出である。婦人は母性愛と家庭とをある程度まで犠牲としても、自分を保護し、自由を獲得しなければならない事情がある。これは結局は社会改革と男性の矜りある自覚とにまたなければならない問題である。母性愛と職業との矛・・・<倉田百三「婦人と職業」青空文庫>
  11. ・・・電気の光りで大きい手を右のポケットに突っこんで拳銃を握るのがちらっと栗本に見えた。「畜生! 撃つんだな。」 彼は立ったまゝ銃をかまえた。その時、橇の上から轟然たるピストルのひゞきが起った。彼は、引金を握りしめた。が引金は軽く、すかく・・・<黒島伝治「氷河」青空文庫>
  12. ・・・無念骨髄に徹して歯を咬み拳を握る幾月日、互に義に集まる鉄石の心、固く結びてはかりごとを通じ力を合せ、時を得て風を巻き雲を起し、若君尚慶殿を守立てて、天翔くる竜の威を示さん存念、其企も既に熟して、其時もはや昨今に逼った。サ、かく大事を明かした・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  13. ・・・猿がやって来て片手を穴に突っ込んで米を握ると拳が穴につかえて抜けなくなる。逃げれば逃げられる係蹄に自分で一生懸命につかまって捕われるのを待つのである。 ごちそうに出した金米糖のつぼにお客様が手をさし込んだらどうしても抜けなくなったのでし・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  14. ・・・そして他郷に遊学すると同時にやめてしまって、今日までついぞ絵筆を握る機会はなかった。もと使った絵の具箱やパレットや画架なども、数年前国の家を引き払う時に、もうこんなものはいるまいと言って、自分の知らぬ間に、母がくず屋にやってしまったくらいで・・・<寺田寅彦「自画像」青空文庫>
  15. ・・・どの国もどの国も陸海軍を拡げ、税関の隔てあり、兄弟どころか敵味方、右で握手して左でポケットの短銃を握る時代である。窮屈と思い馬鹿らしいと思ったら実に片時もたまらぬ時ではないか。しかしながら人類の大理想は一切の障壁を推倒して一にならなければ止・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  16. ・・・さらでも歩きにくい雪の夜道の足元が、いよいよ危くなり、娘の手を握る手先がいつかその肩に廻される。のぞき込む顔が接近して互の頬がすれ合うようになる。あたりは高座で噺家がしゃべる通り、ぐるぐるぐるぐる廻っていて、本所だか、深川だか、処は更に分ら・・・<永井荷風「雪の日」青空文庫>
  17. ・・・エレーンは衣の領を右手につるして、暫らくは眩ゆきものと眺めたるが、やがて左に握る短刀を鞘ながら二、三度振る。からからと床に音さして、すわという間に閃きは目を掠めて紅深きうちに隠れる。見れば美しき衣の片袖は惜気もなく断たれて、残るは鞘の上にふ・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  18. ・・・とペダルとは何も世間体を繕うために漫然と附着しているものではない、鞍は尻をかけるための鞍にしてペダルは足を載せかつ踏みつけると回転するためのペダルなり、ハンドルはもっとも危険の道具にして、一度びこれを握るときは人目を眩せしむるに足る目勇しき・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  19. ・・・会う時にお時儀をするとか手を握るとか云う型がなければ、社交は成立しない事さえある。けれども相手が物質でない以上は、すなわち動くものである以上は、種々の変化を受ける以上は、時と場合に応じて無理のない型を拵えてやらなければとうていこっちの要求通・・・<夏目漱石「中味と形式」青空文庫>
  20. ・・・もしそこまで行ければ、ここにおれの尻を落ちつける場所があったのだという事実をご発見になって、生涯の安心と自信を握る事ができるようになると思うから申し上げるのです。 今まで申し上げた事はこの講演の第一篇に相当するものですが、私はこれからそ・・・<夏目漱石「私の個人主義」青空文庫>
  21. ・・・凡そ男女交際の清濁は其気品の如何に関することにして、例えば支那主義の眼を以て見れば、西洋諸国の貴女紳士が共に談じ共に笑い、同所に浴こそせざれ同席同食、物を授受するに手より手にするのみか、其手を握るを以て礼とするが如き、男女別なし、無礼の野民・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  22. ・・・そうして、素早く雑巾を握ると、まるで夜のあけたような心で割り込んで行った。生徒たちが若い先生の主観的な亢奮ぶりにキョトンとすると、彼は「肥えたるわが馬、手なれしわが鞭」と「精一杯の声を張りあげて歌い出した。」子供たちも「忽ちこれに同化されて・・・<宮本百合子「一連の非プロレタリア的作品」青空文庫>
  23. ・・・女のアルトであり、若々しいソプラノであるだろう。握る拳さえ、女は女のこぶしを握るのである。本質の女らしくなさ、がどこにあるだろう。そうして、活溌に論じ、行動する女の女らしさをいじらしく、雄々しく見ることの出来ない人々が、また、逆に「女らしさ・・・<宮本百合子「「女らしさ」とは」青空文庫>
  24. ・・・の、静脈の浮いた手を握ると、一人の日本女はドアの内側から外套をはずし、それを着て外へ出る仕度をした。「しゃっちこばり」は、室の中央のテーブルの傍に立ってそれを見ている。 ――どうしてお出になるんですか、ちっとも貴方は邪魔なさいませんよ。・・・<宮本百合子「子供・子供・子供のモスクワ」青空文庫>
  25. ・・・ 各々の手に握る鋤の形が違うように、機械が違うように、各国の闘争の細部にわたる具体性はある点違っているだろう。が、階級として搾取者に対した時、プロレタリア・農民にとっては黒坊も白坊もない。世界のプロレタリアート・農民として、ただ一本の国・・・<宮本百合子「プロレタリア文学における国際的主題について」青空文庫>
  26. ・・・所有土地百三十五万町歩、有価証券現金三億三千六百万円以上、そして一致した利害に立って、新しい日本の支配権を握るようになったのであった。 極めて特徴的な明治維新のこういう性格は、初期の動乱時代を過ぎるにつれて、支配方針の確立を求めるに当っ・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>
  27. ・・・首の棒を握る人形使いの左手がそれをささえるのである。その框から紐が四本出ていて、その二本が腕に結びつけられ、他の二本が脚に結びつけられている。すなわち人形の肢体を形成しているのは実はこの四本の紐なのであって、手や足はこの紐の端に過ぎない。従・・・<和辻哲郎「文楽座の人形芝居」青空文庫>