にち‐や【日夜】例文一覧 30件

  1. ・・・が、一方また豪傑肌の所もあって、日夜杯に親みながらさらに黄白を意としなかった。「天雲の上をかけるも谷水をわたるも鶴のつとめなりけり」――こう自ら歌ったほど、彼の薬を請うものは、上は一藩の老職から、下は露命も繋ぎ難い乞食非人にまで及んでいた。・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・「拝啓、貴下の夫人が貞操を守られざるは、再三御忠告……貴下が今日に至るまで、何等断乎たる処置に出でられざるは……されば夫人は旧日の情夫と共に、日夜……日本人にして且珈琲店の給仕女たりし房子夫人が、……支那人たる貴下のために、万斛の同情無・・・<芥川竜之介「影」青空文庫>
  3. ・・・先つごろ、その夫人のわれに申されけるは、「このほど、怪しき事あり。日夜何ものとも知れず、わが耳に囁きて、如何ぞさばかりむくつけき夫のみ守れる。世には情ある男も少からぬものをと云う。しかもその声を聞く毎に、神魂たちまち恍惚として、恋慕の情自ら・・・<芥川竜之介「るしへる」青空文庫>
  4. ・・・ そして、僕は近代小説は結局日本の伝統小説からは生まれないという考えの下に、よしんば二流三流五流に終るとも、猫でも杓子でもない独自の小説を書いて行きたいと、日夜考えておりますので、エロだとかマルクスだとか、眼を向いてキョロキョロしている・・・<織田作之助「猫と杓子について」青空文庫>
  5. ・・・もしそれこれを憶うていよいよ感じ、瞑想静思の極にいたればわれ実に一呼吸の機微に万有の生命と触着するを感じたりき もしこの事、単にわが空漠たる信念なりとするも、わが心この世の苦悩にもがき暗憺たる日夜を送る時に当たりて、われいかにしばしば汝・・・<国木田独歩「小春」青空文庫>
  6. ・・・い、敵将を追落し敵城を乗取ること、嚢の物を探るが如くになり居れど、ただ兵粮其他の支えの足らぬため、勝っても勝を保ち難く、奪っても復奪わるべきを慮り、それ故に老巧の方々、事を挙ぐるに挙げかね、現に貴殿も日夜此段に苦んで居らるるではござらぬか。・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  7. ・・・以来、十春秋、日夜転輾、鞭影キミヲ尅シ、九狂一拝ノ精進、師ノ御懸念一掃ノオ仕事シテ居ラレルナラバ、私、何ヲ言オウ、声高ク、「アリガトウ」ト明朗、粛然ノ謝辞ノミ。シカルニ、此ノ頃ノ君、タイヘン失礼ナ小説カイテ居ラレル。家郷追放、吹雪ノ中、妻ト・・・<太宰治「創生記」青空文庫>
  8. ・・・シロオテは折檻されながらも、日夜、長助はるの名を呼び、その信を固くして死ぬるとも志を変えるでない、と大きな声で叫んでいた。 それから間もなく牢死した。下策をもちいたもおなじことであった。・・・<太宰治「地球図」青空文庫>
  9. ・・・ただ、ひたすらに、いい画をかきたいと、そればかり日夜、考えているのである。母ひとり、子ひとりの家庭である。いま住んでいる武蔵野町の家は、三年まえ、杉野君の設計に拠って建てられたものである。もったいないほど立派なアトリエも、ついている。五年ま・・・<太宰治「リイズ」青空文庫>
  10. ・・・簡単に内容を紹介すると、まずその第一ページは、消防署で日夜火の手を見張っている様子を歌ってある。第二ページはおかあさんの留守に幼少な娘のリエナが禁を犯してペチカのふたを明け、はね出した火がそれからそれと燃え移って火事になる光景、第三ページは・・・<寺田寅彦「火事教育」青空文庫>
  11. ・・・今日その人はなお矍鑠としておられるが、その人の日夜見て娯みとなした風景は既に亡びて存在していない。先生の名著『言長語』の二巻は明治三十二、三年の頃に公刊せられた。同書に載せられた春の墨堤という一篇を見るに、「一、塵いまだたたず、土なほ湿・・・<永井荷風「向嶋」青空文庫>
  12. ・・・夜番のために正宗の名刀と南蛮鉄の具足とを買うべく余儀なくせられたる家族は、沢庵の尻尾を噛って日夜齷齪するにもかかわらず、夜番の方では頻りに刀と具足の不足を訴えている。われらは渾身の気力を挙げて、われらが過去を破壊しつつ、斃れるまで前進するの・・・<夏目漱石「マードック先生の『日本歴史』」青空文庫>
  13. ・・・子生まれて家にあり、その日夜見習う所のものは、父母の行状と一般の家風よりほかならず。一家の風は父母の心を以て成るものなれば、子供の習慣は全く父母の一心に依頼するものというて可なり。故に一家は習慣の学校なり、父母は習慣の教師なり。而してこの習・・・<福沢諭吉「教育の事」青空文庫>
  14. ・・・けだしこの人々いずれも英邁卓絶の士なれば、ひたすら自レ我作レ古の業にのみ心をゆだね、日夜研精し寝食を忘るるにいたれり。あるいは伝う、蘭化翁、長崎に往きて和蘭語七百余言を学び得たりと。これによって古人、力を用ゆるの切なると、その学の難きとを察・・・<福沢諭吉「慶応義塾の記」青空文庫>
  15. ・・・子供の心身の暗弱四肢耳目の不具は申すまでもなく、一本の歯一点の黶にも心を悩まして日夜片時も忘るゝを得ず。俗に言う子供の馬鹿ほど可愛く片輪ほど憐れなりとは、親の心の真面目を写したるものにして、其心は即ち子供の平等一様に幸福ならんことを念ずるの・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  16. ・・・ この際にあたりて、ひとり我が義塾同社の士、固く旧物を守りて志業を変ぜず、その好むところの書を読み、その尊ぶところの道を修め、日夜ここに講究し、起居常時に異なることなし。もって悠然、世と相おりて、遠近内外の新聞の如きもこれを聞くを好まず・・・<福沢諭吉「中元祝酒の記」青空文庫>
  17. ・・・若い女のひとたちも日夜そういうものを目撃し、その気風にふれ、しかもその荒っぽさに心づかなくなって来るようなことがあれば、どこからほんとの美感としての簡素さというような健やかな潤いを見出して来るだろうか。今こそ私たちは人間の成長という方向で、・・・<宮本百合子「新しい美をつくる心」青空文庫>
  18. ・・・をとって来ると、女の職業的な進出や、生産へ労働力として参加する数や質のひろがりに逆比例して、女らしい躾みだとか慎しさとか従順さとかが、一括した女らしさという表現でいっそう女につよく求められて来ている。日夜手にふれている機械は近代の科学性の尖・・・<宮本百合子「新しい船出」青空文庫>
  19. ・・・その波風の間で、では、何がわたしたちの日夜、まともに伸びたいとねがっている人間性の砦となり、その人の文学の足場となってゆくのだろう。 平凡だと思われるほどすりへることのない一つの真実がある。それは、一人一人のひとが、自分のまともに生きよ・・・<宮本百合子「新しい文学の誕生」青空文庫>
  20. ・・・ 他のヨーロッパ諸国の社会生活の苦悩と自分から出口をふさいでもがいている自己矛盾とに強い印象をうけて戻って来た作者は、日夜の共感をもって、ソヴェトの人々が社会主義社会を確立するために奮起した情熱と実力とにふれた。社会の現実はどのようにし・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」青空文庫>
  21. ・・・地球上に在るおのおのの集団――国――が、現在どんな有機的関係を持っているか、又、どう云う運命の下に、日夜、同じ太陽を廻っているか。それ等を、わが胸で痛感する者は、決して未だ多過ぎることは無いのである。 近頃、漸々一体の注意を呼び始めた、・・・<宮本百合子「アワァビット」青空文庫>
  22. ・・・非現実のヒロイズムで目のくらむような照明を日夜うけつづけて育った。自分としての判断。その人としての考えかた。社会生活におけるそのことの必然を認めることさえ罪悪とした軍部の圧力は、若い精神に、この苛烈な運命に面して自分としてのすべてに拘泥する・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  23. ・・・と詩にうたったその日夜の砧は、宋国のどんな男がうっただろう。それはみんな婦人たちのうつ砧の音であって、数千年の間、人類の女性は、誰がために、何を、どういう事情のもとに紡ぎ、織り、染め、そして縫って来たのだろう。今日こそ私たちは、はっきり自分・・・<宮本百合子「衣服と婦人の生活」青空文庫>
  24. ・・・ 阿部彌一右衛門は、人間の性格的相剋を主従という封建の垣のうちに日夜まむきに犇めきとおして遂に、悲劇的終焉を迎えたが、佐橋は君主である家康が己に気を許さぬ本心を知ったとき、恐ろしく冷やかな判断で、そのように狭くやがては己が身の上に落ちか・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  25. ・・・私生児を育て抜いた所に重点があるよりは、むしろ社会的の束縛から愛する者との間の子を、私生児としての形でしか持てなかった事、更にその子を育てる上に日夜世間の古い型の考えと戦わねばならなかった事、ここに作者は人間性への広い訴えをこめていたのでは・・・<宮本百合子「「女の一生」と志賀暁子の場合」青空文庫>
  26. ・・・この一事を、深く深く思ったとき、私たちの胸に湧く自分への激励、自分への鞭撻、自分への批判こそ一人一人の女を育て培いながら、女全体の歴史の海岸線を小波が巖を砂にして来たように変えてゆく日夜の秘められた力であると思う。〔一九四〇年六月〕・・・<宮本百合子「女の歴史」青空文庫>
  27. ・・・私が何とかして会いたいと留置場の中で日夜願っている同志たちとはこういう細工をしてまで会わせず、会わせる者はと云えば、帝国主義官憲とグルになって、もう「コップ」の仕事はしないと云えなどとよくも恥しらずにすすめる奴らです。私はプロレタリア婦人作・・・<宮本百合子「逆襲をもって私は戦います」青空文庫>
  28. ・・・このころ、この街にある聯隊の入口をめがけて旗や提灯の列が日夜激しくつめよせた。日露戦争がしだいに高潮して来ていたのである。疏水の両側の角刈にされた枳殻の厚い垣には、黄色な実が成ってその実をもぎ取る手に棘が刺さった。枳殻のまばらな裾から帆をあ・・・<横光利一「洋灯」青空文庫>
  29. ・・・あるいは庭に咲く日向葵、日夜我らの親しむ親や子供の顔。あるいは我らが散歩の途上常に見慣れた景色。あるいは我々人間の持っているこの肉体。――すべて我々に最も近い存在物が、彼らに対して、「そこに在ることの不思議さ」を、「その測り知られぬ美しさ」・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>
  30. ・・・私の心は日夜休むことがない。私は自分の内に醜く弱くまた悪いものを多量に認める。私は自己鍛錬によってこれらのものを焼き尽くさねばならぬ。しかし同時に私は自分の内に好いものをも認める。私はそれが成長することを祈り、また自己鞭撻によってその成長を・・・<和辻哲郎「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」青空文庫>