に‐の‐うで【二の腕】例文一覧 21件

  1. ・・・が、保吉は痛みよりも名状の出来ぬ悲しさのために、二の腕に顔を隠したなり、いよいよ懸命に泣きつづけた。すると突然耳もとに嘲笑の声を挙げたのは陸軍大将の川島である。「やあい、お母さんて泣いていやがる!」 川島の言葉はたちまちのうちに敵味・・・<芥川竜之介「少年」青空文庫>
  2. ・・・彼はいじいじしながら、もう飛び出そうかもう飛び出そうかと二の腕をふるわせながら青くなって突っ立っていた。「えい、退きねえ」 といって、内職に配達をやっている書生とも思わしくない、純粋の労働者肌の男が……配達夫が、二、三人の子供を突き・・・<有島武郎「卑怯者」青空文庫>
  3. ・・・ 犬張子が横に寝て、起上り小法師のころりと坐った、縁台に、はりもの板を斜めにして、添乳の衣紋も繕わず、姉さんかぶりを軽くして、襷がけの二の腕あたり、日ざしに惜気なけれども、都育ちの白やかに、紅絹の切をぴたぴたと、指を反らした手の捌き、波・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  4. ・・・「腕を、拳固がまえの握拳で、二の腕の見えるまで、ぬっと象の鼻のように私の目のさきへ突出した事があるんだからね。」「まだ、踊ってるようだわね、話がさ。」「私も、おばさん、いきなり踊出したのは、やっぱり私のように思われてならないのよ・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  5. ・・・と両手を組違えに二の腕をおさえて、頭が重そうに差俯向く。「むむ、そうかも知れねえ、昨夜そうやってしっかり胸を抱いて死んでたもの。ちょうど痛むのは手の下になってた処よ。」「そうでございますか、あの私はこうやって一生懸命に死にましたわ。・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  6. ・・・黄金を溶す炎のごとき妙義山の錦葉に対して、ハッと燃え立つ緋の片袖。二の腕に颯と飜えって、雪なす小手を翳しながら、黒煙の下になり行く汽車を遥に見送った。 百合若の矢のあとも、そのかがみよ、と見返る窓に、私は急に胸迫ってなぜか思わず落涙した・・・<泉鏡花「革鞄の怪」青空文庫>
  7. ・・・ これが薬なら、身体中、一筋ずつ黒髪の尖まで、血と一所に遍く膚を繞った、と思うと、くすぶりもせずになお冴える、その白い二の腕を、緋の袖で包みもせずに、……」 聞く欣八は変な顔色。「時に……」 と延一は、ギクリと胸を折って、抱・・・<泉鏡花「菎蒻本」青空文庫>
  8. ・・・当てると、そのまくれた二の腕に、お誓の膚が透通って、真白に見えたというのである。 銑吉の馬鹿を表わすより、これには、お誓の容色の趣を偲ばせるものがあるであろう。 ざっと、かくの次第であった処――好事魔多しというではなけれど、右の溌猴・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  9. ・・・ と二の腕を曲げて、件の釘を乳の辺へ齎して、掌を拡げて据えた。「どう致しまして。」「知らない?」「いえ、何、存じております。」「それじゃこれは。」「へい。」「女の脱髪。」 小宮山は慌しく、「どう致しまして・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  10. ・・・ 虫も殺さぬ顔をしているが、二の腕に刺青があり、それを見れば、どんな中学生もふるえ上ってしまう。女学生は勿論である。 そこをすかさず、金をせびる。俗に「ヒンブルを掛ける」のだ。 それ故の「ヒンブルの加代」だが、べつに「兵古帯お加・・・<織田作之助「夜光虫」青空文庫>
  11. ・・・両腕を屈伸させてぐりぐりを二の腕や肩につけて見ました。鏡のなかの私は私自身よりも健康でした。私は顔を先程したようにおどけた表情で歪ませて見ました。 Hysterica Passio ――そう云って私はとうとう笑い出しました。 一年中・・・<梶井基次郎「橡の花」青空文庫>
  12. ・・・両袖まくれてさすがに肉付の悪からぬ二の腕まで見ゆ。髪はこの手合にお定まりのようなお手製の櫛巻なれど、身だしなみを捨てぬに、小官吏の細君などが四銭の丸髷を二十日も保たせたるよりは遥に見よげなるも、どこかに一時は磨き立たる光の残れるが助をなせる・・・<幸田露伴「貧乏」青空文庫>
  13. ・・・の肉に気がついた……怒ったような青筋に気がついた……彼の二の腕のあたりはまだまだ繊細い、生白いもので、これから漸く肉も着こうというところで有ったが、その身体の割合には、足だけはまるで別の物でも継ぎ合わせたように太く頑固に発達していた……彼は・・・<島崎藤村「足袋」青空文庫>
  14. ・・・例えば、剣道の試合のとき、撃つところは、お面、お胴、お小手、ときまっている筈なのに、おまえたちは、試合も生活も一緒くたにして、道具はずれの二の腕や向う脛を、力一杯にひっぱたく。それで勝ったと思っているのだから、キタナクテね。」   ・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  15. ・・・懐中鏡を立掛けて、かかる場合に用意する黄楊の小櫛を取って先ず二、三度、枕のとがなる鬢の後毛を掻き上げた後は、捻るように前身をそらして、櫛の背を歯に銜え、両手を高く、長襦袢の袖口はこの時下へと滑ってその二の腕の奥にもし入黒子あらば見えもやする・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  16. ・・・ 薄紅の一枚をむざとばかりに肩より投げ懸けて、白き二の腕さえ明らさまなるに、裳のみは軽く捌く珠の履をつつみて、なお余りあるを後ろざまに石階の二級に垂れて登る。登り詰めたる階の正面には大いなる花を鈍色の奥に織り込める戸帳が、人なきをかこち・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  17. ・・・やがて二の腕へ力瘤が急に出来上がると、水を含んだ手拭は、岡のように肉づいた背中をぎちぎち磨り始める。 手拭の運動につれて、圭さんの太い眉がくしゃりと寄って来る。鼻の穴が三角形に膨脹して、小鼻が勃として左右に展開する。口は腹を切る時のよう・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  18. ・・・ カンカン火のある火鉢にも手をかざさず、きちんとして居た栄蔵は、フット思い出した様に、大急ぎでシャツの手首のところの釦をはずして、二の腕までまくり上げ紬の袖を引き出した。 久々で会う主婦から、うすきたないシャツの袖口を見られたくなか・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  19. ・・・浅黄の衿は白いくびにじゃれる蛇の様になよやかに巻きついて手は二の腕位まで香りを放ちそうに出て腰にまきついて居る緋縮緬のしごきが畳の上を這って居る。目をほそくして女はその前に音なしく座って居る男を見つめた。「そんなに見つめるのは御よし、私・・・<宮本百合子「お女郎蜘蛛」青空文庫>
  20. ・・・幸雄の二の腕を背広の男が捉えた。「何する!」「おとなしく君が病院へさえ来れば何でもないんだ」「騙したな? よくも此奴! 退け! 退きゃがれったら!」 幸雄が藻掻けば藻掻くほど、腕を捉えている手に力が入ると見え、彼は顔を顰め全・・・<宮本百合子「牡丹」青空文庫>
  21. ・・・手は二の腕から先で、指が動くようになっている。女の手は指をそろえたままで開いたり屈めたりする。三味線を弾く時などは個々の指の動く特別の手を使う。男の手は五本の指のパッと開く手、親指だけが離れて開く手など幾分種類が多い。しかし手そのものの構造・・・<和辻哲郎「文楽座の人形芝居」青空文庫>