ニュアンス【(フランス)nuance】例文一覧 30件

  1. ・・・の音のひっぱり方一つで、本当に連れて行ってほしいという気持やお愛想で言っている気持や、本当に連れて行ってくれると信じている気持や、客が嘘を言っているのが判っているという気持や、その他さまざまなニュアンスが出せるのである。ちょうど、彼女たちが・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  2. ・・・しかし日蓮宗の教徒ならぬわれわれにとっては、その教理がここで主なる関心ではなく、彼の信念、活動の歴史的意義、その人格と、行状と、人間味との独特のニュアンスとが問題なのである。 日蓮の性格と行動とのあとはわれわれに幾度かツァラツストラを連・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  3. ・・・たとえ言葉だけは精密に書き留めても、その時の顔の表情や声のニュアンスは全然失われてしまう。それだからある人の云った事を、その外形だけ正しく伝えることによって、話した本人を他人の前に陥れることも揚げることも勝手に出来る。これは無責任ないし悪意・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  4. ・・・ 大正年間の大噴火に押し出した泥流を被らなかったと思われる部分の山腹は一面にレモン黄色と温かい黒土色との複雑なニュアンスをもって彩られた草原に白く曝された枯木の幹が疎らに点在している。そうして所々に露出した山骨は青みがかった真珠のような・・・<寺田寅彦「雨の上高地」青空文庫>
  5. ・・・それだから、名状し難いいろいろな心持ちのニュアンスの象徴としては音のほうが画像よりもいっそう有力でありうるということになる。 たとえば「人生案内」の最後の景において機関車のほえるようなうめくような声が妙に人の臓腑にしみて聞こえる。「パリ・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  6. ・・・しかしきょうこのごろ日本でいわゆるジャーナリズムという言葉には、これ以外にいろいろ複雑な意味や、余味や、後味や、またニュアンスやがあってなかなか簡単に定義しひと口に説明することはできないようである。人に聞いてみても人によっていろいろと多少は・・・<寺田寅彦「ジャーナリズム雑感」青空文庫>
  7. ・・・打ち返されて露出している土でも乾燥の程度や遠近の差でみんなそれぞれに違った色のニュアンスがある。それらのかなりに不規則な平面的分布が、透視法という原理に統一されて、そこに美しい幾何学的の整合を示している。これらの色を一つ取りかえても、線を一・・・<寺田寅彦「写生紀行」青空文庫>
  8. ・・・ こういうふうに考えて来ると私には冒頭に掲げたアインシュタインの言詞がなんとなく一種風刺的な意味のニュアンスを帯びて耳に響く。 思うに一般相対性原理の長所と同時にまたいくらかの短所があるとすれば、いちばん痛切にそれを感じているのはア・・・<寺田寅彦「相対性原理側面観」青空文庫>
  9. ・・・同じレコードの中から今まで聞かれなかったいろいろの微細な音色のニュアンスなどが聞き分けられるのが不思議なくらいであった。ごまかしの八百倍の顕微鏡でのぞいたものをツァイスのでのぞいて見るような心持ちがした。精妙ないいものの中から、そのいいとこ・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  10. ・・・大きすぎる口、うすい眉毛さえが、特徴あるニュアンスになって、三吉の頭に影像をつくっている。そして彼女たちの姿が青く田甫のむこうにみえなくなったとき、しろくかわきあがった土堤道だけが足もとにのこったが、それはきのうもおとといも同じであった――・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  11. ・・・で示したニュアンスにとみ曲折におどろかない豊潤な資質は、その後の諸論集のなかでどのように展開されただろうかという問題である。 片上伸研究が「過渡期の道標」と題されたことは、示唆的である。著者は、芥川龍之介の敗北の究明とともに、小市民的土・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>
  12. ・・・たとえば帽子の型のある奇抜な面白味というようなものは、それを頂いている顔に漲っている知的な趣、体のこなし全体に溢れる女としての複雑な生活的な勁さ、ニュアンスなどとあいまって美しさとなるのだから、体の生活的感覚はそういうものからずっとおくれて・・・<宮本百合子「新しい美をつくる心」青空文庫>
  13. ・・・しかし私としては非常に、わずかのことしか知っていませんので、至極ぼんやりと、一九二九年以後アメリカの繁栄が蒙った変化につれて変化した文学、次第に成長し、ヨーロッパの良質な人をどんどんうけ入れてニュアンスを深めて来る「アメリカの明るさ」がどん・・・<宮本百合子「アメリカ我観」青空文庫>
  14. ・・・ そういう意味で、一九四五年以後日本の若い精神をとらえた自我自意識の問題は、日本の悲劇として独特のニュアンスをもった。「チボー家の人々」のジャックはそのときまでには次第に確立しかかっていた人間性、よりひろくより総合された社会的理解、理性・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  15. ・・・こうしてみると、あたまのよさにもまた、おのずから沢山の性格と結びついたニュアンスがあって、面白いものだと思う。「青髯八人目の妻」でコルベールがいう一寸した科白を、ある日本の作家が女性の洗練された話術の感覚の見本としてほめていたが、果してそれ・・・<宮本百合子「映画女優の知性」青空文庫>
  16. ・・・ロマンティックな要素、そしてその反面に根をはっている封建風なもの、この両者はそれぞれ独自なニュアンスをなして、云わばこの卓抜な二人の作家の正直さ、善良さ、真摯さの故に矛盾をも明かに示しつつ、生涯の実生活と作品とを綾どっている。 今日の日・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  17. ・・・民族のさまざまな特質やその特質を更に個性のニュアンスで音楽にうちこめている作品の再現としての演奏が、純粋に音の領域から入ってその精髄にふれてゆくことも、いろいろと考えさせて感興ふかかった。 音楽にも民族の性格が顕著なのは自然だが、その自・・・<宮本百合子「音楽の民族性と諷刺」青空文庫>
  18. ・・・友代の方言がうまいというばかりでなく心もちのニュアンスをつたえる表現としてこなされていたのは心持よいことであった。 そして、友代の成功であの芝居が真情的なものに貫かれていたとも云えそうなところに脚本としていろいろ興味ある問題がひそんでい・・・<宮本百合子「「建設の明暗」の印象」青空文庫>
  19. ・・・ こんにち、文壇の作家たちが、めいめいの特色となっている角度やニュアンスを失うまいとしながら社会の現実観と自己の創作方法との間に生じている悲劇的な裂けめにはさまって苦闘しているばかりではない。現代文学のその裂けめから、おびただしい土砂崩・・・<宮本百合子「現代文学の広場」青空文庫>
  20. ・・・只人間生活の歓び確信というものの、最も鋭い、最もニュアンスに富んだ、最も出来合いでないものの感じ得る陰翳――それによって明暗が益生彩を放つところの、動く生命力の発露として、苦痛をも亦愛し得るだけ生活的です。私があなたにあげる手紙の中で、我々・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  21. ・・・今日と同様だったかもしれないし、たぶん同様なのだろうが、自分がそのようにして一個の判断、見解をもっていないという事実に対する当人たちの自覚のありよう、感情の在りようは、何処か今日の人々の心とはちがったニュアンスを持っていた。 自分にはよ・・・<宮本百合子「今日の読者の性格」青空文庫>
  22. ・・・今日の日本の文化を語る時、私達はこの二年数ヵ月の間に経験された日本民主化のいくつかの段階の推移と、その推移の間に現われた極めて日本らしい特徴をもったそれぞれのニュアンスについての理解を必要とする。第一期 一九四五年八月十五日――一九・・・<宮本百合子「今日の日本の文化問題」青空文庫>
  23. ・・・という標語を「言葉のデリケエトなニュアンスの上に」うち立てたのであった。 フェルナンデスの云う「行動は人間の社会性を意味し、ヒューマニズムは個人の完成を意味する。」小松清氏の「行動主義理論」は更にフランスの行動主義文学の特殊な地位につい・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  24. ・・・モチーフは、テーマの直観的な端緒と云うとき、その現実の内容は豊富きわまりなく、或る一つの作品を一貫する文学的感動のニュアンスをきめるものもモチーフである。作者と作品と作品のつくられて来る現実という三つの関係へ、方向をつける必然の力として作者・・・<宮本百合子「作家に語りかける言葉」青空文庫>
  25. ・・・一種の皮肉をふくませたニュアンスでいわれた。 日本にプロレタリア文学運動が起り、それがしだいにまとまり整理されて世界的な動きの水準に接近したのは、一九二八年ころのことであった。プロレタリア文学は、その発生の本質において、そもそも既成のブ・・・<宮本百合子「作家の経験」青空文庫>
  26. ・・・その心持には、病人がはたの親切をへりくだった感謝でうけるというのとは、おのずからちがって複雑なニュアンスがこもっているのである。 思えば、妻は健かでなければならぬという常識の中に、何と深く動かしがたく、家というものにおける女の歴史的な立・・・<宮本百合子「『静かなる愛』と『諸国の天女』」青空文庫>
  27. ・・・なお、考えさせられることは、作者の人間に対して抱いている観念そのものが、作者の地主としての農村に於ける生活のニュアンスから蒙っている影響や、人間の生きようというものに対して時局が要求している調子に或る反響を示している点である。さもなければ、・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  28. ・・・を発表したということは、なかなか複雑な社会史的ニュアンスがこもっていると思う。 大体福沢諭吉が益軒の「女大学」を読んで、それに疑義を抱き、手控えをこしらえはじめたのは彼の二十五歳の年、大阪から江戸へ出た時代の事である。「学問のすすめ」は・・・<宮本百合子「女性の歴史の七十四年」青空文庫>
  29. ・・・それぞれニュアンスの相異はあるにしろ、戦争反対者は「赤」であるという事実の理解では一致していた。 ところが、今日になると、軍国主義者は共産主義者だといわれはじめた。この発言が事実と逆であり、愚劣であり、国際的な嘘であることがわからないで・・・<宮本百合子「世紀の「分別」」青空文庫>
  30. ・・・あれほど一字一句の使い方、置き方に気を配った歌、あれほど浮いたところのない、中味のびっしりとつまった歌、またあれほど濃かいニュアンスを出した歌が、技巧に熟達せずに作れるものではない。しかし先生の歌は、その巧みさを少しも感じさせないほど巧みな・・・<和辻哲郎「歌集『涌井』を読む」青空文庫>