にわ‐き〔には‐〕【庭木】例文一覧 20件

  1. ・・・その中に、庭木を鳴らしながら、蒸暑い雨が降り出した。自分は書きかけの小説を前に、何本も敷島へ火を移した。 Sさんは午前に一度、日の暮に一度診察に見えた。日の暮には多加志の洗腸をした。多加志は洗腸されながら、まじまじ電燈の火を眺めていた。・・・<芥川竜之介「子供の病気」青空文庫>
  2. ・・・     三 庭木 新しい僕の家の庭には冬青、榧、木斛、かくれみの、臘梅、八つ手、五葉の松などが植わっていた。僕はそれらの木の中でも特に一本の臘梅を愛した。が、五葉の松だけは何か無気味でならなかった。     四 「・・・<芥川竜之介「追憶」青空文庫>
  3. ・・・樫、梅、橙などの庭木の門の上に黒い影を落としていて、門の内には棕櫚の二、三本、その扇めいた太い葉が風にあおられながらぴかぴかと輝っている。 豊吉はうなずいて門札を見ると、板の色も文字の墨も同じように古びて「片山四郎」と書いてある。これは・・・<国木田独歩「河霧」青空文庫>
  4. ・・・月は冴えに冴え、まるで秋かとも思われるよう。庭木の影がはっきりと地に印している。足を爪立てるようにして中二階の前の生垣のそばまで来て、垣根越しに上を見あげた。二階はしんとしている。この時母屋でドッと笑い声がした。お梅はいまいましそうに舌うち・・・<国木田独歩「郊外」青空文庫>
  5. ・・・ ことしのお正月は、日本全国どこでもそのようでしたが、この地方も何十年振りかの大雪で、往来の電線に手がとどきそうになるほど雪が積り、庭木はへし折られ、塀は押し倒され、またぺしゃんこに潰された家などもあり、ほとんど大洪水みたいな被害で、連・・・<太宰治「嘘」青空文庫>
  6. ・・・「あれは、庭木が好きだから。」小坂氏は苦笑して、「どうぞ、ビイルを、しっかり。」 私はただ、ビイルをしっかり飲むばかりである。なんという迂濶な男だ。戦死と出征であったのに。 その日、小坂氏と相談して結婚の日取をきめた。暦を調・・・<太宰治「佳日」青空文庫>
  7. ・・・いらいらしながら家の庭木の手入れなどをして、やっと昼頃になってから僕はまたでかけたのだ。まだしまっていたのである。こんどは僕も庭のほうへまわってみた。庭の五株の霧島躑躅の花はそれぞれ蜂の巣のように咲きこごっていた。紅梅は花が散ってしまってい・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  8. ・・・それにまた、庭木の雪がこいが、たいへんだ。」「やっかいなものですね。」と居候の弟は、おっかなびっくり合槌を打つ。 兄は真面目に、「昔は出来たのだが、いまは人手も無いし、何せ爆弾騒ぎで、庭師どころじゃなかった。この庭もこれで、出鱈・・・<太宰治「庭」青空文庫>
  9. ・・・松やもっこくやの庭木を愛するのがファシストならば、蔦や藤やまた朝貌、烏瓜のような蔓草を愛するのがリベラリストかもしれない。しかし草木を愛する限りの人でマルキシストになれる人があろうとは想われない。         八 防空演・・・<寺田寅彦「KからQまで」青空文庫>
  10. ・・・そして生気に乏しいいわゆる「庭木」と称する種類のものより、むしろ自然な山野の雑木林を選みたい。 しかしそのような過剰の許されない境遇としては、樹木のほうは割愛しても、芝生だけは作らないではいられなかった。そうして木立ちの代わりに安価な八・・・<寺田寅彦「芝刈り」青空文庫>
  11. ・・・地上七十余尺の頂上まで上ってしばらく四方を展望していると思うと、突然石でも落とすようにダイヴするが途中から急に横にそれて、直角双曲線を空中に描きながらどこかの庭木へ飛んで行く。しばらくするとまた煙突の梯子へもどって来てそうして同じ遊戯を繰り・・・<寺田寅彦「藤棚の陰から」青空文庫>
  12. ・・・崖の上には裏口の門があったり、塀が続いたりして、いい屋敷の庭木がずっと頭の上へ枝を伸ばしていた。昔から持ち続いた港の富豪の妾宅なぞがそこにあった。「あれはどうしたかね、彦田は」「ああすっかり零落れてしまいました。今は京都でお茶の師匠・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  13. ・・・母家から別れたその小さな低い鱗葺の屋根といい、竹格子の窓といい、入口の杉戸といい、殊に手を洗う縁先の水鉢、柄杓、その傍には極って葉蘭や石蕗などを下草にして、南天や紅梅の如き庭木が目隠しの柴垣を後にして立っている有様、春の朝には鶯がこの手水鉢・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  14. ・・・やけたあとの土に庭木は育たなくなった。そのかわり、猛烈な雑草の繁殖力があらわれた。ひとの背たけの倍ほどもある鬼蓼が昔、森鴎外の住んでいた観潮楼のやけあとにも生えた。 一九四六年一月から、日本の現代文学は、平和に向って解放された。人間性の・・・<宮本百合子「「下じき」の問題」青空文庫>
  15. ・・・  ○すっかり黄色くなった梧桐の葉、  ○その落葉のひっかかっている槇の木の枝  ○きのうの雨でまだしめっぽく黒く見えている庭木の幹。 離れの方から マンドリンとピアノの合奏がきこえて来る。◎ひどく雨が降っている。・・・<宮本百合子「情景(秋)」青空文庫>
  16. ・・・ 青い実のついている梅 かさだけ時代もので、胴がよせもののとうろう、 つつじ 杉、しゃぼてんの鉢          ――○―― かた木の庭木 大名竹 槇 周防の花 下ぬりのまま五六年たった壁。 床の間に紫檀の台、・・・<宮本百合子「Sketches for details Shima」青空文庫>
  17. ・・・からたちの垣に白い花が咲くころ、柔かくゆたかな青草が深くしげったその廃園の趣は、昔、植えられた古い庭木が枝をさしかわししげっているためもあって、云うに云えない好奇のこころを動かされた。からたち垣のこわれたところから、女の子はあこがれのこころ・・・<宮本百合子「田端の汽車そのほか」青空文庫>
  18. ・・・ 庭木は、今年になって、又一本、柔かい、よく草花とあしらう常緑木の一種を殖し、今では、狭い乍ら、可愛ゆい我等の小庭になった。 夏福井から持って来た蘭もある、苔も美しく保たれて居る。あの赤ちゃけて、きたなかった庭は、もう何処にも思い出・・・<宮本百合子「小さき家の生活」青空文庫>
  19. ・・・お金はまだ降っているかしらと思って、耳を澄まして聞いているが、折々風がごうと鳴って、庭木の枝に積もった雪のなだれ落ちる音らしい音がする外には、只方々の戸がことこと震うように鳴るばかりで、まだ降っているのだか、もう歇んでいるのだか分からない。・・・<森鴎外「心中」青空文庫>
  20.  東京の郊外で夏を送っていると、時々松風の音をなつかしく思い起こすことがある。近所にも松の木がないわけではないが、しかし皆小さい庭木で、松籟の爽やかな響きを伝えるような亭々たる大樹は、まずないと言ってよい。それに代わるものは欅の大樹で、・・・<和辻哲郎「松風の音」青空文庫>