にん‐しん【妊娠】例文一覧 24件

  1. ・・・が、ちょうど妊娠しているために、それを断行する勇気がありません。そこで達雄に愛されていることをすっかり夫に打ち明けるのです。もっとも夫を苦しめないように、彼女も達雄を愛していることだけは告白せずにしまうのですが。 主筆 それから決闘にで・・・<芥川竜之介「或恋愛小説」青空文庫>
  2. ・・・金将軍はふと桂月香の妊娠していることを思い出した。倭将の子は毒蛇も同じことである。今のうちに殺さなければ、どう云う大害を醸すかも知れない。こう考えた金将軍は三十年前の清正のように、桂月香親子を殺すよりほかに仕かたはないと覚悟した。 英雄・・・<芥川竜之介「金将軍」青空文庫>
  3. ・・・のみならず妊娠しているらしかった。僕は思わず顔をそむけ、広い横町を曲って行った。が、暫らく歩いているうちに痔の痛みを感じ出した。それは僕には坐浴より外に瘉すことの出来ない痛みだった。「坐浴、――ベエトオヴェンもやはり坐浴をしていた。……・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  4. ・・・そして妊娠でありました。……私たちは、もう長い間、このさびしい、話をするものもない、北の青い海の中で暮らしてきたのだから、もはや、明るい、にぎやかな国は望まないけれど、これから産まれる子供に、せめても、こんな悲しい、頼りない思いをさせたくな・・・<小川未明「赤いろうそくと人魚」青空文庫>
  5. ・・・そして妊娠でありました。私達は、もう長い間、この淋しい、話をするものもない、北の青い海の中で暮らして来たのだから、もはや、明るい、賑かな国は望まないけれど、これから産れる子供に、こんな悲しい、頼りない思いをせめてもさせたくないものだ。 ・・・<小川未明「赤い蝋燭と人魚」青空文庫>
  6. ・・・あんたを探していたのだと、友子は顔を見るなりもう涙を流していた。妊娠しているのだと聞かされ、豹一ははっとした。友子は白粉気もなくて蒼い皮膚を痛々しく見せていた。豹一は友子と結婚した。家の近くに二階借りして、友子と暮した。豹一は毎日就職口を探・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  7. ・・・驚いて口をはなし、手で柔く押えると、それでも痛いという、血がにじんでも痛いとは言わなかった女だったのに、妊娠したのかと乳首を見たが黒くもない。何もせぬのに夜通し痛がっていたので、乳腺炎になったのかと大学病院へ行き、歯形が紫色ににじんでいる胸・・・<織田作之助「競馬」青空文庫>
  8. ・・・私はあの人の妻だもの。そんな風にして眠ってしまったあの人の寝顔を見ていると、私は急にあてどもない嫉妬を感じた。あの人は私のもの、私だけのものだ。私は妊娠しているのです。 私は生れて来る子供のためにもあの人に偉くなって貰わねばと思い、以前・・・<織田作之助「天衣無縫」青空文庫>
  9. ・・・掛けては置くものだと、それをもって世間狭い大阪をあとに、ともあれ東京へ行く、その途中、熱海で瞳は妊娠していると打ち明けた。あんたの子だと言われるまでもなく、文句なしにそのつもりで、きくなり喜んだが、何度もそれを繰りかえして言われると、ふと松・・・<織田作之助「雪の夜」青空文庫>
  10. ・・・ことに妊娠というようなことにでもなれば、抜き差しならぬ破目に陥ることがある。これは充分警戒しなければならぬことだ。ダンサー、女給、仲居、芸者等いわゆる玄人の女性は気をつけねばならぬ。ことに自分より年増の女は注意を要する。      ・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  11. ・・・婦人には月々の生理週間と妊娠と分娩後の静養と哺乳との、男子にはない特殊事情がある。これは自然が婦人に課したる特殊負荷であって厳粛なものでありこれがある以上、決して、職業の問題について、男子と婦人とを同一に考えるべきものではない。この意味にお・・・<倉田百三「婦人と職業」青空文庫>
  12. ・・・まだその時は妊娠中だった妻は、けだるそうにして、子供たちをうるさがった。 暫らくたって、主人は、与助が帰ったかどうかを見るために、醸造場の方へやって来た。主人を見ると、与助は、積金だけは、下げて呉れるように、折入って頼んだ。 主・・・<黒島伝治「砂糖泥棒」青空文庫>
  13. ・・・ 坑夫は洞窟の周囲に、だにのように群がりついて作業をつゞけた。妊娠三カ月になる肩で息をしている女房や、ハッパをかけるとき、ほかの者よりも二分間もさきに逃げ出さないと逃げきれない脚の悪い老人が、皆と一緒に働いていた。そこにいる者は、脚の趾・・・<黒島伝治「土鼠と落盤」青空文庫>
  14. ・・・例えば女の天性妊娠するの約束なるが故に妊娠中は斯く/\の摂生す可しと、特に女子に限りて教訓するが如きは至極尤に聞ゆれども、男女共に犯す可らざる不徳を書並べ、男女共に守る可き徳義を示して、女ばかりを責るとは可笑しからずや。犬の人にかみつきて却・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  15. ・・・一 婦人の妊娠出産は勿論、出産後小児に乳を授け衣服を着せ寒暑昼夜の注意心配、他人の知らぬ所に苦労多く、身体も為めに瘠せ衰うる程の次第なれば、父たる者は其苦労を分ち、仮令い戸外の業務あるも事情の許す限りは時を偸んで小児の養育に助力し、暫く・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  16. ・・・ アメリカやイギリスその他の国々で、看護婦の私的生活は、職務からすっかりきりはなされていて、例えば結婚して妊娠すれば、母となるという仕事は、看護婦という職業の面からきりはなされて、その人個人の処置にゆだねられます。モスクワの病院では、労・・・<宮本百合子「生きるための協力者」青空文庫>
  17. ・・・彼女は妊娠している。うつむきながら、決心と期待と不安とをこめて一つ二つと左手でノックする。右の手は、重い腹をすべって垂れ下っている粗いスカートを掴むように握っている。「医者のもとで」という題のこのスケッチには不思議に心に迫る力がこもって・・・<宮本百合子「ケーテ・コルヴィッツの画業」青空文庫>
  18. ・・・女が妊娠しても男は責任を負わない。 それでも女は訴えるところがない。フランスの恋愛技術は男より数の多すぎる女の経済的必要から進歩して居るかも知れないが、社会的にはそういう風な個人的なものである。             * ソヴ・・・<宮本百合子「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」青空文庫>
  19. ・・・ その婆さんが話したが、呉服橋ぎわの共同便所の処で三十七人死んだ、その片われの三人が助かった様子、中二人は夫婦で若く、妻君は妊娠中なので、うしろの河に布団をしずめて河に入れて置いたが、水が口まで来てアプアプするので、仕方なく良人も河にと・・・<宮本百合子「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」青空文庫>
  20. ・・・ マリーナは、合点合点をし、ダーリヤの滑らかな血色のよい頬を情をこめて撫でたたいた。「可愛いダーシェンカ、あんたは優しいいい娘さんですよ、――どうか立派な児供が生れますように」 妊娠のために感じ易くなっているダーリヤはマリーナを・・・<宮本百合子「街」青空文庫>
  21. ・・・女が子を持てなければ去るべし、といいながら、女の妊娠期間への注意、分娩や育児への忠言は与えず、「古の法にも女子を産ば三日床の下に臥さしむと云えり」という風である。 益軒の時代は、さっき触れたような商人擡頭の時代であって、歌舞、音曲、芝居・・・<宮本百合子「三つの「女大学」」青空文庫>
  22. ・・・ 子が無くて夫に別れてから、裁縫をして一人で暮している女なので、外の医者は妊娠に気が附かなかったのである。 この女の家の門口に懸かっている「御仕立物」とお家流で書いた看板の下を潜って、若い小学教員が一人度々出入をしていたということが・・・<森鴎外「カズイスチカ」青空文庫>
  23. ・・・伊織は、丁度妊娠して臨月になっているるんを江戸に残して、明和八年四月に京都へ立った。 伊織は京都でその年の夏を無事に勤めたが、秋風の立ち初める頃、或る日寺町通の刀剣商の店で、質流れだと云う好い古刀を見出した。兼て好い刀が一腰欲しいと心掛・・・<森鴎外「じいさんばあさん」青空文庫>
  24. ・・・ ところで私もまた、『新生』が出始めた時分に、主人公が女主人公の妊娠を知って急に苦しみ始める個所を読んで、それから先を読み続けるのをやめた一人である。世間に知れるという怖れが主人公の苦しみの原因であって、初めに女主人公と関係したことは何・・・<和辻哲郎「藤村の個性」青空文庫>