ぬけ‐め【抜け目】例文一覧 14件

  1. ・・・僕の体のまわりにゃ、抜け目なくあの婆が網を張っているからって。」「大きにそうだっけ。だがまさか――まさかその麦酒のコップへ、あの婆が舌を入れて、一口頂戴したって次第でもなかろう。それならかまわないから、干してしまい給え。」――こう云う具合に・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  2. ・・・恋を雑に、スマートに、抜け目なく、取り扱わないようにくれぐれもいましめたい。結婚後の恋愛は蜜月や、スイートホームの時期をへて、次第に、真面目な地についた人生の営みのなかにはいってゆく。こうして夫婦愛が恋愛の健全な推移としてあらわれてくる。そ・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  3. ・・・もともと、抜け目の無い男で、「オベリスク」の編集は世間へのお体裁、実は闇商売のお手伝いして、いつも、しこたま、もうけている。けれども、悪銭身につかぬ例えのとおり、酒はそれこそ、浴びるほど飲み、愛人を十人ちかく養っているという噂。 かれは・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  4. ・・・女の子って、実に抜け目が無く、自分の事ばかり考えて、ちゃっかりしているものだと思った。織女さまのおよろこびに附け込んで、自分たちの願いをきいてもらおうと計画するなど、まことに実利的で、ずるいと思った。だいいち、それでは織女星に気の毒である。・・・<太宰治「作家の手帖」青空文庫>
  5. ・・・そう呟いてから、さも抜け目のない男のようにふいと全くちがった話を持ちだすのである。彼はずっと前からこの父をきらっていた。虫が好かないのだった。幼いときから気のきかないことばかりやらかしていたからでもあった。母はだらしのないほど彼を尊敬してい・・・<太宰治「猿面冠者」青空文庫>
  6. ・・・誇張した言い方をするなら、ほとんど這うようにして栃木県の生家にたどりつき、それから三箇月間も、父母の膝下でただぼんやり癈人みたいな生活をして、そのうちに東京の、学生時代からの文学の友だちで、柳田という抜け目の無い、なかなかすばしこい人物が、・・・<太宰治「女類」青空文庫>
  7. ・・・手を抜いたごまかしの作品でも何でもよい、とにかく抜け目なくジャアナリズムというものにねばって、二十年、先輩に対して礼を尽し、おとなしくしていると、どうやらやっと、「信頼」を得るに到るようであるが、そこまでは、私にもさすがに、忍耐力の自信が無・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  8. ・・・もし講義の内容が抜け目なく系統的に正確な知識を与えさえすればいいとならば、何も器械の助けを借りるまでもなくその教師の書いた原稿のプリントなり筆記なりを生徒に与えて読ませれば済む場合もあるわけである。甲の講義を乙が述べてもそれでたくさんなわけ・・・<寺田寅彦「蓄音機」青空文庫>
  9. ・・・ 体の小柄な、黒い顔のテカテカした年より大変老けて見える父親は、素末な紺がすりに角帯をしめて、関西の小商人らしい抜け目がないながら、どっか横柄な様な態度で、主婦の事を、 お家はん、お家はん。と云って、話して居た。 此・・・<宮本百合子「黒馬車」青空文庫>
  10. ・・・金持というのが漫画にあるように袋に金を詰めて金庫に溜めて、金鎖の太いのをお腹の上にたらしているような罪のないものならば、漫画にしておけばすむのですけれども、本当の資本家というのはそれはそれは抜け目がない。私共がわずかのお金で魔法みたいにして・・・<宮本百合子「幸福の建設」青空文庫>
  11. ・・・のスカーレット・オハラの強烈な性格と生活力にかかわらず、バトラーの抜け目なさにかかわらず、彼らのところで経験されたのは状況と境遇とにすぎなかった。アプトン・シンクレアの「ラニー・バッド」は、尨大なアメリカ式切抜きと整理の事業である。作者は、・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  12. ・・・この精神的影響の上に数万円のハガキ代と、運動費、夥しい労力の消耗との結果、新たに八つの俗地が提灯持ち的に紹介されるに過ぎず、結局日日新聞の広告が全国的に最も有効に行われた事実に帰着するのみだとすると、抜け目なき脳味噌よ、悪魔に喰われろ、と云・・・<宮本百合子「夏遠き山」青空文庫>
  13. ・・・ 云うことを許されれば、時の概念は、余り皮相的にあまり抜け目なく、地球の面に割りあてられすぎました。さながら碁盤の目のように一つの石、人間が動けば必ずどこかの筋目に入らないと安心しない。四角のどの目にか入れば入ったという事実そのものがさ・・・<宮本百合子「われを省みる」青空文庫>
  14. ・・・ひとり出かけて行って秋三の狡さを詰ろうかとも思ったが、それは矢張り自分にとって不得策だと考えつくと、今更安次を連れて来てにじり附けた秋三の抜け目のない遣方に、又腹立たしくなって来た。 安次は食べ終ると暫く缶詰棚を眺めながら、「しびは・・・<横光利一「南北」青空文庫>