ねつ‐い【熱意】例文一覧 30件

  1. ・・・三十にもなろうとする息子をつかまえて、自分がこれまでに払ってきた苦労を事新しく言って聞かせるのも大人気ないが、そうかといって、農場に対する息子の熱意が憐れなほど燃えていないばかりでなく、自分に対する感恩の気持ちも格別動いているらしくも見えな・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  2. ・・・道士は凡ての反感に打克つだけの熱意を以て語ろうとしたが、それには未だ少し信仰が足りないように見えた。クララは顔を上げ得なかった。 そこにフランシスがこれも裸形のままで這入って来てレオに代って講壇に登った。クララはなお顔を得上げなかった。・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  3. ・・・お前たちの為めに最後まで戦おうとする熱意が病熱よりも高く私の胸の中で燃えているのみだった。 正月早々悲劇の絶頂が到来した。お前たちの母上は自分の病気の真相を明かされねばならぬ羽目になった。そのむずかしい役目を勤めてくれた医師が帰って後の・・・<有島武郎「小さき者へ」青空文庫>
  4. ・・・実に母と子の関係は奇蹟と云っても可い程に尊い感じのするものであり、また強い熱意のある信仰である。そして、母と子の愛は、男と女の愛よりも更に尊く、自然であり、別の意味に於て光輝のあるもののように感ずる。 私は多くの不良少年の事実に就いては・・・<小川未明「愛に就ての問題」青空文庫>
  5. ・・・それが最初少数の信者であったにしても、その熱意の存するかぎり、永久に働きかけるものです。真の芸術の強味はこゝにあります。芸術戦線の戦士は、すべからくこの信念に生きなければならぬものです。 都会に、多くの作家があり、農村に多くの作家がある・・・<小川未明「作家としての問題」青空文庫>
  6. ・・・ 堯はこの頃生きる熱意をまるで感じなくなっていた。一日一日が彼を引き摺っていた。そして裡に住むべきところをなくした魂は、常に外界へ逃れよう逃れようと焦慮っていた。――昼は部屋の窓を展いて盲人のようにそとの風景を凝視める。夜は屋の外の物音・・・<梶井基次郎「冬の日」青空文庫>
  7. ・・・ 今日、こういう過程を経た新聞人の進歩的な要素が、わたしたち人民の、ひろく強く生き進もうとする熱意と本当に自然な一致をもって結び合わされつつあるのは、実に意義深いことだと思う。言論が客観的な真理に立つ可能とその必然をますと共に、人民の生・・・<宮本百合子「明日への新聞」青空文庫>
  8. ・・・どう現実のものとしてゆくかということは、私たちの熱意と実行力にかかっております。<宮本百合子「明日を創る」青空文庫>
  9. ・・・は、弟の死という事実に面して、その悲しみをどこまでも客観的に追究し、記録しておこうとする熱意によってかかれた短篇である。今日、よみかえしてみて興味のある点は、この短篇が、死という自然現象を克明に追跡しながら、弟をめぐる人間関係が、同じ比重で・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」青空文庫>
  10. ・・・民主主義革命とその文学とは、日本の全人民の、民主的な人間革命をこそ、広汎で重大な任務としてできる限りの熱意で達成してゆかなければならない。民主的で、人間的な社会進歩に対する善意を、普通の市民的標準の意志と肉体の堅忍とで保ってゆくことができる・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」青空文庫>
  11. ・・・そして、この不幸は母親ばかりの責任ではなく、我もろとも十分に知りつくしている昨今の東京の交通地獄の凄じさに対して、熱意ある解決をしない運輸省の怠慢について、注意を喚起した。 世間の輿論は、不幸な母親由紀子さんに同情を示し、結局、東京検事・・・<宮本百合子「石を投ぐるもの」青空文庫>
  12. ・・・少なからぬ困難が予想されるが、私は読者の忍耐と誠意と自身の熱意とに信頼して、この仕事をやって見る。この人生に明らかな知性と豊かで健全な人間的情熱の発動を熱望する一人の作家が、今日の現実を見る勉強としてやって見るつもりである。日本文学史全巻を・・・<宮本百合子「意味深き今日の日本文学の相貌を」青空文庫>
  13. ・・・彼等の俳優としてのそういう熱意が快く感じられると共に、中国の現実そのものの力が、今日国際的な関心の性質を次第に真面目な人間的なリアリスティックなものに変えつつあることを痛感したのである。 ただ残念なことにこの「大地」もアメリカ映画特有の・・・<宮本百合子「映画の語る現実」青空文庫>
  14. ・・・そういう問題をはなすについても、大町さんの正直さ、人間として一番よく生きてゆこうとしている熱意が感じられ、親愛と信頼とを感じた。大町さんは、けっきょく、もっとも責任のある愛情のえらびかたをして生活条件とすれば困難のより多い故大町氏との結婚を・・・<宮本百合子「大町米子さんのこと」青空文庫>
  15. ・・・自身の敗北の十分な意識の上に立って、その社会的・歴史的要因を作品の中でつきつめようとする熱意を欠いていることである。あらゆる進歩的なインテリゲンツィアと勤労者に、その敗因が全くひとごとではない連帯的な現実の中にあるということを、芸術の息吹に・・・<宮本百合子「落ちたままのネジ」青空文庫>
  16. ・・・背景をなして、若い人々の生活の満ち漲った熱意と着実な営みとが感じとられたとき、その行進は、感動的なものとなるのである。 若い娘たち、妻たち、そして若い母たちはこれからますます群れを組み、街上を行進する機会を多くもつのだろうが、そういう行・・・<宮本百合子「女の行進」青空文庫>
  17. ・・・を宮本が生きて、これから先何年もそこですごさなければならない見当さえつかない未決にまわった記念のために、ちゃんとした小説に書き上げたいと思う熱意があった。そのために一ヵ月余、継続的に仕事をした。ある部分は数度かき直された。そして「乳房」と題・・・<宮本百合子「解説(『風知草』)」青空文庫>
  18. ・・・作者は、しかし、人道的であり集団的活動の熱意をもって働いている主人公のありかたについて、もう一つ深めてみてもよかったと思う。主人公の僚友に対する責任感が、自身患者であるその人個人の安静の犠牲によって果されるしかないという療養所内の現実が、も・・・<宮本百合子「『健康会議』創作選評」青空文庫>
  19. ・・・ストライキ委員会は、それだけの熱意で兵営内闘争をやってくれと云い、兵士と従業員は革命的挨拶を交して別れたということも聞いた。 地下鉄、出札と聞いた瞬間、自分は一種の重圧をもって稲妻のようにそれらの闘争を思い起した。あのような顕著なストラ・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  20. ・・・カロッサが大戦後のドイツの生活のなかから希望と精神の確乎とした人間成長の可能を見出だそうとした熱意が限界を持ちながらも真面目に伝えられています。はじめて小説らしい小説を読んだから、感銘が新鮮でいつか余程前にジャムの「夜の歌」を読んでもらって・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  21. ・・・が、誰も非常な熱意に燃えて革命を起す人々ではない。我々の胸の中に納まっている種々な希望や意向などの囁きに耳を傾けながら、或る程度まで其等の実行出来難い今日をありのまま受取って穏かな日常生活を続ける一群が、彼の友達らしく見えるのである。・・・<宮本百合子「最近悦ばれているものから」青空文庫>
  22. ・・・わたしたちは、もっともっと自分たちの現実を自分たちのものとして改善してゆく熱意を自覚すべきだし、その具体的な方法のために智慧と勇気とをもたなければならないと思う。 この小さい本の中でふれられているいくつかの日本の社会生活の民主的発展のた・・・<宮本百合子「再版について(『私たちの建設』)」青空文庫>
  23. ・・・先ず、作品と作者との関係は、作者の主観的な意欲や創作熱意だけで解決する簡単なものではない。一方的に作者の主観的な意欲や創作熱に基いて表現的努力にばかり傾いて行くと、そこには作品の制作という作品そのものの支配はあっても、作者と作品との関係に対・・・<宮本百合子「作家に語りかける言葉」青空文庫>
  24. ・・・ 飛び交う数字と一種名状すべからざる緊張した熱意で飽和している空気の中をそっと、一人の婦人党員が舞台から日本女のところへきた。彼女は日本女の耳に口をつけて云った。 ――ようこそ! どこからです? ――日本から。 囁きかえした・・・<宮本百合子「三月八日は女の日だ」青空文庫>
  25. ・・・働きつつ学びたいと希望し、美しさとたのしみと勇気の源泉をなじみふかい母国の風土と生活のたたかいのうちに発見し、それを文学に絵画に、映画に音楽に再現し、発展させてゆこうとする熱意を、わたしたちでない誰がその体の内に熱く感じているというのだろう・・・<宮本百合子「三年たった今日」青空文庫>
  26. ・・・彼自身が後年自分の前に空間と自己自らの熱意の投影しか見なかったと告白していることは、よく彼の作家的現実を説明している。ジイドは、作品そのものよりむしろその作品に至るまでの彼の内的過程が注目と興味とを牽く特別な作家の一人なのである。 一九・・・<宮本百合子「ジイドとそのソヴェト旅行記」青空文庫>
  27. ・・・ジャーナリスト自身とくに日本のジャーナリストとしてこの点にどんな熱意がもたれているだろうか。わたしは、この点についてほんとに知りたい。わたしたちの未来への設計としてそのところが知りたい。 出版危機という表現で出版界の再編成、より大き・・・<宮本百合子「ジャーナリズムの航路」青空文庫>
  28. ・・・ 次第に覚醒している日本の民衆が肚の底からそのためにたたかっているより明るい確かな社会生活建設の願いと努力、その間には裏切られ、又もりかえす民衆の歴史の熱意は「横になった令嬢」と何のかかわりがあるだろう。中国の民衆を愚昧無気力にしておく・・・<宮本百合子「商売は道によってかしこし」青空文庫>
  29. ・・・傍目もふらぬそれぞれの人間と事象との在りようを、作者がまた傍目もふらず跟いて行く、その熱中の後姿に、文学に於ける人間再生の熱意、ヒューメンなものが認められるという工合でもあった。 知性の作家と呼ばれた阿部知二がこの時期に発表した「冬の宿・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  30. ・・・ 元来、品川の伯父さんと呼ばれた方が、事業上の熱意のほかにどんな趣味をもって居られたかは知らないが、孝子夫人の母上、現子夫人は、今日高齢にかかわらず、猶読書が唯一のたのしみとなっている方である。兄上の谷口辞三郎氏は、早い頃フランス文学を・・・<宮本百合子「白藤」青空文庫>