ねっ‐きょう〔‐キヤウ〕【熱狂】例文一覧 23件

  1. ・・・何の為に熱狂したのかは「改造」社主の山本氏さえ知らない。 すると偉大なる神秘主義者はスウエデンボルグだのベエメだのではない。実は我々文明の民である。同時に又我々の信念も三越の飾り窓と選ぶところはない。我々の信念を支配するものは常に捉え難・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・このチョコレットの代わりにガランスが出てきてみろ、君たちはこれほど眼の色を変えて熱狂しはしなかろう。ミューズの女神も一片のチョコレットの前には、醜い老いぼれ婆にすぎないんだ。ミューズを老いぼれ婆にしくさったチョコレットめ、芸術家が今復讐する・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  3. ・・・場内の熱狂した群衆は、私の姿など目にも留めない。 そのうちに閉場の時刻が来た。ガランガランという振鈴の音を合図に、さしも熱しきっていた群衆もゾロゾロ引挙げる。と、小使らしい半纒着の男が二人、如露と箒とで片端から掃除を始める。私の傍の青い・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  4. ・・・すると、元来熱狂し易い彼は、寿子を大物にするために、すべてを犠牲にしようと思った。 彼はヴァイオリン弾きとしての自分の恵まれぬ境遇を振りかえってみた。そして、自分の音楽への情熱と夢を、娘の寿子によって表現しようと、決心したのである。・・・<織田作之助「道なき道」青空文庫>
  5. ・・・実に日蓮が闘争的、熱狂的で、あるときは傲慢にして、風波を喜ぶ荒々しき性格であるかのように見ゆる誤解は、この身延の隠棲九年間の静寂と、その間に諸国の信徒や、檀那や、故郷の人々等へ書かれた、世にもやさしく美しく、感動すべき幾多の消息によって、完・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  6. ・・・ 以て如何に熱狂的だったかが知れるだろう。今度は、日清戦争のときの比ではなかった。戦争小説は、量的には無数に現れた。江見水蔭だけでも、百三十四篇を書いている。しかしながら、その多くは日清戦争当時と同じく、真面目な文学的努力になる・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  7. ・・・ しかし、これほどの熱狂もいつのまにか三郎の内を通り過ぎて行った。伸び行くさかりの子供は、一つところにとどまろうとしていなかった。どんどんきのうのことを捨てて行った。「オヤ――三ちゃんの『早川賢』もどうしたろう。」 と、ふと私が・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  8. ・・・愚かには違い無いが、けれども、此の熱狂的に一直線の希求には、何か笑えないものが在る。恐ろしいものが在る。女は玩具、アスパラガス、花園、そんな安易なものでは無かった。この愚直の強さは、かえって神と同列だ。人間でない部分が在る、と彼は、真実、驚・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  9. ・・・ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、トマス、痴の集り、ぞろぞろあの人について歩いて、脊筋が寒くなるような、甘ったるいお世辞を申し、天国だなんて馬鹿げたことを夢中で信じて熱狂し、その天国が近づいたなら、あいつらみんな右大臣、左大臣にでもなるつもりなのか・・・<太宰治「駈込み訴え」青空文庫>
  10. ・・・旅行から帰って、少しずつ仕事をすすめているうちに、私はあなたに対して二十年間持ちつづけて来た熱狂的な不快な程のあこがれが綺麗さっぱりと洗われてしまっているのに気が附きました。胸の中が、空のガラス瓶のように涼しいのです。あなたの作品を、もちろ・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  11. ・・・僕は幾番となく負けて、そのうちにだんだん熱狂しはじめたようであった。部屋が少しうすぐらくなったので、縁側に出て指しつづけた。結局は、十対六くらいで僕の負けになったのであるが、僕も青扇もぐったりしてしまった。 青扇は、勝負中は全く無口であ・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  12. ・・・私たちの雑誌の性質上、サロンの出いりも繁く、席上、太宰さんの噂など出ますけれど、そのような時には、春田、夏田になってしまって熱狂の身ぶりよろしく、筆にするに忍びぬ下劣の形容詞を一分間二十発くらいの割合いで猛射撃。可成りの変質者なのです。以後・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  13. ・・・鶴は熱狂的に高慢であった。云々。暑中休暇がおわって、十月のなかば、みぞれの降る夜、ようやく脱稿した。すぐまちの印刷所へ持って行った。父は、彼の要求どおりに黙って二百円送ってよこした。彼はその書留を受けとったとき、やはり父の底意地のわるさを憎・・・<太宰治「猿面冠者」青空文庫>
  14. ・・・そのうちに主人が私に絵をかく事をすすめて、私は主人を信じていますので、中泉さんのアトリエに通う事になりましたが、たちまち皆さんの熱狂的な賞讃の的になり、はじめは私もただ当惑いたしましたが、主人まで真顔になって、お前は天才かも知れぬなどと申し・・・<太宰治「水仙」青空文庫>
  15. ・・・目的の無い異様な熱狂に呆れたのである。あとには、私たち三人だけが残った。三馬鹿と言われた。けれども此の三人は生涯の友人であった。私には、二人に教えられたものが多く在る。 あくる年、三月、そろそろまた卒業の季節である。私は、某新聞社の入社・・・<太宰治「東京八景」青空文庫>
  16. ・・・謂わば、ろれつが廻らない程に熱狂的である。しどろもどろである。訳文の古拙なせいばかりでも無いと思う。「わが誇るは益なしと雖も止むを得ざるなり、茲に主の顕示と黙示とに及ばん。我はキリストにある一人の人を知る。この人、十四年前に第三の天にま・・・<太宰治「パウロの混乱」青空文庫>
  17. ・・・こいつが、アレキサンダア・デュマの大ロマンスを読んで熱狂し、血相かえて書斎から飛び出し、友を選ばばダルタニアンと、絶叫して酒場に躍り込んだようなものなのだから、たまらない。めちゃめちゃである。まさしく、命からがらであった。 同じ失敗を二・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  18. ・・・けれども、男は、熱狂した。精神の女人を、宗教でさえある女人をも、肉体から制御し得る、という悪魔の囁きは、しばしば男を白痴にする。そのころの東京には、モナ・リザをはだかにしてみたり、政岡の亭主について考えてみたり、ジャンヌ・ダアクや一葉など、・・・<太宰治「火の鳥」青空文庫>
  19. ・・・また、その本能的な言動が、かえって王子を熱狂させる程の魅力になっていたのだというのも容易に推察できる事でございます。けれども、果してラプンツェルは、あきらめを知らぬ女性であろうか。本能的な、野蛮な女性であった事は首肯出来ますが、いまの此のい・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  20. ・・・実際そんな単純な考えが熱狂的な少数の人の口から群集の間に燎原の火のようにひろがって、「芝」を根もとまで焼き払おうとした例が西洋の歴史などにないでもなかった。文明の葉は刈るわけにも焼くわけにも行かない。 始めのうちはおもしろがっていた・・・<寺田寅彦「芝刈り」青空文庫>
  21. ・・・どこでも見物は熱狂し、割れるように喝采した。そして舞台の支那兵たちに、蜜柑や南京豆の皮を投げつけた。可憫そうなチャンチャン坊主は、故意に道化けて見物の投げた豆を拾い、猿芝居のように食ったりした。それがまた可笑しく、一層チャンチャン坊主の憐れ・・・<萩原朔太郎「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」青空文庫>
  22. ・・・信者たちはまるで熱狂して、歓呼拍手しました。デビス長老は、手を大きく振って又何か云おうとしましたが、今度も声が咽喉につまって、まるで変な音になってしまい、とうとう又泣いてしまったのです。 みんなは又熱狂的に拍手しました。長老はやっと気を・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  23. ・・・ 戦争が終って四ヵ月後の一八五六年の夏、フロレンス・ナイチンゲールはクリミヤの天使として民衆の熱狂に迎えられながらイギリスに帰って来た。ヴィクトーリア女皇が贈ったブローチを白レースの襟の上に飾ったナイチンゲールの肖像は世界の隅々にまで流・・・<宮本百合子「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」青空文庫>