ねむ・い【眠い/睡い】例文一覧 27件

  1. ・・・「眠いだろう?」 慎太郎はしゃがむように、長火鉢の縁へ膝を当てた。「姉さんはもう寝ているぜ。お前も今の内に二階へ行って、早く一寝入りして来いよ。」「うん、――昨夜夜っぴて煙草ばかり呑んでいたもんだから、すっかり舌が荒れてしま・・・<芥川竜之介「お律と子等と」青空文庫>
  2. ・・・ その後は、ただ、頭がぼんやりして、眠いということよりほかに、何も考えられなかった。<芥川竜之介「葬儀記」青空文庫>
  3. 一 この少年は、名を知られなかった。私は仮にケーと名づけておきます。 ケーがこの世界を旅行したことがありました。ある日、彼は不思議な町にきました。この町は「眠い町」という名がついておりました。見ると、なんとなく活気がない。ま・・・<小川未明「眠い町」青空文庫>
  4. ・・・――ああ眠い」 欠伸をして、つるりと顔を撫ぜた。昨夜から徹夜をしているらしいことは、皮膚の色で判った。 橙色の罫のはいった半ぺらの原稿用紙には「時代の小説家」という題と名前が書かれているだけで、あとは空白だった。私はその題を見ただけ・・・<織田作之助「四月馬鹿」青空文庫>
  5. ・・・ 寿子はベソをかきながら、父のあとについて蚊帳の中へはいろうとすると、「お前は蚊帳の外で、出来るまで弾くんだ」 という父の声が来た。 寿子は眠い眼をこすりながら、弾き出した。庄之助は蚊帳の中で聴いていた。「もう一度。出来・・・<織田作之助「道なき道」青空文庫>
  6. ・・・だし抜けに、荒々しく揺すぶって、柳吉が眠い眼をあけると、「阿呆んだら」そして唇をとがらして柳吉の顔へもって行った。 あくる日、二人で改めて自由軒へ行き、帰りに高津のおきんの所へ仲の良い夫婦の顔を出した。ことを知っていたおきんは、柳吉・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  7. ・・・』『眠いなア、』僕は実際眠かった。しかし人々が上陸の用意をするようだから、目をこすりこすり起きて見るとすぐ僕の目についたのは鎌のような月であった。 船は陸とも島ともわからない山の根近く来て帆を下ろしていた。陸の方では燈火一つ見えない・・・<国木田独歩「鹿狩り」青空文庫>
  8. ・・・『自分が眠いのだよ。』 五十を五つ六つ越えたらしい小さな老母が煤ぶった被中炉に火を入れながらつぶやいた。 店の障子が風に吹かれてがたがたすると思うとパラパラと雨を吹きつける音が微かにした。『もう店の戸を引き寄せて置きな、』と・・・<国木田独歩「忘れえぬ人々」青空文庫>
  9. ・・・昨夜小母さんがにわかに黙ってしまったのは、眠いからばかりではなかったらしい。どういうことなのであろうかとしきりに考えてみる。 後から鈴の音が来る。自分はわが考えの中で鳴るのかと思う。前から藁を背負った男が来る。後で、「ごめんなんせ」・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  10. ・・・ひどく眠い。机の上の電話で、階下の帳場へ時間を聞いた。さむらいには時計が無いのである。六時四十分。いまから寝ては、宿の者に軽蔑されるような気がした。さむらいは立ち上り、どてらの上に紺絣の羽織をひっかけ、鞄から財布を取り出し、ちょっとその内容・・・<太宰治「佐渡」青空文庫>
  11. ・・・ああ、眠い。このまま眠って、永遠に眼が覚めなかったら、僕もたすかるのだがなあ。もし、もし。殺せ! うるさい! あっちへ行け!奥田教師、上手より、うろうろ登場。 あ、おくさん! どうしたんです、これあ。 あ・・・<太宰治「春の枯葉」青空文庫>
  12. ・・・あかつきばかり憂きものはなし、とは眠いうらみを述べているのではない。くらきうち眼さえて、かならず断腸のこと、正確に在り。大西郷は、眼さむるとともに、ふとん蹴ってはね起きてしまったという。菊池寛は、午前三時でも、四時でも、やはり、はね起き、而・・・<太宰治「HUMAN LOST」青空文庫>
  13. ・・・蒸し暑い、蚊の多い、そしてどことなく魚臭い夕靄の上を眠いような月が照らしていた。 貴船神社の森影の広場にほんの五六人の影が踊っていた。どういう人たちであったかそれはもう覚えていない。私にはただなんとなくそれがおとぎ話にあるようなさびしい・・・<寺田寅彦「田園雑感」青空文庫>
  14. ・・・勿論疲れた眠い顔や、中にはずいぶん緊張した顔もあるにはあったろうが、別にそれがために今のように不愉快な心持はしなかった。人種の差から免れ難い顔の道具の形や居ずまいだけがこのような差別の原因であろうか、何かもっとちがったところに主要な原因があ・・・<寺田寅彦「電車と風呂」青空文庫>
  15. ・・・という、長くゆるやかに引き延ばしたアダジオの節回しを聞いていると、眠いようなうら悲しいようなやるせのないような、しかしまた日本の初夏の自然に特有なあらゆる美しさの夢の世界を眼前に浮かばせるような気のするものであった。 これで対照されてい・・・<寺田寅彦「物売りの声」青空文庫>
  16. ・・・ だるい、ものうい、眠い、真夜中のうだるような暑さの中に、それと似てもつかない渦巻が起った。警官が、十数輛の列車に、一時に飛び込んで来た。 彼は全身に悪寒を覚えた。 恐愕の悪寒が、激怒の緊張に変った。匕首が彼の懐で蛇のように・・・<葉山嘉樹「乳色の靄」青空文庫>
  17. ・・・ 命ぜられた品をとって渡すと、顔ほどは美しくない彼女の二つの手は、眠い猫のようにすうっと又エプロンの上に休んで仕舞う。 さほ子は、困った眼付で、時々其手の方を眺た。「――まあ仕方がない。様子が判ったらやるようになるだろう」 ・・・<宮本百合子「或る日」青空文庫>
  18. ・・・ 私は眠い。一昨日那須温泉から帰って来、昨日一日買いものその他に歩き廻って又戻って行こうとしているのだから。それに窓外の風景もまだ平凡だ。僅かとろりとした時、隣りの婆さんが、後の男に呼びかけた。「あのう――白岡はまだよっぽど先でござ・・・<宮本百合子「一隅」青空文庫>
  19. ・・・私は眠いような、ランプが大変明るくていい気持のような工合でぼんやりテーブルに顎をのっけていたら、急に、高村さんの方で泥棒! 泥棒! と叫ぶ男の声がした。すぐ、バリバリと垣根のやぶれる音がした。母が突嗟に立って、早く雨戸をおしめ、抑えつけた緊・・・<宮本百合子「からたち」青空文庫>
  20. ・・・ 読みかけて居た本など、いきなりバタリと伏せ「眠い! 迚も眠い!」と、駄々っ子のように急に眠たがるYの様子を思い浮べ、笑い乍ら云ったのだが、女中には気持通ぜず。彼女は、飯茶碗を胸に高く持って坐ったなり子供らしくツクン、ツクンする・・・<宮本百合子「木蔭の椽」青空文庫>
  21. ・・・朝まだ眠いのに家でガッチャンガッチャン、裏の長屋でガッチャンガッチャン。はじめのうちは馴れないので閉口でした。アラー、チブスになるわよ、とスエ子[自注9]等は恐慌的な顔付をしたが、まさかそれは大丈夫でしょうから、どうぞ御心配なさらないで下さ・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  22. ・・・この頃は、毎年のことであるが、どちらかというと疲れ易く、しかも眠い事と云ったら! それはそれは眠くて春眠暁を覚えずという文句を、実に身を以て経験中です。バカらしく眠いが、これは何か必要があるのであろうと思い、ゲンコを握ってグースーです。グー・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  23. ・・・ただ時々眠いことってったら! どうしたって目のあいてないことがあるんですよ、並んで順ぐり居眠りしてる恰好ったら! オイ! たまらない。 ターニャは自分でふき出しながら、ほっぺたの上から金髪をかきのけた。 ――でも、みんないい青年たち・・・<宮本百合子「子供・子供・子供のモスクワ」青空文庫>
  24. ・・・私は眠い眠い。部屋数がないから、彼女は早く起きても自分だけ自由な行動はとれない、そのうちに眠っていた時は何でもなかった朝おそい室内の空気は、醒めて見ると、何と唾棄すべきものだろう。そこで、フダーヤは癇癪を起して私を起してしまわないため、よ・・・<宮本百合子「この夏」青空文庫>
  25. ・・・ 今日は四月上旬の穏かな気温と眠い艷のない曇天とがある。机に向っていながら、何のはずみか、私は胸が苦しくなる程、その田舎の懐しさに襲われた。斯うやっていても、耕地の土の匂い裸足で踏む雑草の感触がまざまざと皮膚に甦って来る。――子供の時分・・・<宮本百合子「素朴な庭」青空文庫>
  26. ・・・ 然し、その朝は余り眠く、体がくたくたであった。眠いという溶けるような感覚しか何もない。十一時頃茶の間にやっと出た。まだ包紙も解いてないパン、ふせたままの紅茶茶碗等、人気なく整然と卓子の上に置かれている。――奇妙なことと思い、少し不安を・・・<宮本百合子「春」青空文庫>
  27. ・・・純吉は、暗いし眠いし歩けなくなって、牧子におんぶされている。「失礼ですがあの方、よく御存じですか?」 しめりはじめた草むらが匂う道を歩きながら牧子がきいた。「よくって云えるかどうかしらないけれど――なあぜ?」「たしか、瀬川の・・・<宮本百合子「風知草」青空文庫>