ねら・う〔ねらふ〕【狙う】例文一覧 17件

  1. ・・・こう云う種類の人間のみが持って居る、一種の愛嬌をたたえながら、蛇が物を狙うような眼で見つめたのである。「別儀でもございませんが、その御手許にございまする御煙管を、手前、拝領致しとうございまする。」 斉広は思わず手にしていた煙管を見た・・・<芥川竜之介「煙管」青空文庫>
  2. ・・・ここらに待っていて、浜へ魚の上るのを狙うだよ、浜へ出たって遠くの方で、船はやっとこの烏ぐれえにしか見えやしねえや。 やあ、見さっせえ、また十五六羽遣って来た、沖の船は当ったぜ。 姉さん、また、着るものが出来らあ、チョッ、」 舌打・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  3. ・・・分っていて、その主人が旅行という隙間を狙う。わざと安心して大胆な不埒を働く。うむ、耳を蔽うて鐸を盗むというのじゃ。いずれ音の立ち、声の響くのは覚悟じゃろう。何もかも隠さずに言ってしまえ。いつの事か。一体、いつ頃の事か。これ。侍女 いつ頃・・・<泉鏡花「紅玉」青空文庫>
  4. ・・・飛天の銃は、あの、清く美しい白鷺を狙うらしく想わるるとともに、激毒を啣んだ霊鳥は、渠等に対していかなる防禦をするであろう、神話のごとき戦は、今日の中にも開かるるであろう。明神の晴れたる森は、たちまち黒雲に蔽わるるであろうも知れない。 銑・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  5. ・・・折角の巨人、いたずらに、だだあ、がんまの娘を狙うて、鼻の下の長きことその脚のごとくならんとす。早地峰の高仙人、願くは木の葉の褌を緊一番せよ。 さりながらかかる太平楽を並ぶるも、山の手ながら東京に棲むおかげなり。奥州……花巻より十・・・<泉鏡花「遠野の奇聞」青空文庫>
  6. ・・・……それが皆その像を狙うので、人手は足りず、お守をしかねると言うのです。猫を紙袋に入れて、ちょいとつけばニャンと鳴かせる、山寺の和尚さんも、鼠には困った。あと、二度までも近在の寺に頼んだが、そのいずれからも返して来ます。おなじく鼠が掛るので・・・<泉鏡花「半島一奇抄」青空文庫>
  7. ・・・唯台所で音のする、煎豆の香に小鼻を怒らせ、牡丹の有平糖を狙う事、毒のある胡蝶に似たりで、立姿の官女が捧げた長柄を抜いては叱られる、お囃子の侍烏帽子をコツンと突いて、また叱られる。 ここに、小さな唐草蒔絵の車があった。おなじ蒔絵の台を離し・・・<泉鏡花「雛がたり」青空文庫>
  8. ・・・「鷺が来て、魚を狙うんでございます。」 すぐ窓の外、間近だが、池の水を渡るような料理番――その伊作の声がする。「人間が落ちたか、獺でも駈け廻るのかと思った、えらい音で驚いたよ。」 これは、その翌日の晩、おなじ旅店の、下座敷で・・・<泉鏡花「眉かくしの霊」青空文庫>
  9. ・・・彼はそうしたものを見るにつけ、それが継母の呪いの使者ではないかという気がされて神経を悩ましたが、細君に言わせると彼こそは、継母にとっては、彼女らの生活を狙うより度しがたい毒虫だと言うのであった。 彼は毎晩酔払っては一時ごろまでぐっすりと・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  10. ・・・息子はお梅さんを貰いに帰ったのだろう、甘く行けば後の高山の文さんと長谷川の息子が失望するだろう、何に田舎でこそお梅さんは美人じゃが東京に行けばあの位の女は沢山にありますから後の二人だってお梅さんばかり狙うてもおらんよ、など厄鬼になりて討論す・・・<国木田独歩「富岡先生」青空文庫>
  11. ・・・今、この白樺の幹の蔭に、雀を狙う黒い猫みたいに全身緊張させて構えている男の心境も、所詮は、初老の甘ったるい割り切れない「恋情」と、身中の虫、芸術家としての「虚栄」との葛藤である、と私には考えられるのであります。 ああ、決闘やめろ。拳銃か・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  12. ・・・ 書きためて、懸賞当選を狙う手もあるのですが、あれには運が多い気がしてイヤです。それに、こんな汚ない字の原稿なんか読んではくれますまい。また薄志弱行のぼくは活字にならぬ作品がどんどん殖えて行くとどうしても我慢できず、最初のから破ってしまうの・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  13. ・・・ 学位を狙う動機がたとえ私利や栄達のためであろうが、ともかくも我邦で一人でも多く学問の研究に志し従事する人が多ければそれだけ我邦の学術は発達を刺戟される。屑のような論文が百も出るうちには一つくらいは少しはろくなものも交じる確率があり、万・・・<寺田寅彦「学位について」青空文庫>
  14. ・・・総じて幸徳らに対する政府の遣口は、最初から蛇の蛙を狙う様で、随分陰険冷酷を極めたものである。網を張っておいて、鳥を追立て、引かかるが最期網をしめる、陥穽を掘っておいて、その方にじりじり追いやって、落ちるとすぐ蓋をする。彼らは国家のためにする・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  15. ・・・をこしらえたのもこのミュンヘン修学時代であるし、自分の芸術的表現はスケッチや銅版画に最もよく発揮されることを自覚して、塗ること、即ち油絵具の美しく派手な効果を狙うことは、自分の本来の領域でないという確信を得たのも同じ時代のことである。 ・・・<宮本百合子「ケーテ・コルヴィッツの画業」青空文庫>
  16. ・・・自分一人の儲け、自分一人の立身出世、それを狙うことの愚かさは云うをまたないことであるのだけれど、ひる間は勤めて夜は実業学校へ通っている少年たちの心の目あては、十人が十人果して功利的な儲けや出世にとどまっていただろうか。 夜九時すぎから十・・・<宮本百合子「今日の耳目」青空文庫>
  17. ・・・絶えず隙間を狙う兇器の群れや、嫉視中傷の起す焔は何を謀むか知れたものでもない。もし戦争が敗けたとすれば、その日のうちに銃殺されることも必定である。もし勝ったとしても、用がすめば、そんな危険な人物を人は生かして置くものだろうか。いや、危い。と・・・<横光利一「微笑」青空文庫>