ねん‐しょう〔‐セウ〕【燃焼】例文一覧 26件

  1. ・・・僕は君に、いつか、「燃焼しない」と言って非難されたことを思い出した。そうして微笑した。僕の前では君の弟が、ステッキの先へハンケチを結びつけて、それを勢いよくふりながら「兄さん万歳」をくり返している。…… 後甲板には、ロシアの役者が大ぜい・・・<芥川竜之介「出帆」青空文庫>
  2. ・・・ 火事は物質の燃焼する現象であるからやはり一種の物理化学的現象である。この現象は日本には特別多い。それだのに日本の科学者で火事の研究をする人の少ないのは不思議である。西洋の大学のどこにもまだ火災学という名前の講義をしている所がないからで・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  3. ・・・たとえばアルコホルの沿面燃焼などはほとんど完全な円形な前面をもって進行するが、こういう場合は自然的変異を打ち消すような好都合の機巧が別に存在参加しているという特別の場合であるとも考えられる。すなわち、前面が凸出する点の速度が減じ、凹入した点・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  4. ・・・やむすこのような自由意志を備えた存在でもなく、主としてセリュローズと称する物質が空気中で燃焼する物理学的化学的現象であって、そうして九九プロセントまでは人間自身の不注意から起こるものであるというのは周知の事実である。しかし、それだから火事は・・・<寺田寅彦「函館の大火について」青空文庫>
  5.  長い管の中へ、水素と酸素とを適当な割合に混合したものを入れておく、そうしてその管の一端に近いところで、小さな電気の火花を瓦斯の中で飛ばせる、するとその火花のところで始まった燃焼が、次へ次へと伝播して行く、伝播の速度が急激に・・・<寺田寅彦「流言蜚語」青空文庫>
  6. ・・・何しろ人間一生のうちで数えるほどしかない僅少の場合に道義の情火がパッと燃焼した刹那を捉えて、その熱烈純厚の気象を前後に長く引き延ばして、二六時中すべてあのごとくせよと命ずるのは事実上有り得べからざる事を無理に注文するのだから、冷静な科学的観・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  7. ・・・我が輩かつていえることあり、方今政談の喋々をただちに制止せんとするは、些少の水をもって火に灌ぐが如し、大火消防の法は、水を灌ぐよりも、その燃焼の材料を除くに若かずと。けだし学者のために安身の地をつくりてその政談に走るをとどむるは、また燃料を・・・<福沢諭吉「学問の独立」青空文庫>
  8. ・・・其にしても、総ての感情、理智の燃焼を透し、到る所に貴女のろうたきいきどおりとでも云うべきものが感じられるのは、非常に私の感興をそそりました。 きっと貴女の持っていらっしゃる詩興、詩趣によるものでしょう。結婚と云うものに対し、愛の発育と云・・・<宮本百合子「大橋房子様へ」青空文庫>
  9. ・・・芸術家として燃焼する型が外向的であったからだろう。 音楽と女の生活についての考えかたも一般に狭くあったと思う。久野さんに習っていて、のち上野のピアノ科に入り、ずっと首席であった一人の令嬢が、お婿さんをとるためにどうしても音楽をすてて学校・・・<宮本百合子「きのうときょう」青空文庫>
  10. ・・・「我々の魂の中にもし何か価値あるものがあるとしたら、それは如何に他人よりももっと激しく燃焼したかにあるのだ」とジイドの文句が引かれていても、主人公の男がいい家庭と云い、その建設のために妻を教育し扶けようとするという、その実質について全然・・・<宮本百合子「「結婚の生態」」青空文庫>
  11. ・・・芸術的感興というものがこのように全心的な燃焼を要求するからこそ、芸術家にとっては、いかに生きるかというところまでが問題になって来る。興味あることです。私は決して夜更けの仕事がすきではないから、この点も改めて御安心いただきます。きっと眼が丈夫・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  12. ・・・イギリスのD・H・ローレンスの諸作、「権力への意志に自己を燃焼した」作家としてマルロオの諸作品。「人性の創造的行動のうちに深く滲潤することによって生活のリズムを把握しようとする」作家としてフェルナンデスの作品が、日本における行動主義の人々に・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  13. ・・・ 私の米国婦人が権能を持つ事、その事には肯定出来ても、其の運用の不純さに飽き足らず思うのは、此の純一の燃焼への憧憬があるからでございます。 私が若し仏蘭西へ行ったと致しましたなら、拉丁民族の優雅な、理智と感情との調和に必ず心の躍る歓・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  14. ・・・性的交渉にたいして精神の燃焼を知覚しえない男・女のいきさつのなかに、この雄大な二十世紀の実質を要約してしまうことは理性にとって堪えがたい不具です。文学の世界、芸術の世界では、どうして、こういう人間性の崩壊が、あやしまれず、かえって文学的だと・・・<宮本百合子「一九四六年の文壇」青空文庫>
  15. ・・・始めは、材木や何かをつんで置いたところに居たが、あとで気がついて竹で矢来をくみ、なかに、スレート、石のような不燃焼物のあるところにうつり、包を一つスレートの間に埋めて居た。が、火の手が迫って来ると、あついし、息は苦しいし、大きな火の子が、ど・・・<宮本百合子「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」青空文庫>
  16. ・・・然し、一方芸術のことは、箇人の全的統一と燃焼とを要求する。 此処に、家庭の主婦として芸術に指を染めようとする者と、先ず芸術を本領とし、愛する者の伴侶であろうとする者との、截然岐るべき点がある。 福島からとりと云う五十歳ばかりの女中が・・・<宮本百合子「小さき家の生活」青空文庫>
  17. ・・・彼女の人間、女としての傷はそこで医され、科学者としての燃焼はそこから絶えざる焔をとったのであった。 知性は、コンパクトではないから、決して固定した型のものにきまったいくつかの要素がねり合わされていて、誰でもがハンド・バッグに入れてい・・・<宮本百合子「知性の開眼」青空文庫>
  18. ・・・ そして、この燃焼が無駄に消えないように、お祈り下さいませ。お目にかかりたいと思っております。 手紙はここで終っている。 かような心の状態にあった彼女は、自分の周囲の総体的の運動とは、まるで違った方向に、彼女の路を踏もうとし・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  19. ・・・p.276◎無信仰の十字架に釘づけになった彼は民衆の前に正統派の教えを説き、智識は分裂し燃焼するということを知っていたので これを抑圧し、そして聖書に即した厳格な農民の信仰に、幸福を与えるような虚言を説教したのである。p.277◎彼・・・<宮本百合子「ツワイク「三人の巨匠」」青空文庫>
  20. ・・・小市民的な排他的な両親の家庭から脱出したつもりで四辺を見まわしたら、自分と対手とのおちこんでいるのは、やっぱりケチな、狭い、人間的燃焼の不足な家庭の中だった。檻の野獣のように苦しんだ。対手をも苦しめた。対手は十五年アメリカで苦労したあげ・・・<宮本百合子「年譜」青空文庫>
  21. ・・・その問題を抱擁し、こなし、芸術的表現を与えた作者の、芸術家として純一な、全人的な燃焼と昂揚とに感動させられるのでございます。最も貴女らしい文字を透して、私共は、貴女に成り切った貴女の御心を読ませられます。その時、貴女というものは、他の追従を・・・<宮本百合子「野上彌生子様へ」青空文庫>
  22. ・・・とばかり執拗に、果敢に破綻をもおそれず、即発燃焼を志して一箇の芸術境をきずいて行った姿というものは、平俗に逃避したりおさまったりした枯淡と何等の通じるものをもっていない。はりつめて対象の底にまで流れ入り、それを浮上らせている精神の美があるか・・・<宮本百合子「芭蕉について」青空文庫>
  23. ・・・又、或るスローガンをぶつけて人々の意識を階級的に燃焼させる必要のあるポスターは、材料の政治的把握不足から、ぼんやりしたものが多い。こういうものをやらせるとソヴェトの人間はうまい。この間うちモスクワの至るところ、活動写真館の壁にまでかかってい・・・<宮本百合子「プロレタリア美術展を観る」青空文庫>
  24. ・・・の芸術的陶酔として白光灼々とまでは燃焼しきらないものとなっていることもわかる。 この一篇の長篇の終りは、遁走の曲で結ばれている。さまざまに向きをかえ周囲を描いていじって来た江波から、作者はついに常識人である間崎とともに橋本先生につかまっ・・・<宮本百合子「文学と地方性」青空文庫>
  25. ・・・ 自由な新鮮な感情の燃焼を現わすに、日本語は或時に於ては余り形式的である。女性と男性との言葉遣いの差が、余りつけられすぎて居る窮屈さを感じるのは、物を書こうとする女性の総てが時に感じさせられる事であろう、其他数えれば多くの欠点がある。改・・・<宮本百合子「無題」青空文庫>
  26. ・・・たまたま強い香気があるとすれば、それはコケおどしに腐心する山気の匂いであり、筆先の芸当に慢心する凝固の臭いであって、真に芸術家らしい独自な生命燃焼の匂いではない。もしこの種の外形的な努力が反省なしに続けて行かれるならば、日本画は低級芸術とし・・・<和辻哲郎「院展日本画所感」青空文庫>