ねん‐しょう〔‐セウ〕【年少】例文一覧 30件

  1. ・・・    * 我我の悲劇は年少の為、或は訓練の足りない為、まだ良心を捉え得ぬ前に、破廉恥漢の非難を受けることである。 我我の喜劇は年少の為、或は訓練の足りない為、破廉恥漢の非難を受けた後に、やっと良心を捉えることである。   ・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・が、万一死なずにいた上、幸いにも教育を受けなかったとすれば、少くとも今は年少気鋭の市会議員か何かになっていたはずである。……「開戦!」 この時こう云う声を挙げたのは表門の前に陣取った、やはり四五人の敵軍である。敵軍はきょうも弁護士の・・・<芥川竜之介「少年」青空文庫>
  3. ・・・成程僕等年少の徒は度たび滝田君に厄介をかけた。けれども滝田君自身も亦恐らくは徳田秋声氏の如き、或は田山花袋氏の如き、僕等の先輩に負う所の少しもない訳ではなかったであろう。 僕は滝田君の訃を聞いた夜、室生君と一しょに悔みに行った。滝田君は・・・<芥川竜之介「滝田哲太郎氏」青空文庫>
  4. ・・・く、日南でなく、土の凸凹でもなく、かえって法廷を進退する公事訴訟人の風采、俤、伏目に我を仰ぎ見る囚人の顔、弁護士の額、原告の鼻、検事の髯、押丁等の服装、傍聴席の光線の工合などが、目を遮り、胸を蔽うて、年少判事はこの大なる責任のために、手も自・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  5. ・・・ 顧みて、私達は、年少の時代から、今日に至るまで、どんな考えを抱いて道を歩いて来たか。そのいずれの時代にあっても、曾て希望をば捨てなかった。『きっと、いまにいゝ世界が、自分達の眼前に開かれる。』 そう思って来たのだ。そして、いま・・・<小川未明「人間否定か社会肯定か」青空文庫>
  6. ・・・この運動に参加したものは年少気鋭の学生であり新思想家であるのを見ても、奴隷化した宗教に対する反感と、いわゆる人道主義と愛というものに対する冒険と憤激とであると見るのが至当であろう。然も現下の支那に於ける思想上の混乱に際し、世界キリスト教青年・・・<小川未明「反キリスト教運動」青空文庫>
  7. ・・・と、もっとも年少の丙が、たまらなくなってため息をしながらいいました。「学校の先生はないといったよ。」と、乙が教師のいったことを思い出していいました。「先生はどうして、ないことを知っているだろう。」と、甲が乙のいったことに・・・<小川未明「不死の薬」青空文庫>
  8. ・・・ 私は年少の頃から劇作家を志し、小説には何の魅力も感じなかったから、殆んど小説を読まなかったが、二十六歳の時スタンダールを読んで、はじめて小説の魅力に憑かれた。しかし「スタンダールやバルザックの文学は結局こしらえものであり、心境小説とし・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  9. ・・・で情夫の石田吉蔵を殺害して、その肉体の一部を斬り取って逃亡したという稀代の妖婦の情痴事件が世をさわがせたのは、たしか昭和十一年五月であったが、丁度その頃私はカフェ美人座の照井静子という女に、二十四歳の年少多感の胸を焦がしていた。 美人座・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  10. ・・・ ある日私は年少の友と電車に乗っていました。この四月から私達に一年後れて東京に来た友でした。友は東京を不快がりました。そして京都のよかったことを云い云いしました。私にも少くともその気持に似た経験はありました。またやって来た々直ぐ東京が好・・・<梶井基次郎「橡の花」青空文庫>
  11. ・・・ああ年少の夢よ、かの蒼空はこの夢の国ならずや、二郎も貴嬢もこのわれもみなかの国の民なるべきか、何ぞその色の遠くして幽かに、恋うるがごとく慕うがごとくはたまどろむごとくさむるがごときや。げにこの天をまなざしうとく望みて永久の希望語らいし少女と・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  12. ・・・自分は日あたりを避けて楢林の中へと入り、下草を敷いて腰を下ろし、わが年少画家の後ろ姿を木立ちの隙からながめながら、煙草に火をつけた。 小山は黙って描く、自分は黙って煙草をふかす、四囲は寂然として人声を聞かない。自分は懐から詩集を取り出し・・・<国木田独歩「小春」青空文庫>
  13. ・・・資性正大にして健剛な日蓮の濁りなき年少の心には、この事実は深き疑団とならずにはいなかったろう。何故に悪が善に勝つかということほど純直な童心をいたましめるものはないからだ。 彼は世界と人倫との究竟の理法と依拠とを求めずにはいられなかった。・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  14. ・・・ しかし、この時の独歩の体内に流れていた血は、明かに支配階級に属する年少気鋭の忠勇なる士官のそれと異らないものであった。だから彼は、陸兵が敵地にまんまと上陸し得たことを痛快々々! と叫び、「吾れ実に大日本帝国のために万歳を三呼せずんばあ・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  15. ・・・その児の生育のためには、母はたのしんでその心血をしぼるのである。年少の者が、かくして自己のために死に抗するのも自然である。長じて、種のために生をかろんずるにいたるのも、自然である。これは、矛盾ではなくして、正当の順序である。人間の本能は、か・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  16. ・・・隣村からわざわざ嫂や姪や私の娘を見にやって来てくれた人もあったが、私と同年ですでに幾人かの孫のあるという未亡人が、その日の客の中での年少者であった。 しかし、一同が二階に集まって見ると、このお婆さんたちの元気のいい話し声がまた私をびっく・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  17. ・・・大塚さんがこの子息におせんを紹介した時は、若い母の方が反って年少だった。 湯島の家の方で親子揃って食った時のことが浮んで来た。この同じ食卓があの以前の住居に置いてある。青蓋の洋燈が照している。そこには嫁いて来たばかりのおせんが居る。彼女・・・<島崎藤村「刺繍」青空文庫>
  18. ・・・たち拠らば大樹の陰、たとえば鴎外、森林太郎、かれの年少の友、笠井一なる夭折の作家の人となりを語り、そうして、その縊死のあとさきに就いて書きしるす。その老大家の手記こそは、この「狂言の神」という一篇の小説に仕上るしくみになっていたのに、ああ、・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  19. ・・・自信が無いとは言っても、それはまた別な尺度から言っている事で、何もこんな一面識も無い年少の者から、これ程までにみそくそに言われる覚えは無いのである。 私は立って着物の裾の塵をぱっぱっと払い、それから、ぐいと顎をしゃくって、「おい、君・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  20. ・・・ もうひとり、やはり私の年少の友人、三田循司君は、ことしの五月、ずば抜けて美しく玉砕した。三田君の場合は、散華という言葉もなお色あせて感ぜられる。北方の一孤島に於いて見事に玉砕し、護国の神となられた。 三田君が、はじめて私のところへ・・・<太宰治「散華」青空文庫>
  21. ・・・ 最後にもう一つ、頭のいい、ことに年少気鋭の科学者が科学者としては立派な科学者でも、時として陥る一つの錯覚がある。それは、科学が人間の知恵のすべてであるもののように考えることである。科学は孔子のいわゆる「格物」の学であって「致知」の一部・・・<寺田寅彦「科学者とあたま」青空文庫>
  22. ・・・いつかクルイクシャンクの評伝を買った時に、そばに立っていた年少の店員が「クルイクシャンク/\」と言ってクスクス笑った。その時自分はなぜか顔面が急にほてるような気がした。この少年はたぶんこの画家の名前がおかしいから笑っただけだろうが、自分はあ・・・<寺田寅彦「丸善と三越」青空文庫>
  23. ・・・これは多くはその一人一人の生涯特に年少時代において体験した非常に強烈な印象に帰因するものであって、特に性的な関係のものが多いという話である。そういう原因は今ここでは別問題として、われわれが連句を制作するに当たって潜在的に重要な役目をつとめる・・・<寺田寅彦「連句雑俎」青空文庫>
  24. ・・・その頃年少のわたくしがこの寺の所在を知ったのは宮戸座の役者たちが新比翼塚なるものに香華を手向けた話をきいた事からであった。新比翼塚は明治十二、三年のころ品川楼で情死をした遊女盛糸と内務省の小吏谷豊栄二人の追善に建てられたのである。(因にいう・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  25. ・・・しかし平生儒学を奉じておられた事から推量しても、わたくしが年少のころに作った『夢の女』のような小説をよんで、喜ばれるはずがない事は明である。 父は二十余年のむかしに世を去られた。そして、わたくしは今やまさに父が逝かれた時の年齢に達せむと・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  26. ・・・例えば世の中に普通なる彼の百人一首の如き、夢中に読んで夢中に聞けばこそ年少女子の為めに無害なれども、若しも一々これを解釈して詳に今日の通俗文に翻訳したらば、婬猥不潔、聞くに堪えざること俗間の都々一に等しきものある可し。唯都々一は三味線に撥を・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  27. ・・・ されば我々年少なりといえども、二十年前の君の齢にひとし。我々の挙動、軽躁なりというも、二十年前の君に比すれば、深く譴責を蒙るの理なし。ただし、君は旧幕府の末世にあたりて乱に処し、また維新の初において創業に際したることなれば、おのずから・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  28. ・・・コフマンはこの一貫した方針に立って、レイ小父さんという名で年少者のために十数年来活動して来ている人なのだが、彼が特に年の小さいものたちを、希望と期待との対象としたのはどういうわけからであったろう。 我々が住んでいる今日の文明は、昔に比べ・・・<宮本百合子「科学の常識のため」青空文庫>
  29. ・・・この病的にあらわされている主我とその心理傾向は、主観において強烈でありながら、客観的には一種の無力状態であるから、より年少な世代の精神的空白をみたし、戦争によって脳髄をぬきとられた青春にその誇りをとりもどし、その人間的心持に内容づけを与えて・・・<宮本百合子「現代の主題」青空文庫>
  30. ・・・三 私は痛苦と忍従とを思うごとに、年少のころより眼の底に烙きついているストゥックのベエトォフェンの面を思い出す。暗く閉じた二つの眼の間の深い皺。食いしばった唇を取り巻く荘厳な筋肉の波。それは人類の悩みを一身に担いおおせた悲痛・・・<和辻哲郎「ベエトォフェンの面」青空文庫>