のが・れる【逃れる/×遁れる】例文一覧 13件

  1. ・・・ ひどく厭な気がしていた彼は金口を灰に突き刺すが早いか、叔母や姉の視線を逃れるように、早速長火鉢の前から立ち上った。そうして襖一つ向うの座敷へ、わざと気軽そうにはいって行った。 そこは突き当りの硝子障子の外に、狭い中庭を透かせていた・・・<芥川竜之介「お律と子等と」青空文庫>
  2. ・・・実際我我は何かの拍子に死の魅力を感じたが最後、容易にその圏外に逃れることは出来ない。のみならず同心円をめぐるようにじりじり死の前へ歩み寄るのである。   「いろは」短歌 我我の生活に欠くべからざる思想は或は「いろは」短歌に尽・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・お君さんはその実生活の迫害を逃れるために、この芸術的感激の涙の中へ身を隠した。そこには一月六円の間代もなければ、一升七十銭の米代もない。カルメンは電燈代の心配もなく、気楽にカスタネットを鳴らしている。浪子夫人も苦労はするが、薬代の工面が出来・・・<芥川竜之介「葱」青空文庫>
  4. ・・・それから……僕は巻煙草をふかしながら、こう云う記憶から逃れる為にこのカッフェの中を眺めまわした。僕のここへ避難したのは五分もたたない前のことだった。しかしこのカッフェは短時間の間にすっかり容子を改めていた。就中僕を不快にしたのはマホガニイま・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  5. ・・・龍雄はもう逃れる途はないと知りましたから、すべてのことを正直にうちあけました。その男は酔っていました。「しようのない奴だ。俺だから許してやるのだぞ。そんなら乗せてやる。そのかわり俺は眠るから、汽車がどの停車場に着いても、止まったときはき・・・<小川未明「海へ」青空文庫>
  6. ・・・その他には、この随筆から逃れる路が無くなっているのである。ちゃんとした理由である。私は、理由が無ければ酒を飲まないことにしている。きのうは、そのような理由があったものだから私は、阿佐ヶ谷に鹿爪らしい顔をして、酒を飲みに出かけたのである。阿佐・・・<太宰治「作家の像」青空文庫>
  7. ・・・ポチから逃れるためだけでも、早く、引越してしまいたかったのだ。私は、へんな焦躁感で、仕事も手につかず、雑誌を読んだり、酒を呑んだりした。ポチの皮膚病は一日一日ひどくなっていって、私の皮膚も、なんだか、しきりに痒くなってきた。深夜、戸外でポチ・・・<太宰治「畜犬談」青空文庫>
  8. ・・・けれども事件がここまで進展して来た以上、後の二人の来ない中に女を抱いてでも逃れるより外に仕様がなかった。「サア、早く遁げよう! そして病院へ行かなけりゃ」私は彼女に云った。「小僧さん、お前は馬鹿だね。その人を殺したんじゃあるまいね。・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  9. ・・・紂王はそのことによって自身の滅亡を早めこそすれ、それから逃れることはできなかった。そのことを歴史はわれわれに語っている。〔一九三四年十月〕<宮本百合子「今日の文化の諸問題」青空文庫>
  10. ・・・ 自分がいればいるほど、大混雑になる家から逃れるようにして、彼は出来るだけ野良にばかり出ていた。 けれども、別にそう大して働かなければならないほどの仕事もない。 耕地の端れの柏の古木の蔭に横たわりながら、彼は様々な思いに耽ったの・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  11. ・・・この山中で逃れる術もありますまい。もう覚悟は決めました。然しこんな哀れな百姓にも一期の願いというものはございます。それを聞いては下さいますまいか」 天狗は鷹揚に「なんだ、早く云え」と云った。「話では、天狗は変通自在のものだと云います・・・<宮本百合子「ブルジョア作家のファッショ化に就て」青空文庫>
  12. ・・・殉死した人たちは皆安堵して死につくという心持ちでいたのに、数馬が心持ちは苦痛を逃れるために死を急ぐのである。乙名島徳右衛門が事情を察して、主人と同じ決心をしたほかには、一家のうちに数馬の心底を汲み知ったものがない。今年二十一歳になる数馬のと・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  13. ・・・もとより彼らは、当時の偶像の遺物を我々が芸術品として鑑賞するがごとく、ただ美的鑑賞の対象として偶像に対したのではないが、しかし無意識の内にも常に偶像の美的魅力から逃れる事はできなかったであろう。百済王が始めて釈迦銅像を献じた時、それを見た我・・・<和辻哲郎「偶像崇拝の心理」青空文庫>