のぞまし・い【望ましい】例文一覧 30件

  1. ・・・ しかしその死甲斐のない死に方でさえ、生きているよりは、どのくらい望ましいかわからない。私は悲しいのを無理にほほ笑みながら、繰返してあの人と夫を殺す約束をした。感じの早いあの人は、そう云う私の語から、もし万一約束を守らなかった暁には、ど・・・<芥川竜之介「袈裟と盛遠」青空文庫>
  2. ・・・真理に対する態度としても、望ましい語でしょう。ところが遺憾ながら、西南戦争当時、官軍を指揮した諸将軍は、これほど周密な思慮を欠いていた。そこで歴史までも『かも知れぬ』を『である』に置き換えてしまったのです。」 愈どうにも口が出せなくなっ・・・<芥川竜之介「西郷隆盛」青空文庫>
  3. ・・・それほどの覚悟なしに口の先だけで物をいっているくらいなら、おとなしく私はブルジョアの気分が抜けないから、ブルジョアに対して自分の仕事をしますといっているのが望ましいことに私には見えるのだ。近ごろ少しあることに感じさせられたからついあんな宣言・・・<有島武郎「片信」青空文庫>
  4. ・・・二人が共同の使命を持ち、それを神聖視しつつ、二人の恋愛をこれにあざない合わせていくというようなことであれば、これは最も望ましい場合である。     七 私の経験と、若干の現実的示唆 以上は青年学生としての恋愛一般の掟の如きも・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  5. ・・・恋の灼熱が通って、徳の調和に――さらに湖のような英知と、青空のような静謐とに向かって行くことは最も望ましい恋の上昇である。幾ら上って行ってもそのひろがりは詩と理想と光との世界である。平板な、散文の世界ではない。それがいのちというものの純粋持・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  6. ・・・ いったん愛し合い結び合った者は一生離れず終わりを全うするのが美しく望ましいのはいうまでもない。この現実の世ではそうした人倫の「有終の美」は稀なだけにどんなに尊いかしれない。天智天皇と藤原鎌足のような君臣の一生的の結びは彼の漢の高祖や源・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  7. ・・・もっとよけいに俸給を取っている者が望ましい。 肉に饉えているのは兵卒ばかりではなかった。 松木の八十五倍以上の俸給を取っているえらい人もやはり貪慾に肉を求めているのであった。「私、用があるの。すみません、明日来てくださらない。」・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  8. ・・・もう一層の深い研究が望ましいと思われる。 主役のすみれ娘はオリジナルな愛嬌と頭脳の持主らしく随所に一種の俳諧を発揮しているようである。若返りの博士はからだでする表情をもう少し腹の中へしまい込んだ方がこの映画の俳諧的雰囲気に相応わしいので・・・<寺田寅彦「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」青空文庫>
  9. ・・・しかし、一体そういう自由がこの世に有り得るものか、どの程度までそれが可能であるか、またその可能限度まで自由を許すことが、当該学者以外の多数の人間にとって果していつでも望ましい事であるか。こういう問題を、少し立入って考究し論議するとなると、事・・・<寺田寅彦「学問の自由」青空文庫>
  10. ・・・ろわが国でも土俗学的の研究趣味が勃興したようで誠に喜ばしいことと思われるが、一方ではまたここに例示したような不思議な田園詩も今のうちにできるだけ収集し保存しまたそれを現在の詩の言葉に翻訳しておくことも望ましいような気がするのである。・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  11. ・・・となら、こうした機関はむしろ文部省の管轄からも独立させて、全く特殊な恒久的国家機関とし、非科学的なあるいは科学に無理解な御役人達の政治の支配下から解放して健全な発達を計るのが国家百年の大計のために甚だ望ましいことではないかという気もする。・・・<寺田寅彦「新春偶語」青空文庫>
  12. ・・・把握するためには支那、満洲、シベリアは勿論のこと、北太平洋全面からオホツク海にわたる海面にかけて広く多数に分布された観測点における海面から高層までの気象観測を系統的定時的に少なくも数十年継続することが望ましいのであるが、これは現時においては・・・<寺田寅彦「颱風雑俎」青空文庫>
  13. ・・・それよりも広いあらゆる日本の芸道の世界を背景とした俳諧の研究も将来望ましいものの一つである。西川一草亭の花道に関する講話の中に、投げ入れの生花がやはり元禄に始まったという事を発見しておもしろいと思った。生花はもちろん茶道、造園、能楽、画道、・・・<寺田寅彦「俳諧の本質的概論」青空文庫>
  14. ・・・ こういう時代において、それ自身だけに任せておくととかく立ち枯れになりやすい理論に生命の水をそそぎ、行き詰まりになりやすい抽象に新しい疎通孔をあけるには、やはりいろいろの実験が望ましい。それには行ない古したことの精査もよいが、また別に何・・・<寺田寅彦「量的と質的と統計的と」青空文庫>
  15. ・・・「この地位に望ましい人は、ただ講義をするだけの先生ではなくて、実験に体験をもった数学者で、そうして若い学者達の活動を正しい道に指導することが出来る人でなければならない。」マクスウェルは遂に承諾して最初の Cavendish Professo・・・<寺田寅彦「レーリー卿(Lord Rayleigh)」青空文庫>
  16. ・・・以上を総括して今後の日本人にはどう云う資格が最も望ましいかと判じてみると、実現のできる程度の理想を懐いて、ここに未来の隣人同胞との調和を求め、また従来の弱点を寛容する同情心を持して現在の個人に対する接触面の融合剤とするような心掛――これが大・・・<夏目漱石「文芸と道徳」青空文庫>
  17. ・・・対称の法則に叶うって云ったって実は対称の精神を有っているというぐらいのことが望ましいのです。」「ほんとうにそうだと思いますわ。」樺の木のやさしい声が又しました。土神は今度はまるでべらべらした桃いろの火でからだ中燃されているようにおもいま・・・<宮沢賢治「土神ときつね」青空文庫>
  18. ・・・そして、果して現在方向づけられているようにアフリカへ向って、リビヤへ向って、エチオピヤへ向って土着種族から生活権を奪うことが、イタリーの文化人にとって最も望ましい唯一の脱出の道と考えられているのであろうか。私どもに考えさせる少からぬものがこ・・・<宮本百合子「イタリー芸術に在る一つの問題」青空文庫>
  19. ・・・ 天国地獄、地獄極楽という観念の絵草紙が幸福の模様としてきめられていた時代、人々はぴんからきりまでのいとわしく苦しいものを日々の現実から抽象して地獄へあてはめ、ぴんからきりまでの望ましいものをあつめて天国の構造とした。そこへ幸福の観念を・・・<宮本百合子「幸福の感覚」青空文庫>
  20. ・・・上に安んじ、刻下の社会事情の中にあって闊達自在の活動をし得る自信こそプロレタリア作家の持つべき生活力の強さという風に言われているのであるが、この闊達自由ということに就いてはその響きが今日の万人にとって望ましいことであるために、一層周密にその・・・<宮本百合子「今日の文学の鳥瞰図」青空文庫>
  21. ・・・くすことを主要な点として押し出されたこと、而して、そのおし出しが、現実生活の中に在って既に一つの人間性の非力化へ導く広き門であることを一部の作家が論じたが、その補強的な論の建て直しは当時の気分によって望ましいようには受けいれられなかったこと・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  22. ・・・科学者の文筆活動の示し得る望ましい美は、こういう統一の姿においてではなかろうか。今日の科学の可能と明日の科学のために未だのこされている客観的現実の豊饒さ、科学的方法が年から年へ進歩する行進曲の意味を心と身にひき添えて科学者たることを生きる歓・・・<宮本百合子「作家のみた科学者の文学的活動」青空文庫>
  23. ・・・その再発見、再確認の過程で、その人の運命と階級の運命のために、どのように望ましい力として自己を再発見するか、ということは、簡単に保証できない。その人の階級的人間性が、どのように階級としての理由によって覚醒されているかということに多くの比重が・・・<宮本百合子「しかし昔にはかえらない」青空文庫>
  24. ・・・望ましくない事情も、必要とあれば雄々しくたえながらしかしそれをより望ましいものに代えてゆくための努力が忘られてはならないのだと思う。どんな悪条件だっても私は平気だと自己満足に止まる心理は、しっかりとしているようで実はきわめて快い退歩的な態度・・・<宮本百合子「その先の問題」青空文庫>
  25. ・・・生活の発展こそ芸術を発展させるのであって、原稿が原稿料をもたらしてそれで女一人は食べてゆけているという状態そのものだけでは、芸術家としての生き方で望ましいものではないということが反省されました。「伸子」の後に書いた九十余枚の小説「一本の花」・・・<宮本百合子「「伸子」について」青空文庫>
  26. ・・・第一の若僧 私は死んでから天国に行く事よりも今都に居る事の方が望ましい。 神が天国をお教えなさるのも地獄をお教えなさるのもそれを恐れて生きて居る世を天国にして暮す様にさせ様ためになさった事だ。第二の若僧は都をしたう心に堪えか・・・<宮本百合子「胚胎(二幕四場)」青空文庫>
  27. ・・・ それから文学批評も小さなワクをぬけ出て、人民解放のためどういう意味をもつかを人民生活の諸関係と結びつけてときあかす組織者としての批評が望ましい。そのことは批評家もともども歴史を押し進める推進力を明瞭にするいとなみに協力しあうことが大切・・・<宮本百合子「批評は解放の組織者である」青空文庫>
  28. ・・・それは疑いもない過去の宝であるけれど、例えば今日の日本に見られる文学と科学との関係のありかたなどを細かに観察すると、それがまだ文化の成育の最も望ましい開花であると迄は云切れないような段階にあるのではないだろうか。「北極飛行」のなかで、こ・・・<宮本百合子「文学のひろがり」青空文庫>
  29. ・・・魂を悪魔に売るともこの世界に住むことは望ましい。 それが新時代の大勢であった。地下の偶像は皆よみがえって、再び太陽の下に打ち立てられた。狂熱的な僧侶の反動もただ大勢に一つの色彩を加えたに過ぎなかった。しかし再興せられた偶像はもはや礼拝せ・・・<和辻哲郎「『偶像再興』序言」青空文庫>
  30. ・・・生きている事はいたし方のない事実である。望ましいことでも望むべき事でもない。ただしかし生きている以上は本能的な生への執着がある、しなければならない事、則らなければならない法則もある。それは苦しいかもしれない、苦しくてもやむを得ない。――そも・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>